見出し画像

サイクル投資

(※今回の記事は加筆修正される事があります)

特に投資・投機をする際、ここは抑えておけ!というポイントがある。

景気サイクル相場サイクルの見分け方だ。サイクルを制する者は相場を制するといっても過言ではないだろう。インデックスのみの長期投資家も知っておいて損はない。

当然の話だが、景気によって相場の難易度というのは大きく変わる。例えるなら景気は四季のようなものだ。それぞれの局面に違った特色を持つ。

どの季節にも利点欠点があるだろう。季節によって付き合い方を変えていかなければ楽しめず苦しいだけだ。真冬なのに防寒無しに過ごすのは誰でもキツいだろう。

景気も同様に、季節のような移ろい方をするため、予備知識として景気サイクルを幾つかに区分けし、対策込みで明確にしておく必要があるだろう。

下の画像に記されている通り、景気には4つの季節があるが、俺はあえて5つに区分している。

画像4

①景気軟化(後退期)

景気はピークアウトしているが、好景気の余韻は残ってる。
景気に先行する株式相場は既に下落が始まっていて、長期金利とドル相場の下落が追随。企業や消費者も徐々に先行きに警戒的。ただし個人消費は活発なので景気は底堅い。 

②景気下降(不況期)

経済指標の多くが悪化。FRBが金融緩和に動く。
利下げを進める段階。長期金利が経済成長率+FRB目標インフレ率を下回ると、家計が住宅ローンの借り入れを増やし始める。
住宅部門が回復すると、素材の需要が高まる。株式市場はこれらを織り込み済み、低金利とジャブジャブマネーで無邪気に反発上昇をする。金融相場の始まりである。

③景気回復(不況~回復)

株価が上向く中、企業は景況感を改善させ、需要回復に沿って、まず労働者の残業時間を増やすなどして在庫を積み増し、在庫が順調に出荷される流れになると、雇用を増やし、個人消費支出が上向くと、景気回復局面に入る。しばらくは金融相場が続く。
FRBは景気回復が盤石になるまで、金融政策を緩和気味に運営し続ける。金融引き締めに転じると金融相場が終わる。ここで次の業績相場に移行する前段階として中間反落(一過性の弱気相場)が起こる。

④景気加速(回復~好況)

景気も一旦の落ち着きを見せ、企業投資が増え始めると景気加速局面に移る。この段階から業績相場といい、インフレリスク警戒に応じて利上げを段階的に進めていく。金利の上昇は株価にとってマイナス要因でありながら、景気加速局面の前半は市場がFRBの利上げを「当局も景気を強いと判断しており、業績相場にはプラス」と曲解するような場面が見られる。失業率が完全雇用水準まで低下すると、賃金上昇率が高まり、さらなるインフレ警戒から利上げが加速され、下落が激しくなる。

⑤景気成熟(好況期)

住宅部門が減速。個人消費支出は高水準。企業投資も継続。
景気サイクルにおいて強気局面が続く。相場の上値が重くなり始めても個人投資家や企業業者が往生際が悪くなりがちな場面。世間では生活に必須ではないコンテンツ(タピオカミルクティ、ネイルサロン、ユーチューバー等)が流行り始め、人々の経済活動が派手になる。

この⑤景気成熟に至ると、人々の気持ちが高揚し、幸福感に包まれる。そんな中、不況の足音が静かに近づいてくる。不意を突くように①景気軟化にフェーズが移る。

このように、景気サイクルを大まかに把握しておくと、フェーズが変わるごとに投資戦略を誰よりも早く立て直す事が出来る。


株価と金利の推移

ここからは景気サイクルではなく、相場サイクルについて触れていく。

まず、足元の株価の推移を見てみよう(※2020年1月~2022年2月の株価)

画像5

繰り返しになるが、金融相場は経済が冷え込んでいる不況期に始まる。

直近でいえばパンデミックによる大暴落直後だ。コロナ禍に突入した2020年3月後半から金融緩和が終わるまで金融相場は続く。

株式市場はこの金融相場に押されることで、コロナ前の水準まで駆け足で戻し、2020年11月の大統領選挙にて金融相場の前半戦が一区切りついた。

バイデン政権が確定すると、タイミングを計ったかのようにワクチンの開発が次々と発表され、金融相場の後半戦(ワクチン相場)が開始した。

変異株リスク、インフレリスクタリバン政権リスク中国不動産バブル崩壊リスクが途中降りかかるものの、超弩級の金融緩和によって、それらを振り切って、2021年11月に株価が天井をつけるまで強気相場を形成した。

そしてようやく金融相場の出口が見え始めたところで、強気相場は失速し、2022年3月に向けて金融相場の最終局面へと至る。


ここからは時間軸を広く捉えて、相場サイクルを俯瞰してみよう。
画像引用元:ピクテ投信投資顧問(YouTube)

画像1

まず、画像上方に注目して欲しい。金融相場調整業績相場ピーク本格調整(暴落)が幾度となく繰り返されているのが見て取れるだろう。

金融相場では中央銀行による緩和策によって、経済の血流ともいえる資金の循環を活性化させる措置が取られる。これにより景気敏感株を中心とした株価全体が急騰し、金利は低水準で抑え込まれて推移する。

そして金融相場から業績相場に移行する過程で、調整(中間反落)が発生する。この局面は金融相場の終焉期であり、業績相場の始まりが目の前にあるものと認識しても良いだろう。

では何故、調整(中間反落が発生するのかといえば、大きく分けて2つの理由に分けられる。

一つ目は、中央銀行が労働市況物価動向金融市場住宅市況などの指標を注視し続けた結果「これ以上、金融緩和する必要は無い」と判断することで、今まで供給していた緩和マネーを断つからだ。早い話、中央銀行が買い支えるのを辞めるから株価上昇の圧力が消えるという話である。

二つ目は、投資家心理の冷え込み(行動力学)によるところだ。

株式市場は中央銀行の動向による影響が大きく、業績相場に移行する直前に相場参加者による利益確定売りが連鎖的に発生し、価格が崩れがちになる。

その後、次世代を牽引する企業が好業績を発表し始め、金融市場は自力浮上する事で、再び株価が反発を始めて上昇相場に移行する。そこからようやく業績相場が始まるという流れだ。

まとめると、金融相場とは中央銀行の緩和策により金利安と株高を意図的に作りだされた相場であって、業績相場とは緩和策を止める事で金利高と株高が自然発生し、景気回復と共に上がり続ける相場である。


利上げと金融引き締め

ここからは業績相場の後にやってくる逆金融相場逆業績相場について触れていく。

一言でいえば、景気や相場が過熱していく中で、中央銀行がそれらを抑え込もうと引き締め策に回る相場だ。

では何故、中央銀行がわざわざ景気を冷やすような真似をするのかと言うと、バブルが発生するリスクを恐れているためだ。

バブル相場とバブル崩壊については、過去記事「本当にヤバイ暴落は不動産バブル崩壊」に記載しているので、未読の人はぜひ読んで欲しい。

逆金融相場逆業績相場は、利上げ局面の後半戦と覚えておけばいいだろう。景気サイクルでいえば、景気加速期景気成熟期が該当する。

過去のサイクルを2つ挙げてみよう。2004~2007年2016~2018年だ。
画像引用元:楽天証券トウシル(YouTube)

画像3

画像4

この2つの図は、代表的な株価指数S&P500中央銀行(FRB)による利上げの推移を比較したものだ。

まず、画像の左側、2004年と2016年に政策金利が初めて引き上げられたところに注目して欲しい。S&P500も相関するように上昇を始めているのが分かるはずだ。

この時点ではまだ業績相場だ。上記でも語ったとおり、利上げ序盤は「当局も景気を強いと判断しており、業績相場にはプラス」と曲解するような場面が見られる。

しかし、政策金利が中央銀行の掲げる目標インフレ率(2.0%)を越えた後に、株価と相関するように利上げ回数を執拗に増やしていく。その結果、株式市場が利上げに耐え切れなくなり、限界を超えた瞬間に今まで過熱していた相場が弾けて、大幅下落を始める。

2004年以降は金利を17回、2016年以降は8回引き上げている。これは何を意味するかというと、利上げ継続が長引くほど相場下落が深くなりやすいという事だ。

他に注目すべき点は、年間の利上げ回数だ。何回目の利上げで暴落が始まるといった法則性は明らかには出来ないが、中央銀行の掲げる目標インフレ率を達成した後、年4~5回以上の利上げを実施する場合は黄信号と言えるだろう。

そしてもう一つ怖いシグナルはQT(量的引き締め)だ。

画像8

この図の黄色い線グラフは中央銀行のバランスシート(資産)だ。前回のQTは2017年10月に行われた。黄色い線が一時的に下っているのが分かるだろう。これが利上げと同時進行に行われた場合も黄色信号だといえる。

次は相場の下落を振り返ってみよう。

2006年以降の利上げ連発による揺り戻し(初動)は、マイナス20%ほど(2007年末~)その後に有名なリーマンショックが連鎖的に起こる。

画像6

2016年以降の利上げ連発とQT発動による揺り戻しは、マイナス20%ほど(2018年10月~)

画像8


どう立ち回るべきか?

上記で説明した通り、まずは景気サイクル相場サイクルを意識するところから始める。

そして出来るだけ経済・金融の専門家の話に耳を傾け、得た情報を精査し、自分たちは今どの局面に立たされているのか?といった環境認識を行うことでようやく最低限の準備が整う。

次に目を向けるべきは大衆心理だ。

画像9

まず前提として、大半の人が相場に翻弄されているという事実がある。理由は単純で、人々の行動原理というのは、感情欲望による部分が多く占めているからだ。

彼らは束の間の好景気に触れ、一定以上の種銭を得た上で「FIREしたい」「リッチになりたい」「老後の貯えを何とかしたい」とそれぞれ似た目的をもち、そこで初めて相場に参加する。

ここで一つ言えるのは、大衆は同調しやすく「さぁ、投資をするぞ!」と立ち上がり、投資ブームになった時点で景気が過熱していたり、あるいは一つの強気相場が終盤に差し掛かっているケースが多かったりする。

市場を出し抜くことなど出来ないのに、なぜか自分だけが大儲けした後の事ばかり頭に浮かび、やがてエスカレートするように行動が大胆になり、都合の悪いリスクを軽視してしまう。

相場格言に上げ100日下げ3日というものがあるとおり、大衆トレーダーはせっかく抱えていた利益をすべて吐き出し、損失を抱えたまま悲観し、ド底で株を投げ売ってしまい、退場してしまう。

ゆえに、賢明な投資家・トレーダーは大衆心理の逆張りを行うべきである。


具体的な話に移ると、まず、誰もが落胆し恐怖に包まれている景気不況期のうちに投資資金を充分に用意しておく事が望ましい。

不況局面にこそ、金融相場という無邪気に爆上げを繰り返すボーナスステージが訪れるからだ。

ここで投資初心者が狙いがちな底買い天井売りではなく、金融相場という力強い上昇トレンドに乗る事だけに集中する。それだけで容易く利益を手にする事が出来るはずだし「下がってから買おう」と言いつつ結局買えず終いといった機会損失を避ける事が出来る。

次に景気回復の軌道に乗り始めると、金融相場から業績相場への移行が意識され、株式市場では上値が重たい展開になる。ここで含み益を短期間で台無しにしかねないので、段階的にポジションを落とすなどをしてリスク回避に努める。後の業績相場を意識し、モメンタム投資の構築を始める。利上げが始まり、株式市場全体の底打ちを迎えれば、達観して業績相場に乗り出す。

景気回復期から景気加速期にかけては、金融相場業績相場で得た儲けに慢心することなく、次のリスクに目を向け始める。上記でも説明したとおり、目標インフレ率の達成金利の引き上げ回数住宅市況の悪化をシグナルにして、今まで取っていたリスクを段階的に縮小する。具体的には「できるだけ保持する資産」と「機動的に利益に変える資産」を予め分けておき、インデックス長期保有株のようなとなる資産以外を割り切って売却することを決めておく。もしも思惑通り高値で売却できた場合、売値よりも安値で再購入することも視野に入れておく。

景気成熟から景気軟化にかけては、本格調整(暴落)に対する警戒が必要となるが、低インフレ+低金利(利下げ)の局面が始まれば、些細な理由をきっかけに反発(中間反騰)が始まる。

あるいは本格調整(暴落)が来た場合には、その後に不況局面が再来し、中央銀行の動向次第で金融相場がまた再来する。つまり、暴落反騰、この2つのリスクを留意しなければならない最も難しい局面となる。

結局のところ、一個人が1つのサイクルがどこで始まりどこで終わりなのかを知るには、実際に景気動向をチェックしながら、自分で相場を体験しなければならない。全ては後付けによって結論が出されるので、自分の仮説と照らし合わせていく作業も必要になるだろう。

まとめると、市場を出し抜いたり、相場サイクルの転換期を正確に読みきる事など不可能に近いので、せめて「足元の景気局面・相場サイクルは?」「投資家心理は貪欲と恐怖どちらに傾いている?」「次に何が巡ってくる可能性が高いのか?」「目先どんなリスクが隠れているのか?」

このように常に環境認識を怠る事なく、相場サイクルと大衆心理を意識することで、致命的なリスクを無くしていこう。

まだ慣れていない部分もありますが、サクッと読める記事を目指します。