2月1日


2018年2月1日
早朝の品川駅で雪が、ちらついてる。
寒さに震えながらいると、ゆっくりと体とホームの距離が縮まる。
コンクリートの硬さと冷たさを味わいながら意識が途絶えた。

真っ白い世界で、たくさんの人の声が聞こえた。
覚えているのは何度も「ごめんなさい」と口に出していたことだけ。

目が覚めて視界に入ってきたのは、知らない天井と体に繋がれた管。
なんとなく、自分がまだ生きていることだけを悟った。

あのときに死んでいた方が良かったのか、生きてて良かったのかはわからない。

渋谷で働き始めた1日目の出来事。


2020年2月1日
深夜バスに揺られて起きたら名古屋にいた。
朝6時に名古屋の電車に乗り、スーパー銭湯に行きゆっくり風呂に浸かった。

最強の国内ラウドフェスの2日間。
伝説の幕開けだった。
朝から晩までこれもかってくらい音遊びを楽しんだ。
1人で遠征して1人で帰ってきた。
あれ以来、名古屋は特別な場所。

もう絶対に見ることができないと思っていたバンドのライブを見ることができた。
そこにいない人もいて、それがとてもつなく悲しかったけれど、それでも誰もがその悲しみを背負いながら前を向いて生きてる。

生きてて良かったと思えた。
2年前の答え合わせができた。

1つの夢が叶った日の出来事。


2022年2月1日
ハガキとボールペンと財布をバッグに入れて家を出た。
電車に乗ってイヤホンを耳につけ、PARAMOREとAvril Lavigneを聴く。
もう10年以上同じ音楽を聴いている。
変わったのは有線のイヤホンから、無線のイヤホンになった。
イヤホンらしさは消えてしまったけど、その感情は数年経てばそのうち消えるかもしれない。

乗り換えのホームで外の景色を眺めてたら、電車に気づかず一本見過ごした。
朝のホームで寒さに震えると同時に、ここ数年の同じ日を思い出した。

8時半開口の免許センターに、8時半ちょうどに着いた。
すでに人はたくさんいて、整理券をもらい、外で並ぶ。
流れ作業のように書類提出や支払い、視力検査を行って写真撮影に移る。

初めての免許更新は2時間の講習付き。
椅子だけ置いてある部屋に案内されて2時間ぼーっと部屋の前方にあるスクリーンを眺める。
ニット帽を被ってきていたら、バレずにイヤホンを隠してYouTubeをラジオ聞きできたのに。
そんな後悔をしつつ、昔だったら有線イヤホンだからそんなことできなかっただろうなと思いながら、ずっとおじさんの早口講習を聞いていた。

1時間が過ぎて10分の休憩が終わり。残り1時間の講習が始まる。
運転に関する自己診断シートが手渡され、周りの人たちが会場で用意されてる鉛筆をもらいに行くなか、自分は持参していたボールペンを取り出す。

1つずつ診断シートを回答して適正結果を照らし合わせる。
斜め前のスーツを着た人の回答がチラッと見えた。
絶対に運転してはいけないだろう、ってくらいに診断スコアが悪かった。
世の中いろんな人がいるよな~と思いながら再びスクリーンに映し出されたビデオを見る。

安全運転を促す講習ビデオ。
一番最初に映し出されたのは、実際にあった事故『小学生の子どもが通学路の交差点で2tトラックに轢かれて死亡した』話だった。
その話では子どものお母さんが当時の事故を振り返りながらインタビューに淡々と答えていた。

こんなビデオを見させといて、これから運転する人は気を付けてね。って、気が重すぎるだろう。
新しい月が始まった月曜日の朝11時、とても心が痛かった。
その後も、様々な事故の様子を実際の映像付きで紹介。
あんなビデオを見せられながら、それでも普通に運転できてしまう人たちもいる。
自分には関係ないと、違反をする者もいる。
モヤモヤっとした気持ちがずっと消えなかった。

気が滅入る2時間の講習を終えて、最後に新しい免許証が渡される。
自分の新しい証明写真を見て、苦笑いしてしまった。
最初の免許証と見比べてみる。

最初の免許証撮影のときは夜勤明けでテストを受けてだったから目が死んでいた。
囚人みたいな顔つきで、ガラが悪い。
3年前は就職してまだ日が浅くて、心が荒れていた時だったから多分そういいう顔つきだったんだろう。頬も少しコケている。

それに対して今は少し顔つきがふっくらしていて、何とも言えない腑抜けた面構え。
目は死んでいない気もするが、本当にダサい感じ。
ここ数か月の暮らしがだいぶ効いたのかな?
そんな二つの免許証を見比べて、少し笑いながら免許センターを後にした。

帰りの電車の中で転職サイトで面談の予約をする。
履歴書用の写真を撮らないといけなかったので、家に帰って自分で撮る。
撮影スタジオで撮るか、証明写真の機械を使うか迷ったけれど、写真を撮る機材はもう揃っているのだから自分で撮ってやろうとチャレンジしてみた。

プロジェクター用に使っている白い模造紙のボードを背景に、MV撮影で使っているライトを当てる。
三脚にα7Siiiを取り付け、USBケーブルでPCに繋ぐ。
カメラソフトを起動して、絞り、シャッタースピード、ISOをそれぞれ調節。
タイマーをセットして準備完了。

久しぶりに上半身だけスーツに着替える。
10代の頃に買ったネクタイはもう似合わなくなっていて、前の職場で使っていたネクタイを使う。
返しに行くのを完全に忘れているけど、もうこれは頂くとしよう。
今度、新しいネクタイを買いに行かなくては。

白背景のボードの前に立ち、撮影開始。
10秒間に1枚ずつシャッターが切られて、10回連続で撮る。
撮り終えたらモニターで確認。
目をつぶったり、ネクタイが曲がったり、髪の毛がおかしなとこにあったり、1時間くらい撮り直した。

今度は現象作業。
光の加減、肌の色をレタッチしていく。
フォトショップも使えるようになったから肌を修正。
俺の顔、汚いな老けたなとか思いながら仕上げる。
少しだけ鼻毛が出ていて、めっちゃ恥ずかしい!とか1人思いながらも自分でそれを修正で無かったことにできたのは、もう現代の技術に感謝だった。
今日はとことん自分の顔を見る日だった。

かかった時間はお金を払って撮ってもらうより倍以上の時間がかかっているかもしれないけれど、全部自分の培ってきた力でできたことが少し嬉しかった。

そのまま職務経歴書と履歴書を書き続ける。
17時になり、転職エージェントから面談の電話。
電話越しに知らない人から自分の過去の経歴を聞かれる。
学生時代どんなことしました?
フリーター時代のバイト先で頑張ったこととかありますか?

にこやかに聞いてくる女の人の声が甘ったるく感じて、空っぽな自分が笑われているような気がした。
そんなふうに悲観的になったり、自己否定に入ってしまってからもうずいぶん経つ。
けど、最近はようやくそこから抜け出せている。
そう思ったとしても、自分を受け入れらるようになった。

過去は変わらないし、変えられない。
きっとこの先の転職活動以外でも自分の学歴などで足を引っ張ることがあるだろう。
それでも過去の自分を恨んだりしないで、違う道を探す。

経歴書に書いたものを見て、採用担当の人が何を思うかなんてわからない。
少しでもその人に気に入るように書かなかければならないのか?
思えば千と千尋の神隠しで、湯婆婆に対して腹かせてくださいの一辺倒で就職に漕ぎつけた千尋は凄すぎる。
それに対して、ちゃんと賃金や福利厚生がある油屋はホワイト企業だ。
そんなことを思いながら、面接を受ける前に書類選考で落とされてしまうだろう現実が待っていることが悩ましい。

経歴書とは別に、クリエイティブ系には欠かせないポートフォリオを準備。
サイトを作ったはいいが、サーバーにアップロードしてローカルサーバーから公共の電波に乗せることができずに今に至る。
なんでだ!とか思いながらググりながらやってみるけど、わからん。
こんなんで大丈夫かと思っていたらもう頭の限界。
今日はここまでにしようと決めて、焼きそばと卵を使ってオムそばを作り、晩御飯。
YouTubeを見ながら長風呂して、これを書いてる。

就職先を探してると面白そうな仕事がいっぱいある。
受かるかどうかわからないけど、仕事をするってことに対してまだワクワクしている自分がいることに救われている。

2年ごとに何かある2月1日という日。
今の自分の現状は決して良くはないけど、未来がないわけでもない。
今日からまた無職だから、早く仕事につかないと。
1日のスケジュールはもう作ったから、それに沿ってしっかり生活する。
ぬるま湯に漬かりすぎて、自分がダサい体つきや顔つきになっていることに今更焦っている。
運動もちゃんとやる。

やることは転職活動だけじゃないのが厄介ではある。
マルチタスクは今の状態じゃ厳しいからのらりくらりとかわしていきたい。
恋愛も当分おあずけ。
遊びにも誘わているけど、今はダメ。
そう、今はダメ。

朝からアウトプットで久しぶりにChooningを使ってみた。
なかなか悪くない。
ほかのユーザーとの熱量の差は感じるけれど、好きな音楽を自分の言葉に変えるという行いは結構好きだ。
起きて最初の行動がインプットよりアウトプットする。
頭が疲れたから今日は転職活動をストップして、noteでアウトプットの作業に移ってみた。

やっぱりnoteは良い。
書きたいことを頭に浮かべながらキーボードを打ち込んでいるけれど、自然と湧き出る言葉とかそういうものもあって、書き続けられる。
日記みたいなのも悪くないけど、創作ものも書いていきたいな。

やりたいことがいっぱいある。
やりたくないこともいっぱいある。

それでも、今年もまあ生きてて良かったなと思えているから大丈夫だ。

2022年2月1日、今の出来事。



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