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吾輩は…

 思いがけない3連休だった。月曜日、普段と同じ時間に起きて、伸びをする。何気ない動作だが、妙な緊張感があった。そう、3日しかないのだ。吾輩はテツである。やるべきことは一つだろう。

 どこへ行こうかと思案していたら、中高の先輩より誘いがあり、雪予報の伯備線へ繰り出すことになった。思えばちょうど10年前、中学生の時分にも同じ先輩から伯備線に誘われ、ムーンライトながらのチケットまで取ったにも関わらず、親の許しが出ずにドタキャンをしたっけ。

 ティーンエイジャーというのは、往々にして年齢と行動力が噛み合わない。一番体力のあった17、8歳の頃は大学受験で消費し、大学入学の翌年にあったソニックマニア(NIN、マイブラ、電気グルーヴ、コーネリアスという目まいがするようなラインアップだった)はギリギリ成人を迎えておらず、参加が叶わなかった。当時より体力はないが、金と時間ならある。あの頃の雪辱を晴らすべく、深夜の東名高速をひた走った。

 寒波のピークを過ぎたとはいえ、未明の渓谷は肌を刺すような寒さである。北海道ほどではないだろう、と高をくくりヒートテックとパーカーという軽装で来てしまったのが運の尽きだった。かじかむ手をいたわりながら、夜明け前の伯備路を疾走する381系をカメラに収めた。

 体力がないなんてどの口が言ったか。いざ列車を見れば寒さなんて吹っ飛ぶ。薄着なんてお構いなしに、雪を突いて進むEF64と381系を追いかけ回した。しかし、鉄路のないシーナリーにはめっぽう弱いらしい。連休明けの朝は、倦怠感と鼻詰まりに悶えながら出社した。吾輩はテツだから。



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