児童虐待の本当のこと〜誰でも虐待する可能性がある、虐待かもと思ったら189に電話を〜

×継父や母親の交際相手による虐待が多い
×虐待を受けて育った人は必ず虐待をする
×虐待を受けて育っていない人は虐待をしない
×虐待をする人は子どもを可愛がっていない

これらは全て間違ったイメージです。

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先週あたりからnote新規登録者さんへの「こんな人のフォローどうですか」みたいなのに紹介されていたようでフォローしてくださった方がたくさんいらっしゃいます。

この場をお借りして御礼申し上げます。いつも読んでくださっていいね、コメントくださるフォロワーさんもありがとうございます😌

フォロワーさんが増えて初めての投稿が、ちょっと重い内容で申し訳ありません。が、大切なことなので今回はちょっと真面目に書かせていただきます。

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休校の長期化や外出の自粛要請などによって子どもや家族が家の中で過ごす時間が増加していること、テレワークなどで親が家で仕事をする必要も出てきていること、勤務時間の削減により経済的に追い詰められている家庭もあることなどから、保護者の気持ちに余裕がなくなり、苛立ちが子どもに向かったり、両親間にDVが発生したりすることがあるかもしれません。そうした状況が続きますと、子どもへの不適切な対応がエスカレートして、虐待・ネグレクトにつながることも危惧されています。※1)下記要望書より引用

日本子ども虐待医学会、日本子ども虐待防止学会、日本小児科学会の3団体連名が2020年4月7日、厚生労働大臣、文部科学大臣宛に対して、虐待を危惧していること、それに対する対策を取りまとめた要望書を提出しました。※1

先ほどの要望書の引用にあるように、今、虐待は非常に起こりやすい状況にあります。

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幼い子どもの虐待死が起きるとマスコミがこぞって報道します。しかしマスコミの報道だけを見ていると、非常に偏った印象を植え付けられているように思います。

マスコミの報道は、「加害者がどんなひどいことをしたのか」「子どもがかわいそうだ」「児相などの対応に問題はなかったのか」というところにフォーカスが当たっています。

加害者に対し怒りを覚えるような内容で、「あんな小さい子に暴力を振るうなんて!なんてひどい親だ!そんなことをする人の気が知れない!」「児相は何やってんだ!」と見ている人は自然に思います。私も恥ずかしながら、虐待のことを詳しく勉強するまではそのような気持ちでいました。そして「あんな親にはなりたくない」と。

また、継父や母親の交際相手が加害者だった場合は「わが子じゃないから可愛がれなかったんだ」みたいな憶測も飛び出します。

虐待のことが「子どもかわいそう、加害者ひどい!」という雰囲気でセンセーショナルに報道されるたびに、虐待の本当のことが見えなくなっていく気がします。

※決して加害者の親のしていることを擁護するつもりはありませんし、虐待は許されることではありません。また児相の対応に足りないことがあるのも承知です。

冒頭の虐待に対する間違ったイメージは、昔の不勉強だった私が持っていたものでもありました。その間違いについて詳しく書いていきたいと思います。

×継父や母親の交際相手による虐待が多い

幼い子どもの虐待死のニュースなどをみると、加害者は継父や同居している母親の交際相手であるイメージが多いかも知れません。しかし、虐待の加害者で一番多いのは「実母」が半数以上、ついで父親が3割以上となっています。

死亡に至らない虐待の場合も、加害者の半数以上一位は実母で半数を超えています。

画像1


厚労省 児童虐待による死亡事例の推移↓


厚労省 個別調査票による死亡事例の調査結果↓(平成29年度)

􏰆􏰇􏰈􏰉􏰊􏰋􏰌􏰍􏰎􏰄􏰅􏰏􏰐平成29年度に発生/表面化した、心中以外の虐待死した子どもは52人いました。1週間に一人が亡くなっています。でもそのほとんどは報道されていません。
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「虐待の連鎖」という言葉があります。虐待を受けて育った人は、また自分の子どもに虐待をしてしまうということです。

実際、虐待をうけて育った人はハイリスクだと言われています。

ただ、虐待の連鎖は30%程度と言われています(Kaufman and Zinger 1993)。つまり、虐待を受けて育ったからといって必ずしも子どもに虐待をするわけではないのです。

また、子ども虐待診療の手引き第2版には「虐待をする特別な親がいるわけではありません。誰でも虐待者になり得ます。」と書かれています。※2

虐待を受けて育ったけども虐待をしない人もいるし、虐待を受けずに育ったけども虐待する人もいる、ということです。

誰でも虐待をする可能性があります。

×子どもを虐待する人は、子どもを可愛がっていない

虐待のハイリスクな親御さんの条件のひとつに「望まぬ妊娠」というのがあります。子どもを望んでいなかったのに妊娠・出産したという場合です。この場合、ハイリスク状態として医療機関や地域で情報が共有されます。なので、子どもを望んでいなかった人が虐待をするリスクが高いのは周知されていることです。

しかし、虐待をする人が全員子どもを可愛がっていない・妊娠を望んでいなかったわけではないのです。待望の子どもだったのに虐待してしまうことも多々あります。

ルポ児童虐待※3)という本にある事例は、大きく紹介された2例とも親は子どもを可愛がって育てていました(2例とも親は虐待を受けて育っていましたが…。)「自分の親のように育てたくない!」と思い、頑張って育てている。可愛がっているのに虐待をしてしまう人は結構いるのです。

この本の事例の1つめは、トイトレがうまくいかない女の子のお母さんが加害者でした。このお母さんもトイトレがうまくいかないからといって、すぐに暴力を振るったわけではありません。「おもらしを小学校までに治さないと、学校で虐められる。それまでになんとかしなくては」というプレッシャーが大きくあり、いろんな方法を試してもうまくいかなかったのです。

そして最初はちょっとデコピン程度だったのがエスカレートしていきました。トイトレのこと以外は、一緒に歌を歌ったり遊んだり可愛がって育児をしていたのでした。

どうしたらいいのかわからない、追い詰められる状況は、育児をしていく上で色々起こります。
つまり児童虐待は、ひどいことを平気でする特別な親が起こす事件ではなく、「どの家庭でも起こり得ること」なのです。

「可愛がっているからあの人が虐待をするはずはない」という考えは、起きている虐待を見逃す要因のひとつになります。

毎日子どもと向き合って子育てをしている人なら一度くらいは子どもに対してイライラする気持ちを持ったり、「自分も虐待してしまうかも」とふと感じたこともあるのではないでしょうか。今のよくあるこの子育て環境だと、ありふれたことだと思います。

家庭で虐待が起こっていないのは、ザックリいうと経済力や親の健康状態、精神的、体力的に許容範囲内だからなのです。あくまでザックリの話ですよ。

人の不安やストレスの感じ方、困難への対処力などは、人によってキャパシティもそれぞれです。また、お子さんの気質によって、育てやすかったり、そうでなかったりでも育児の難易度は変わります。また、周りからサポートが得られるかどうかも大変さに大きく影響します。

なので、他人の家の育児の大変さは正直言って当事者にしかわかりません。

よって他人の家と同じような状況だからと言って同じように家事と育児(と時には仕事)を両立できるわけではありません。「●●さんちはできているのにうちができないのはおかしい」というのは違います。よその家庭と比べても意味のないことです。

親自身が助けてもらえない状況で、突然仕事がなくなって生活に不安が出てきたとか、毎晩の夜泣きで睡眠不足で、日中もワンオペで精神的にも肉体的にも限界となると簡単に虐待が起きてしまうのです。

虐待?と思ったら

誰の家でも虐待は起こり得ます。そして虐待を予防、止めるには親だけの努力では不可能で、外部からのサポートが不可欠です。

今、冒頭にあげたように新型コロナウイルス感染症の影響で、間接的に虐待が起こりやすくなることが懸念されています。

なので、もし、「あれっ…お隣さん、もしかして…」と思ったら、迷わずに189に電話をしてください。

そのご家庭にサポートが入るようにしていく必要があります。これは告発ではなく、その家族へのサポートへの第一歩です。自分が名乗らなくても匿名での通告もできます。結果、それが虐待じゃなくてもいいのです、間違っていても構いません。虐待かどうか判断するのは児童相談所の仕事です。

こちらの方のnoteが かなーーり参考になります。書こうと思ってたことが前半でほぼ網羅されてましたので是非お読みいただければ…嬉しいです。

また、この「189に電話すること」に関して自身の経験(通告したこともされたことも両方)も交えていつか詳しく書きたいと思います。

虐待してしまいそうって人は取り急ぎこちらを

今、すでに余裕がない!って方へ。

「お子様と暮らしている皆様へ」↓下記リンクを読んでみてください。※4
スマホだと字が小さくて読みづらいかもしれません。

読んでみてダメだったら、やっぱり189や児童相談所に電話してみてください。市の乳幼児検診などを行なっている窓口・保健センターなどでも、応じてくれるかもしれません。とにかく、公的なところに電話で相談して、SOSを出してみましょう。

電話しても、たらい回しにされたと感じることや、イマイチだと思うこともあるかもしれませんね…。

「『虐待しそう』との電話の母親に『かけなおして』」

神戸市の児相の対応について不適切な対応があったとニュースになりました。

今までは、神戸だけでなく他でもこのような対応もあったのでしょうね(憶測ですが)。しかし、このように取り上げられたことで、さすがに「虐待してしまいそう」という悲痛な声を蔑ろにするようなことは今後なくなっていく…と信じたいところです。

児相の人はもちろん一生懸命やってくださっています。ただ一部の知識のない方のこのような対応で、サポートを受けることができなかったご家族がいたかと思うと苦しくなります。

ワラをも掴む思いで児相に電話をかけた人が「かけなおして」と言われたら…かけた人は絶望すると思います。「それは不適切じゃないかと抗議して」とは、さすがに私も言えません。

ただ、心苦しいのですが、サポートが受けられるまであきらめずに電話してほしいです。それは育児に苦しんでいる親と子どものためになるからです。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、どうかどうかよろしくお願いします。

まとめ

だれでも虐待の加害者になり得る
虐待かも?と思ったら児相に電話してください
虐待しそうなときも電話してください

虐待に関しては、今後もまたときどき書いていきたいと思っています。

それでは、また次回🙂


楽しい記事も書きたい。
さすがにうちの園児二人の休園が続いていて私もバテてきてます。そしてアップルペンシル持たせてもらえません😭下手なマンガも描きたいです。

引用・参考)

※1 日本小児科学会

※2 日本小児科学会.子ども虐待診療の手引き第2版.(2020/4/20最終アクセス)


※3 朝日新聞大阪本社編集局著.ルポ児童虐待.朝日新聞出版.2008.

※4 日本子ども虐待医学会






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