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ライターの「職業病」は?

※いまなら「座り過ぎの生活自体が、さまざまな病気を引き起こす健康リスクである」という話を入れるところだが、これを書いたころにはそう言われていなかった。

腰痛・肩痛・痔・眼精疲労

フリーライターの「職業病」として最もポピュラーなのが、小見出しに挙げた4つであろう。いうまでもなく、座りっぱなしで、しかも悪い姿勢で長時間文章を打ちつづけることから起こる症状である。

さいわい私自身は腰痛とも痔とも無縁だが、眼の疲れはしょっちゅう感じるし、肩痛は一度ひどいのをやった。書籍仕事の追い込みで何日も朝から晩までキーボードに向かう日がつづいたとき、突然肩から首にかけて激痛が走り、それがまったく引かなくなってしまったのだ。
不思議なことに、キーボードは両手で打っているのに、利き腕だけが痛くなった。無意識のうちに利き腕に力が入っているのだろう。

何日か経っても激痛はおさまらず、近所の整体院に行ってみたが、まったく効果がなかった。けっきょく、痛みがおさまったのは10日以上経ってからだった。

以来私は、どんなに忙しくても、何時間もキーボードを打ちつづけないことを自らに課した。1~2時間おきに必ず少し休むのである。キーボードを打ちつづける職業の人は、ときどき休むことが規則で決まっている場合が多いらしい。
また、キーボードの前やマウスのそばにフワフワのアームレストを置いたり、いろいろと「疲れないための工夫」をしている。眼も、ときどき濡れタオルなどで冷やす。 

フリーライターは太りやすい

なぜライターが太りやすいかといえば、「人目がないぶん、仕事中のつまみ食いがしやすいこと」や、「執筆ストレスを食べることで解消しようとする人が多いこと」、「運動不足になりやすいこと」が理由として挙げられる。しかし、最大の理由は「原稿を書いていると腹が減ること」にある。
 
よく知られるとおり、脳は身体の中で最もエネルギーを消費する器官である。「頭を使うと腹が減る」というのはほんとうであって、深夜に1人で原稿を書いていると、突然猛烈な空腹感に襲われることがある。で、冷蔵庫をゴソゴソとあさったりするのだ。

空腹の勢いにまかせて食べていると、当然過食ぎみになり、そのぶんがそっくり脂肪になってしまう。頭は使っても身体は使っていないから、脂肪が消費される率が低いのだ。すなわち、「慢性“受験太り”状態」に陥るのである。

アルコール依存症のリスク

ライターに限らず、小説家など、フリーランスの物書きにはアルコール依存症が多い。中島らもや野坂昭如が有名だが、ほかにもたくさんいるらしい。スティーヴン・キングの『小説作法』という本を読んだところ、彼がアルコール依存症(しかも薬物依存も併発)に苦しんでいた時期のことが迫真の描写で再現されていて、身につまされた。

なぜフリーの物書きがアルコール依存症になりやすいかといえば、理由はかんたん。「その気になれば朝から酒が飲める環境」と「飲んで現実逃避したくなるストレス(シメキリの山など)」が、両方揃っているからである。

会社員なら、いくら酒好きでも朝から飲むわけにはいくまい。しかし、フリーライターにはそれができるのだ。
とくに独身の場合、昼ごろ目覚めて冷蔵庫を開け、いきなり缶ビールを「プシッ!」と開けたとしても、咎める人はいない。
しかも、日本は先進国の中でもとくに飲酒に寛容な国であり、外に出ればコンビニのお酒コーナーや酒類の自販機など、誘惑に満ちている。

というわけで、アルコール依存症はライターの「職業病」といってもよいのである。

※後注/私自身、一時期はアルコール依存症の一歩手前くらいまでいったが(治療とかは受けていない)、一念発起して(半分ウソ。ドクターストップがかかったのもある)2年前に断酒した。
何しろ脳は商売道具だし、人生の最後まで現役ライターでいたいから。

同様に、ネット依存症にも要注意。フリーライターはパソコンに向かう時間が異様に長く、仕事柄ネットをつなぎっぱなしにしているケースが多い。いきおい、ついつい仕事と関係ないサイトをあれこれのぞいて、ネット依存症になりやすいのである。
アルコールと違い、ネットは仕事と地続きだから、よりいっそう、自覚のないまま依存症になる危険性が高い。

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