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「読みたいことを、書けばいい。」に出会えて、本当によかった。

#読書の秋2020

この本との出会いは、偶然でした。
いろんな偶然が重なって出会った本ですが、読んだ後と読む前では、自分自身の「文章に対する向き合い方」が180°変わったと感じています。

今まで数々の本を読んできましたが、読んだ後、「読むことができて本当によかった。」と思える本はそうたくさんありません。
その中でも、『読みたいことを、書けばいい。』は、文章を書く人すべてにおすすめしたい本だと思ったので、その理由を共有できたらと思います。


この本を読むきっかけになったのは、マーケ放送室の西村マサヤさんがシェアされたこちらの投稿です。

私はこの投稿を見て「これは・・!」と思い、2秒後にはAmazonでKindle版をポチっていました。
なぜ2秒後にポチっていたかというと、私はまさにその時期、文章を書くのに困っていたからなんですね。


具体的に説明すると、私は少し前に、アルバイト(インターン)先で、
「うちで本を出版することになったから、執筆よろしく!」
と、突然の指令を言い渡されていました。

それまでもネット上で記事をちょこちょこ書いたりはしていましたが、一介の大学生にとって「一冊の本を書く」なんて想像を超えたおしごとです。

しかもよくよく話を聞いてみると、
「特に指示はないから、構成から執筆まで全部任せるよ。」
とのこと。

なんと、今まで何の経験もなく、特に知識もない私がいきなり約80000字の本の企画・執筆を任されてしまったのです。
*ちなみに私は医療系の大学生で、普段書く文章と言えば症例のレポート(大体1000字)くらいです。

幸いなことに、「伝えるべき内容」ははっきりしていたので、書く内容のリストアップや構成づくりは案外スムーズにいきました。
構成が決まってからは、書かなけばいけないことをどんどん書いていき、50000字くらい書き終わって自分の文章を読み返してみると、

なんてつまらない文章なんだ…。

と気がつきました。


大事なことを余白なく伝えた結果、ただの説明文のようになってしまい、おもしろみが全くなかったのです。

もし数枚の資料であれば、おもしろくなくても特に問題はありません。
しかし、「1冊の本」として通して読んだ時、それではダメだったんですね。
文章がおもしろくないと、読者にとって読むことは苦痛になってしまいます。
読んでもらうために必要なのは、「おもしろさ」なのだ、とそこで初めて気がつきました。



「でも、おもしろい文章ってどうやって書いたらいいんだろう…。」と悶々としているときに、偶然目にしたTwitter投稿で『読みたいことを、書けばいい。』の存在を知りました。

この本の表紙には、「人生が変わるシンプルな文章術」と書かれています。
よくわからないけど、文章を改善するヒントが見つかるかもしれない…!と思い、即購入して読み始めました。

その時、私は「本を書く」という大役を任されたのに、それがなかなかうまくいかず、かなり焦っていました。
何とかうまい文章を書く方法はないか、おもしろく書く技術はないか、とすぐ実践できるテクニックを求めていたんだと思います。

どんな役立つノウハウが乗っているのだろう、と期待しながら開いたこの本で、最初に出てきた文は、

『あなたはゴリラですか』

という1文でした。

ナチュラルに「へ?」という声が出ました。
文章の書き方や使える型、テクニックが出てくるのかと思ったら、唐突にゴリラかどうか問われたので、面食らってしまうのも当然ですよね。

最初の1文を読んだ時点で、「あれ、思った本とは違うようだぞ。」と察しました。この勘は当たっていて、読めば読むほど、想像していた本ではないことがわかってきました。
そして、いい意味で期待を大きく裏切る本でした。


本書を通して一貫したメッセージは、タイトル通り「読みたいことを、書けばいい。」というものです。

それが最もよく表現されているのは、

自分がおもしろくない文書を、他人が読んでおもしろいわけがない。だから、自分が読みたいものを書く。
それが「読者としての文章術」だ。

という箇所ではないかと思います。

ここを読んだ時、がつんと衝撃を受けました。
「自分がおもしろくない文書を、他人が読んでおもしろいわけがない。」という一見当たり前なことを、私は全然理解していなかったんだと気がつきました。

この本では、最初から最後までテクニックや技術が語れることはありません。浅いノウハウは一切書かれておらず、「書くこととは。」という深い部分が語られていきます。

著者である田中泰延さんは、24年間電通でコピーライターとして勤務され、「街角のクリエイティブ」というWebサイトで映画評論を書かれていた方です。
文章を書くプロ中のプロの人物ですが、この本を読むと、そんな方の文章に対する捉え方を目の当たりにすることができます。

そして、ノウハウ本ではないのに、読んだ後、ものすごく納得感がある本でもありました。
その理由は、「この本自体がおもしろいから」なんですね。

「文章術」と謳っているのに、その文章がいまいちだったら、全然説得力がないじゃないですか。
ダイエット目的で通ったジムで、トレーナーさんがスラッとしてたら説得力があるけど、ぽっちゃり体型だったら説得力ないのとおんなじ理屈です。

『読みたいことを、書けばいい。』という本は、文章がとにかくおもしろいです。
だから、どんどん読みたくなるし、何回も読み返したくなります。


この本に出会って、それまで書いていた本の方針を大きく転換させました。
私が以前書いていたものは、「これを読みたいか?」と問われたら、NOと言いたくなるような文章だったからです。

本書を読んでからは、
どんなに内容がつまっていても、マニュアルみたいな文章は読みたくない。ちょっとだけ余白があって、どこかおもしろさもあるような文章にしたい。
という気持ちで文書を書くようになりました。

まだまだ文章を書き始めたばかりのひよっこなので、うまくいかないことだらけですが、今までよりもだいぶマシな文章が書けるようになりつつあります。
そして何より、書くのが楽しいと思えるようになりました。
『読みたいことを、書けばいい。』に出会えていなければ、このように変化することはきっとなかったと思います。

この本に出会えて、本当によかった。