手牌の向聴(シャンテン)数の数え方

向聴数が分かると麻雀観戦は面白い!

Mリーグをご覧になられている方はヘビーな麻雀ファンから始めたてのビギナーの方まで、実に幅広いものでありますが、今回の記事は麻雀を見始めて間もない方~ネット麻雀の初心者の方向けに、Mリーグのお供として使って頂きたいテクニックのお話です。

麻雀はランダムに配られた手牌から和了(あがり)を目指すゲームですが、和了までの道のりは各々プレーヤーで異なります。この道のりを数値化したものが「向聴数(シャンテンすう)」と呼ばれるものです。
和了がゴールとすると、一歩手前が「聴牌(てんぱい)」=リーチがかけられる状態→その手前が「一向聴(いーしゃんてん)」→さらにその手前が「二向聴(りゃんしゃんてん)→「三向聴」→「四向聴」……と、数字が小さくなるにつれて和了が近いことを意味します。

Mリーグを観戦するにあたって、応援するチームが「あと、どれくらいで和了なんだ?」と思うことが多々あるかと思います。また、ライバルの選手と比べてどっちが和了に近いのか、という情報も分かれば麻雀観戦がさらに楽しくなることでしょう。それでは、誰でも簡単に分かりやすく向聴数が分かるテクニックをご紹介します。

※お急ぎの方は2.から読み進めてもらって結構です。

1.麻雀は何向聴まであるの?

各々配られる手牌は13枚、ツモって捨てて……の繰り返しで和了系を目指しますが、とにかく聴牌形を目指した場合、最少で何枚入れ替えれば和了に結び付くのでしょうか?
聴牌の手前(=和了の2つ手前)を「一向聴」と定義しますが、向聴数は「あと何枚の手牌を入れ替えれば聴牌となるか?」の指標となります。よって、用語として存在しませんがゼロ向聴は聴牌となります。では『一番和了から遠い最悪の配牌』は何向聴になるでしょうか?10枚くらい入れ替われば聴牌する?いやいや13枚全部入れ替えないといけない?ちょっと考えてみましょう。

Mリーグルールのみならず巷一般で採用されるルールでは和了の形は ①四面子+一雀頭 ②七対子 ③国士無双形 の3種となります。では、それぞれの和了形から最も遠いケースを考えましょう。

①が問題の本質なので、簡単な②と③から解説します。
②の七対子形は【対子が6組完成で聴牌】となります。よって、聴牌から最も遠い形は手牌13枚が被り無しで13種類ある形状です。
→例1)一六九②④⑧⑨578東西北 =13種類で同じ牌がない形
ここから対子を6個作ればよいので最低6枚入れ替えれば聴牌となります。
→例1’)一一六六九九②②④④⑧⑧⑨(578東西北を捨てて入れ替え)
よって、七対子の最大向聴数は「六向聴」です。
③の国士無双形はヤオチュー牌(1と9と字牌)が【12種13牌 または 13種13牌】で聴牌となります。手牌全てが2~8だった場合、全ての手牌を入れ替えないと聴牌にならないため、国士無双の最大向聴数は「十三向聴」です。

それでは問題の①四面子+一雀頭形です。この形から最も和了に遠い形は手牌にターツ(13、12、など、面子必要な牌が1枚欠けた形の2枚形)、対子、面子(111[刻子]または123[順子])が一つもない形です。
→例2)二五八②⑤⑧258東南西北
さて、ここから何枚かを入れ替えて和了形を目指すわけですが、和了の形は四面子と一雀頭([①面子][②面子][③面子][④面子][⑤対子])=①~⑤に分割された合計5つのブロック になります。よって、バラバラの手牌のうち任意の5枚をブロックの種に残して、それ以外を入れ替えれば聴牌になります。上記手牌から「二」「八」「⑤」「東」「北」の5枚を種に考えてみましょう(当然ほかの種類の牌でも結果は同じになります)
→例2’)一二三/八八八/⑤⑥⑦/東東東/北北
聴牌系の完成です。種以外の8枚を入れ替えて聴牌になりました。よって、四面子+一雀頭形の最大向聴数は「八向聴」です。

①=8、②=6、③=13
 このうち最少は②七対子形の「6」ですので、一般的な麻雀の最大向聴数は「六向聴」と結論づけられます。

2.向聴数の数え方は「8点ルール」!

突然ですが、以下の手牌をご覧ください。四面子+一雀頭形の聴牌を和了形に目指した場合、何向聴(あと何枚入れ替えれば聴牌になる)でしょうか?
漢数字は萬子、丸数字は筒子、生の数字は索子、漢字は字牌です。

【例題】一二二三八八⑤⑥⑦⑨78東

完成している面子もありますが、孤立している字牌も残っています。では、和了まであと何枚必要でしょうか?

ここでいよいよテクニックの登場です。その名も「8点ルール」!これを使うと向聴数が一発で分かる優れものです!

◆8点ルールの基本原則
(1)手牌を面子またはターツに分解して抜き出す。この時、抜き出した牌は重複して使用できない。
(2)面子(刻子または順子)は2点、ターツまたは対子は1点 と計算する。
(3)「8点-(2)で求めた合計点数」で出た点数が向聴数となる。
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例題をもとに考えてみましょう。まず、(1)面子またはターツに分解 とありますが、手牌は以下のとおり分解できます。

分解形→[一二三][八八][⑤⑥⑦][78]二⑨東

面子が2組、対子が1組、両面ターツが1組抜き出せました。3枚が孤立牌です。
この抜き出したブロックに(2)にあるとおり、点数を付けます。面子は2点、ターツまたは対子は1点ですから

2点×2面子+1点×1対子+1点×1ターツ=6点 となります。

そして、仕上げの計算式は合計点数を8点から差し引きます。

8点-6点=2点

よって、この手牌の向聴数は「二向聴」、つまりあと2枚手牌を入れ替えれば聴牌に到達する形と計算されます。どうでしょうか?結構簡単に向聴数が計算できました!

ちなみに上記の例題は萬子を[一二三]と孤立牌で二を残しましたが、分け様によっては[一二]&[二三]とも分けられます。どっちに分けた方がいいのか、と思いますが面子は2点、ターツは1点なので合計点数が変わりません。どちらに分けても計算結果は同じになります。
また、抜き出す方法は必ず最大の点数になるように抜き出します。一盃口が代表例ですが、対子3組=3点<順子2組=4点 となるため、順子2組で抜き出します。

しかし、やはり何事にも例外はあるもので、この8点ルール気を付けなければならないパターンも存在します。基本原則のルールをマスターしつつも、注意しなければならないケースをご紹介します。

3.「8点ルール」の例外

この8点ルールは四面子+一雀頭形を目指す際に適用するものなので、七対子と国士無双形の和了形には使えません。そして、ブロックの抜き出し方にも少しだけ制限があります。

◆8点ルールの特別ルール
(1)抜き出せるブロックは最大5つまで。抜き出す優先順位は面子→対子→ターツ の順番
(2)5ブロックちょうどを抜き出して雀頭がない場合は1点減点

(1)のケースについて、下記手牌を想定します。

【例題2】三四八八②④⑦⑧⑨1267

分解すると[三四][八八][②④][⑦⑧⑨][12][67]
ターツが5組、面子が1組で1点×5+2点×1=7点
8点-7点=1点 計算上では一向聴ですが……?

実は、落とし穴が潜んでいます。それは、このケースでは【6つのブロック分け】にしてしまっていることです。
和了形は『四面子+一雀頭』つまり【5ブロック】で事足りるのに、余計な1ブロックをカウントしてしまっています。(6ブロック形は俗に『面子(または、ターツ)オーバー』とよく言われます)
つまり、8点ルールは最大でも5つのブロックにしか点数が付かず、6つ目のブロックはターツが完成していても0点扱いになります。

★採用するブロックの優先順位について
ブロック分けが6つになった場合、不採用のブロックを1つ決めなければなりません。この時の優先順位は 完成面子>対子>ターツ の順番となります。対子はターツよりも優先して採用します。(理由は次項で説明します)

よって、【例題2】は面子1組×2点+1対子×1点+3ターツ×1点 =6点
8点-6点=2点:二向聴が正解となります。 


続いて(2)のケースです。雀頭がないと1点減点とは?
以下の【例題3】をご覧ください。

【例題3】三四七八②④⑦⑧⑨1267

【例題2】から『八八』→『七八』と対子が両面ターツになった形です。
分解すると[三四][七八][②④][⑦⑧⑨][12][67]となります。
先ほど、6つ目のブロックは採用しないと説明しました。採用する5つのブロックの優先順位のルールから1面子と残り4ブロック、今回のケースは残る5ブロックは全てターツであるため、任意の1つを採用しません。
ターツ4組×1点、面子1組×2点 合計は6点。
8点-6点=2点 で二向聴となるはずですが・・・?

【例題3’】12のターツを不採用にして、それぞれ萬子の有効牌2枚に入れ替えてみましょう。
[三四五][六七八][②④][⑦⑧⑨][67]

なんと、2枚入れ替えたのに聴牌しません!そうです。雀頭がない形です。
悲しいことに5ブロックを抜き出していずれにも雀頭がない場合価値が1点分下がってしまうのです。
前項で対子の価値が高いと説明したのはこれが理由です。ターツは和了形に含まれませんが、対子は雀頭として和了形に残るので、相対的に採用価値が高いのです。

よって、【例題3】は面子1組×2点+ターツ4組×1点=6点
※ターツ4組に雀頭がないため、ペナルティで-1点(6点→5点)
8点-5点=3点:三向聴となります。

ここで、また一つ注意事項があります。雀頭がなくて1点減点となる場合は「5ブロックを抜き出した場合」のみであり、抜き出せるブロックが4つ以下の場合はペナルティを適用しません。以下の例題4をご覧ください。

【例題4】三四七八②④⑦⑧⑨149東

【例題3】から索子のターツ2組が孤立牌になりました。
ブロック分けは[三四][七八][②④][⑦⑧⑨]149東 と4ブロックと孤立牌4枚です。
さて、抜き出した4つのブロックには対子がありませんが、抜き出しているブロックは先ほどの例題3では5つ。今回は4つです。ここに差があります。
実は、抜き出しているブロックが5つに満たない場合は孤立牌が対子になる可能性があるため、対子になった瞬間5つ目のブロックとして採用できるのです。上記例題では149東、いずれかが対子になると5ブロック目採用で1点の価値が生まれます。

【例題3】[三四][七八][②④][⑦⑧⑨][12][67]
→不採用ターツ[12]が対子になっても合計6ブロック目のため結局他のターツと入れ替えるだけ(ターツ(1点)を不採用にして、対子(1点)を採用する→差引きプラマイゼロなので向聴進まず
【例題4】[三四][七八][②④][⑦⑧⑨]149東
→孤立牌149東のいずれかが対子になる。対子完成で5ブロック目として採用できるため+1点=向聴進む
【例題4’】[三四][七八][②④][⑦⑧⑨][11]49

よって、【例題4】は面子1組×2点+ターツ3組×1点=5点
8点-5点=3点:三向聴 になります。

4.七対子・国士無双形の向聴数と比較する

最後に七対子、国士無双形です。
七対子形は【6-完成対子組数】で求められた数字が向聴数です。
対子4組の場合は6-4=2:二向聴となります。
※孤立牌と同種の牌が対子にある場合は向聴数に1加算。
※槓子形は対子2組とはせず、1組のみ採用。残る2枚は孤立牌扱い。

113355577東東北白
対子は4組だが「5」は対子+余りの1枚であるため、向聴数1加算。
→6-4+1=3:三向聴
111135577東東北白
1と5と7と東の対子4組、4枚使い七対子を採用しない場合は余った「1」2枚は孤立牌として扱う。

国士無双形は A.雀頭がないケース B.雀頭があるケースに分かれます。
Aの場合は【13-手牌のヤオチュー牌の種類】Bの場合は【12-手牌のヤオチュー牌の種類】となります。


さて、実践です。それぞれの形の向聴数を算出し、最少の向聴数がその手牌の向聴数となります。

【例題5】一八九②④⑥⑨⑨123東東

①四面子+一雀頭形の向聴数
[八九][②④][⑨⑨][123][東東]一⑥
→雀頭のある5ブロック=雀頭無しペナルティ非適用
→面子1組×2点+対子2組×1点+ターツ2組×1点=6点
8点-6点=2点:二向聴

②七対子形
対子が⑨と東の2組→6-2=4:四向聴

③国士無双形
東(または⑨)で雀頭完成のヤオチュー牌5種類
→12-5=7:七向聴

①~③を比較して、最少の向聴数は①の二向聴
よって、【例題5】の向聴数は二向聴となります。

5.活用

国士と七対子形はゆっくり見れるので、まずは面子形での向聴数を数えてみましょう。抜き出しのルールや方法が分かれば時間をかけずとも足し算で簡単に向聴数を計算できるようになります。
また、練習としてネット麻雀の牌譜などを見て、自身の配牌を見ながら計算の練習をするのも効果的です。
そして、慣れてきたら放送対局の数秒間でも配牌の向聴数を数えてみましょう!誰が和了に近いのかが分かると、より多角的・俯瞰的にゲームの対局を知ることができ、視聴する楽しみが増えます!


4.のレベル到達は脱・初心者を目指す方~中級者の方も実践テクニックとして役立つことかと思います。初心者の方は誰が和了に近いか知ることのできるテクニックなので例外ルールは難しくても、基本ルール「面子2点、ターツ・対子1点で8点から合計点を引く」と覚えているだけでも最悪誤差1で向聴数が分かるものですので、覚えていて損はないかと思います。