信越化学が発表した新式の接着技術とは何なのか

先日、個人的に昔から大好きな会社である信越化学から、「新式の接着技術「ShineGripTM」で市場開拓開始」とのリリースが出されました。

https://www.shinetsu.co.jp/jp/news/news-release/%E4%BF%A1%E8%B6%8A%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%80%81%E6%96%B0%E5%BC%8F%E3%81%AE%E6%8E%A5%E7%9D%80%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%80%8Cshinegriptm%E3%80%8D%E3%81%A7%E5%B8%82%E5%A0%B4%E9%96%8B%E6%8B%93%E9%96%8B%E5%A7%8B/

簡単に言うと、米国のSetex Technologies, Inc.から「生物模倣による乾式接着技術」という同社技術を取得し、企業向け市場に特化した市場開拓を進めるとのことで、同技術は、ヤモリの手を模した構造を材料表面に作り込み、従来接着剤や粘着剤を使用していたプロセスを接着剤フリーで実現できるとのことです。

引用元:上記URL

名称を“ShineGrip™(シャイングリップ)”として売り出していくようですね。すでに商標も取得されているようです。


https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2024-029512/40/ja

具体的にどのような技術なのか特許を調べてみました。
USPTO(米国特許庁)で検索をしてみたところ、Setex社からは以下3ファミリの特許が公開されていました。以下はGoogle Patentのリンクです。

Shinegripの技術が上記いずれの特許にかかる技術なのかは不明ですが(上記いずれでもない未公開特許の可能性もあり)、公開されているものの中で可能性があるとすれば、日本にも出願がされている上記リンク3つ目のものでしょうか。この特許はまだ登録されておらず、先行技術との関係から新規性等がないと判断されて特許登録ができない可能性もあるわけですが、既に登録されているSetex社の関連特許技術を見る限り、登録されるのも時間の問題でしょうか。

ざっくり内容を説明します。
まず代表図面は以下のとおりです。やもりの手の表面のように、微細な繊維状の部材が並んだような構造になっており、各繊維状の部材は先端にかけて径が大きくなるような形状になっています。

請求項(この特許の権利範囲)は以下のとおりです。

  1. 半導体デバイスをキャリアに仮ボンディングするための接着材であって、
    先端部が拡大した複数のファイバーを有する乾式接着マイクロファイバーアレイを備えており、
    前記先端部は、前記半導体デバイスの表面に接触するように構成されており、
    前記先端部は、機械的な動作によって前記半導体デバイスから外れるように構成されている、接着材。

ざっくりいうと半導体デバイスの接着材(接着剤ではなく)であり、上記図面のような形状のファイバを備えるもの、ということです。「機械的な動作」とは、一例として平行な方向への移動を指すようで、そのような簡単な動作で外せることもメリットの一つのようです。
またそのほかに、ファイバーの表面積・密度を調整することで接着力を調整できることや、水やイソプロピルアルコールによって濡らすことで接着力を強めることができることも記載されています。

従来の接着剤と比較して価格的にどうなのかとか、プロセス改善にどこまで役立つかとか、素人の私からすると全くわかりません。ただ、あの信越化学が、登録されていない特許技術について早期に技術提携をしたということはきっと重要な技術なのではないでしょうか。

おわり


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