「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」感想(ネタバレなし)

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】
https://youtu.be/10ict3GCxGY

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前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から9年。2度の公開延期を経て、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』がついに公開されました。キービジュアルに書かれた「さようなら、全てのエヴァンゲリオン。」という通り、今回で1995年に放送されたテレビシリーズから続く26年のエヴァの歴史が完結するのか――期待と不安が綯交ぜになった感情を胸に劇場へと足を運びました。

作中で登場人物たちが、それぞれに「けじめをつける」と口にします。これは庵野監督自身がエヴァにけじめをつけるという決意表明でもあるんだなと。けじめをつけてエヴァから卒業する――まさに“エヴァの卒業式”を形にしたのが『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』 26年にも及ぶエヴァシリーズが紆余曲折を経て、本当に終わってしまうことが寂しくもあり、ようやく辿り着いたという達成感もあり。そういう意味でも本作は「卒業式」と表現するのが個人的には一番しっくりきました。

内容に触れていくと、相変わらずの圧倒的な情報量の映像とセリフが展開されるので一度見ただけでは理解するのは難しいですね。とはいえ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から続く物語であり、破からQに至ったときのような疑問符だらけの展開は少なく、むしろQへの解答編という感じです。物語自体が難解であるかどうかと言えば、テレビシリーズと旧劇場版を通過してきたファンにとっては物足りないかも知れません。ただ今までのように「“期待に応えない”ということに期待に応える」のではなく、素直に期待に応えてくれる作品なので、エヴァシリーズに限らず庵野監督のこれまでのフィルモグラフィーを履修していると思わずニヤリとしてしまうシーンがいくつもありました。さらには、00年代から現在に至るここ20年間のアニメ史の総ざらいともいえるアニメ作品のオマージュがいくつも散りばめられていて、アニメファンならより楽しめる内容になっていると思います。

旧劇場版と大きく違うと感じるのは、登場人物たちが人間臭く生活感をもって描かれていること、大人たちが責任を持って行動していることでしょうか。最初に書いたように「けじめをつける」につながっている描き方だと思いました。なによりも終末に向かう世界でも、前向きに人々が生きようとする姿は旧シリーズにはなかった部分ですね。

これは「真希波・マリ・イラストリアス」という存在がエヴァにとってイレギュラーであり、新劇場版を方向づけたからではないかと。彼女は初登場時に加持さんが「問題児」と評したように、話を掻き回し新たな物語を構築する上で必要不可欠であったと感じます。

今はただ、9年間待ち続けた物語の結末を見届けられたことが嬉しい。エヴァという作品に出会えたことに感謝を――庵野秀明監督ならびにスタッフ・キャストの皆様、本当に長い間お疲れ様でした。

父に、ありがとう。母に、さようなら。そして全ての子供達(チルドレン)におめでとう。

さようなら、全てのエヴァンゲリオン。


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