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ソウル・イン・ロッカー 第3話

〇凛太郎の自宅・庭
成宮「うちに何か用かな?」
成宮の視線の先には、木。木の陰から見知らぬ男が出てくる。
成宮「警察だ。大人しく投降しろ。」
男「なんやぁ?てめえ…」
凛太郎が玄関から出てくる。
凛太郎「はぁ、はぁ…!びっくりしたぁ」
成宮「凛太郎くん、この木は伐採した方がいい。とても不用心だ」
凛太郎「え、あ、はい…え?」
マツダ「なんやなんや?この家には警察が住んでたんか?ついてへんなぁ」
刃渡りの長いナイフを取り出すマツダ。
凛太郎「!」
成宮「凛太郎くん、君の力がわかっただろう。はやく家の中に戻りなさい。」
マツダ「ほー、東京の警察はカッコええなあ。その鼻につく東京弁…気色悪くてたまらんなぁ」
ニタリと不気味な笑顔を浮かべるマツダ。
凛太郎「(よく喋るやつだな…)」
成宮「マツダサトシ、お前は全国に指名手配されている。逃げ切ることなんてできない。ナイフを捨てて大人しく投降しなさい。」
マツダ「アホか、こっちはもう人刺してもうてるんや。警察なんかどうっちゅうことないわ!!」
マツダ、成宮に向って走ってくる。
成宮「そうか。…仕方ない」
警察手帳を閉じると同時にナイフを蹴り落とし、後ろに回り込み腕で首を絞め、拳銃を突きつける。
マツダ「カッ…!」
息が出来ず脂汗をかくマツダ。
成宮「ここに引き寄せされた時点でお前は終わった。」
暴れようとするマツダにカチッと拳銃の安全装置を外す成宮。
凛太郎「な、成宮さん!」
成宮「なんだ?」
凛太郎「いや、その…。う、撃たないですよね?」
成宮「…撃たないと思う理由は?」
凛太郎「そ、その人に俺、何もされてません、無傷です!だから、う、撃つのはちょっと…やりすぎかなぁ…って…」
マツダ、どんどん血の気がなくなり青ざめていく。
成宮「君はお人好しだな」
凛太郎「え?」
成宮「マツダは大阪のとある家に強盗に入った挙句、住人に見つかり、その場にあった包丁でその住人を刺した。そのあと逃走し、全国に指名手配され今に至る」

成宮「私がこの場にいなければ君自身だけでなく、君の家族が同じ目にあっていたかもしれない」
凛太郎「そ、それは…」

成宮「魂は意にそぐわない行動をする肉体から救ってほしいと言っている。つまり…魂を救う手っ取り早い方法は“肉体の消失”だ。」
凛太郎「…」
マツダ、最後の力を使って暴れ成宮を振り切ろうとする。
成宮「…仕方ない」
ゴキッ!とマツダの首を曲げ、気絶させる成宮。
ズルズルとその場に倒れ込むマツダ。
成宮、マツダに向けていた拳銃を凛太郎に向かって突きつける。
思わず後ずさる凛太郎。
成宮「くだらないこと考えてると、いつか殺されるよ?」
凛太郎「…」
成宮、銃をしまい、手錠をだしマツダの手首につける。
成宮「2時7分、マツダサトシ〇〇(罪状)の容疑で逮捕する」
スマホを取り出し電話をかける成宮。
成宮「マツダサトシを確保した。車をまわしてくれ」
電話を切る成宮。
凛太郎、立ち尽くしたまま。
成宮「…」
黒川が警官を連れて庭に入ってくる。
黒川「成宮さん、マツダを」
成宮「あぁ。では私もこれで失礼する」
マツダを連れて出ていく黒川と成宮。

〇護送車
後部座席には気を失ったままのマツダを挟むように警官がついている。
黒川「では、よろしくお願いします」

〇黒川の車
助手席に乗っている成宮。
手に繊細な模様が描かれた古い入れ物を持っている。
成宮「…」
運転席に黒川が乗り込む。
黒川「おまたせしました」
車を発進させる黒川。

〇凛太郎の部屋
ベッドに横になっている凛太郎。
× × ×
※凛太郎視点。
凛太郎に向かって拳銃を突きつける成宮。
成宮「くだらないこと考えてると、殺されるよ?」
× × ×
凛太郎「…」

〇捜査本部・リビング
凛太郎、成宮、黒川、五木が揃っている。
テーブルの上置かれた繊細な模様が描かれた古い入れ物。
凛太郎「なんですか?これ」
成宮「ボンボニエールだ」
凛太郎「ぼん…?」
成宮「ボンボニエール。砂糖菓子を入れる容器のことだ。日本では近代以降、宮中宴会の記念品として配布されることもあった」
凛太郎「それで…なぜ僕にこれを?」
成宮「持田のロッカーの中にこのボンボニエールが入っていたんだ」
凛太郎「これが?」
凛太郎、手にとってボンボニエールをみる。
凛太郎「…よくみたらなんか綺麗な模様が入ってますね」
黒川「ボンボニエールは美術工芸品で一つ一つ手作業でつくるそうです」
凛太郎「へぇー…」
成宮「それだけか?」
凛太郎「へ?」
成宮「特に何か思い出さないか」
凛太郎「あ、はい。すみません…」
五木「凛太郎くんの『あ、はい』って口癖なわけ?いっつも『あ、はい』って言ってない?主体性がないよね!それじゃぁ、モブだよ!モブ!」
凛太郎「え、あ、はい。すみません」
五木「ほら!」
ウケるーと1人で盛り上がる五木。
凛太郎「…それで僕にどうしろと?」
成宮「そのボンボニエールを作ったとされる人物に会いに行ってもらう。持田のことを何か知っているかもしれん」
凛太郎「作った人とか分かるんですか?」
成宮「模様の中に家紋みたいなものがあるだろ。それは極藝術(きわみげいじゅつ)大学で教授をしている後藤士郎という工芸師のものだ。極藝術大学には黒川が引率する」
黒川「よろしくお願いします。」
凛太郎「あ、はい。お願いします。」

〇黒川の車
運転席に黒川が座り、後部座席に凛太郎が座っている。
凛太郎「…」
黒川「…」
凛太郎「…今日は成宮さん一緒じゃないんですね」
黒川「成宮は本来、我々の指揮を取る立場なのであまり人前に出てはいけないんです」
凛太郎「なるほど…」
凛太郎「…」
黒川「…」
凛太郎「黒川さんは成宮さんの部下的な立場で…?」
黒川「えぇ、そうなります」
凛太郎「へぇー…」
黒川「…神楽さん、昨晩はマツダの事もありましたし、まだしばらくかかるので私に構わずゆっくり寝ていて下さい。」
凛太郎「あ、はい。すみません…」
黒川、クスッと笑う。

〇黒川の車の中
黒川「神楽さん、着きましたよ」
車の外からドアをあけ、凛太郎に声をかける黒川。
目を覚ます凛太郎。
凛太郎「あ、はい。すみません。」
黒川「ここが極藝術大学です」

〇極藝術大学・門前
凛太郎「威圧感がすごいですね…」
黒川「日本一の藝術大学ですからね」
凛太郎「へぇ…」
黒川「入館手続きをしてくるので、ここでお待ちください」
去っていく黒川。
凛太郎、行き交う大学生をみる。
大学生たちに引け目を感じる凛太郎。
凛太郎「…はぁ」
派手なつなぎを着た男が凛太郎を見つめている。
柴「お前…凛太郎か?」
凛太郎、声をかけられて振り向く。
ツナギを着た男の正体は柴健太(20)。
凛太郎「柴…ケン」
柴「お、まえ!!おまえぇえーーー!!」
柴が勢いよく凛太郎に抱きつく。
柴「なんだよ!!死んでねえじゃん!生きてんのかよ!?えぇ!?」
凛太郎「う…うん、い、生きてる」
柴「なんだよ、いつから生きてんだよ!?あぁ?ちげぇ、なんだ!?訳わかんねぇ!でもうれしい!!死んだかと思ってたよ!!」
凛太郎「い、いま死にそうだけど…!!…クッサイ!!」
柴、ハッと凛太郎からは離れる。
柴「あ、ごめん!!ずっと大学で作業してて風呂入ってねえんだ」
凛太郎「そ、そうなんだ…なんかごめん」
柴「お前、いきなり連絡取れなくなってよぉー、休学だっていうからよ…そんなことより何してんだよ!こんなところで!」
凛太郎「え?あ、いや…ちょっと用事で…。後藤士郎って人探してんだけど…」
柴「後藤だぁ?何学科の後藤だよ?」
凛太郎「教授らしいんだけど…えっと…これ。こんなやつ作ってる学科ってなに学科?」
ボンボニエールを取り出す凛太郎。
柴「なんだこれ」
凛太郎「ボンボニエール」
柴「ぼん…?」
柴、ボンボニエールを手に取る。
柴「素材はアルミ…いや、銀かぁ?開くんかこれ」
柴、持ち上げり眺めたり蓋を開けようとする。
凛太郎「気をつけてよ、証拠品なんだから…」
柴「証拠品?」
と、ボンボニエールが手から滑り落ちる。
柴・凛太郎「あ…」

地面に向かって落ちていくボンボニエール。
凛太郎の手を出すが間に合わず地面に落ちる。
ふたが開き中に入っていた金平糖が散らばる。

バラバラバラ…
カランカラン…

〇平野病院・診察室(回想)
※持田視点。

持田「あーぁ…」
落ちた金平糖を拾おうと椅子から立ち上がる持田。

警察官「…なにしてんだよ、ったく。ぼーっとしてんだから」
一緒になって拾う制服をきた警察官。

持田「ごめんごめん。あ、ほら、そこ気をつけてよ」
警察官が落ちた物を踏み、ガリッと音をたてる。
警察官「ったく…何考えてたか知らないけど」
帽子をあげる警察官。
警察官「くだらないこと考えてると、いつか殺されるよ?」
その警官の顔は成宮漱石。

3話おわり。

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