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なつかしい駄菓子《ハッカ紙》

 駄菓子屋さんでなぜか好きだったハッカ紙。駄菓子と言っても紙なのである。ニッキ紙とも呼ばれていた飲み込んではいけないお菓子。
 通っていた駄菓子屋さんは、たしか天井から吊るしてお店に並んでいたと思う。1枚を引っ張り取る。5円か10円だったと思う。絵が描いてある紙にハッカの味のする砂糖がしっかり塗ってあって甘い。それを舐める。
 苺のショートケーキの巻かれた紙をはがしてクリームを舐めたり、カステラの紙をはがして茶色の部分を歯でこそげ取り食べるような、不思議な駄菓子。
 カステラの紙を食べてしまったら健康被害の恐れがあるから食べてしまわないようにと注意書きがあったりするが、ハッカ紙も同じだと思う。
 ハッカの砂糖を舐めてしまって味がなくなると、ただの紙になるのでペッと口から吐き出していた。今なら衛生面から考えてアウトな食べものだとは思うが、戦後の砂糖が貴重な時代に考えられた駄菓子かもしれない。小さなときにしか駄菓子屋さんに置いてなかった気がするので、製造も時代の流れで少なくなっていったのかもしれない。
 3、4歳の頃だと思う。サンダルかビーサン履いてひとりで駄菓子屋さんに行けるようになって、50円玉かたまに100円玉を握りしめてお菓子を選ぶ。
 フーセンガム、笛ラムネ、サッカーボールチョコ、チョコバット、モロッコヨーグル、黒糖ふ菓子、酢イカ、紋次郎イカ(甘辛い醤油味)、スナック菓子、梅ミンツ、粉末ジュースetc...そのときの気分でお菓子を選ぶ。
 ハッカ紙はそうやって食べるお菓子だけど、なんとなく大人にからだに良くないとか行儀がわるいとか言われそうで、家へ帰る道の途中にあった神社の赤い鳥居の辺りで舐めてた。ギラギラした真夏の太陽の下で舐めるただただ甘いハッカ紙はわるくなかった。

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