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日本人だらけのRIZIN大晦日に僕たちが熱狂できるワケ

「あの榊原氏が新しいイベントをやるらしい」

一報が飛び込んできたのは2020年10月8日のことでした。

なんだかんだで、あれから5年。

確実に日本格闘技界には「RIZIN前」と「RIZIN後」ともいうべき大きな影響を与えてきました。今回は、この5年間でRIZINがもたらしたものについて考えてみたいと思います。

【1】今年のカードは「豪華」なのか?

今年の大晦日、メインは堀口恭司VS朝倉海の日本人対決。その他にも、日本人同士でテーマ性に富んだカードが並びました。

榊原CEOは「過去最高のラインナップ」と胸を張り、ファンからは絶賛の声がほとんどです。

ではここで、RIZINの前身=DREAM最後の大晦日2012年のカードを一部見てみましょう。

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あれ、わりと豪華だ…。海外勢は北米やONEでの王者クラスが目白押し。(失礼ながら全くと言っていいほど記憶に残る大会とはなっていませんが)

比較すると今年のRIZIN大晦日は現時点で海外選手の参戦もありませんし、こっちの方が明らかにカードが強い気もしてきます。

やっぱりみんな、ほめ過ぎじゃないですか?

【2】「世界最高峰」という幻影

「日本がトップだコノヤロー!」って知ってますか?

RIZINの前身ともいえるDREAMで、現「俺たちはファミリーだ!」おじさんこと青木真也がリング上で放った名セリフ。(2008年の大晦日アルバレス戦)


PRIDEが消滅してもファンは、DREAMに対して「最強かつ最高」だったその姿を見ていました。青木は圧倒的な勝ちっぷりでそのファンの心の支えであり、イベント自体の求心力になっていたのです。

しかし結果的に、DREAMはその期待におしつぶされるように苦しみ続け、4年間で活動を停止しました。母体はK-1を主催するFEGでしたが、DREAMはほとんどの大会が赤字だったと言います。

いま思えば当たり前。

大会が求心力を維持するには、身の丈にあわないトップファイターを招聘し続けるしかありませんでした。

しかし、ゲガールムサシがいようが、アリスターオーフレイムがいようが、目の肥え過ぎたファンが満足することはなかったのです。みんな「いて当たり前」だと思っていたからです。

「PRIDE時代よりショボくなったなあ…」

楽しみながらも心のどこかで満足できない、そんな人が多かったと思います。(贅沢すぎる話ですが・・・)

末期は、資金難と震災の影響からか日本人中心の編成に。

求心力は当然のように低下、会場規模も小さくなり絶望的な雰囲気のなかでDREAMは活動を停止しました。

ファンが求めた「世界最高峰という幻影」にDREAMは押しつぶされました。

【3】石渡VS扇久保に感じた「熱狂の兆し」


2012年の豪華カードに絶望していた私たちは、なぜ8年たったいま、2020年のラインアップに熱狂できるのでしょうか。

兆しは2019年の大晦日にありました。

大会ハイライトは朝倉海の敗戦やムサエフのライト級GP優勝かもしれません。もしかすると運営は、「石渡VS扇久保」にこそ手ごたえを感じていたのではないでしょうか。


正直、ひと昔前ならば大田区総合体育館でやっていたようなカードです。

二人の、泥臭い熱戦にさいたまスーパーアリーナの約3万人が大歓声をあげたのです。

たたき上げの国内トップ同士の対決が盛り上がった。

一言でいうと、当たり前のことに思えます。他のプロスポーツならね。

MMAにおいては、ようやく本当の意味で「国内プロリーグ」が成立するかもしれない、そんな実感が得られた大きな意味を持つ試合だったと筆者は思うのです。

【4】むしろコロナ禍ではっきりとした方向性

野球には米メジャーとプロ野球が、サッカーにも欧州リーグとJリーグがあります。

そこには海外が上、日本が下、という厳然としたピラミッドはありつつも変に国内を卑下した見方は存在しません。(意識高い系の海外ファンはどのスポーツにもいるでしょうが)

メジャーはメジャーですごいけど、国内も国内で面白い。レベルが違う?いやいや、「この選手なら海外で通用するかも?」と才能ある選手に夢を乗せる、それでいいじゃん。

実はRIZINによって(特に堀口獲得以降)醸成されてきたのは、そんな他のプロスポーツでは当たり前の楽しみ方でした。

・バンタム級四天王と新鋭の対戦でもりあがる

・朝倉海という若手ホープにUFC・ベラトールへの進出を期待する

そこには「日本がトップだこのヤロー!」などという幼稚なナショナリズムはもはや存在しません。

今年はコロナ禍で海外から選手が呼べませんでした。

一方、開店休業状態だったフェザー級には逆に試合場所を求めた国内団体の王者クラスが次々と参戦。

朝倉未来や斎藤裕の活躍で、海外選手不在でも十分な盛り上がりを見せました。


結果的にバンタム級に次ぐ軸として歯車が回り始めたことで、「国内プロリーグ」としてのRIZINの存在価値・方向性がより強固になったように感じます。

2020年の大晦日ラインナップを「5年間の集大成」と胸をはる榊原CEO。

それは各選手とRIZINが丁寧に磨いてきたキャラクターや試合に向けたテーマはもちろん、国内MMAに一度は絶望し、諦めたファンがRIZINの5年を通じて成長し、「あのとき」とは全く別の形で熱狂できるようになった。その歩みに思いをはせての言葉なのかもしれません。

皆さんはどう思いますか?

’(本当はこの流れでRIZIN5年間の功罪を振り返りたいのですが、力尽きましたので続きとしてこれはまた時間があれば。)






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