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【MLB】2022年 最もロマンのあった選手は!? ~ダン率とギャロ率から考える~

皆さんはロマンあふれる長距離打者は好きですか?

ホームの選手がホームランを打った瞬間、それまでザワザワしていた球場が一気に大歓声に包まれ、観客同士で自然とおこなわれるハイタッチ。接戦でもワンサイドゲームでも関係なく、多くのファンが歓喜に沸く瞬間がたまりません。
アメリカ30球場を旅する中で何度も目にした光景ですが、この瞬間の球場の雰囲気は本当に大好きでした。

一方で、ホームランを打とうとすると粗削りなバッティングになってしまい、三振かホームランか、という打者が多くなってしまうもの。
しかしそんな打者が打席に立つと、どうせ三振だろ?と思いながらも、一発打ってくれるんじゃないか、心のどこかで期待していて、何だかんだでワクワクしながらその選手の打席に注目してしまいませんか?
今回はそんなロマンに溢れる選手は誰か?に焦点を当てた記事です。

ロマンとは何かが少々抽象的なので、以下を満たす選手がロマンに溢れている、と考えます。

①三振かホームランしか狙っていない(これらの割合が多い)
②良い当たりを打てた時はホームランになる確率が高い
③少なからずチームに貢献はできている(大きく貢献とは限らない)

そしてこれらを満たすことができる指標として元祖ロマン溢れる打者のアダム・ダンと、現役で最もロマン溢れる打者のジョーイ・ギャロにどれくらい近いかを示す、”アダム・ダン率”と”ジョーイ・ギャロ率”を使用した、DPG率を定義し、最もロマンのある打者は誰かを検証したいと思います。

アダム・ダン率

2014年8月観戦時に撮影。この日は4打席ノーヒット。三振、四球もなくアダムダン率0割でした

アダム・ダンは2000年から2014年にMLBで活躍した選手で、通算462本塁打を放つ一方、歴代3位の2379三振を喫する、歴代メジャーリーグを代表するロマン砲です。但し優れた選球眼も持ち合わせており、通算1317四球(2シーズンでリーグ最多四球)を記録しています。
三振かホームランか四球か。これらの割合が非常に高かったことから、全打席に占める占める割合を示した数値はアダム・ダン率(以下、ダン率)と呼ばれています。具体的な式は以下の通りです。

アダム・ダン率 = (本塁打+四球+三振)/打席

これにより、三振、ホームラン、四球という、ロマン砲に多くある打席結果が全体のどの程度を占めるのかを数値化できており、上述したロマンの定義で言うと、

①三振かホームランしか狙っていない(これらの割合が多い)
③少なからずチームに貢献はできている(大きく貢献とは限らない)

に当てはまると考えます(③は四球を選べているという点で)

ジョーイ・ギャロ率

2017年8月観戦時に撮影。HRは出ませんでしたが豪快なスイングは見応えありました

ジョーイ・ギャロは2015年にメジャーデビュー2023年はミネソタ・ツインズでプレーします。
その特徴は何といっても低打率で安打数が少ないながら安打に占める本塁打の数が非常に多い、ということ。
2017年は単打32本ながら本塁打が41本。翌2018年も単打38本ながら本塁打を40本記録し、年間成績で「単打数<ホームラン数」という非常に珍しい記録を持っています。
その特異性からか、2021年のMLBホームランダービーに登場した予備校教師の林修先生は、ジョーイ・ギャロ率(以下、ギャロ率)をこのように提唱しています。

ジョーイ・ギャロ率 = 本塁打 / 単打

これにより、「当たれば本塁打になる」というロマンさを数値化できていると思っています。
上述したロマンの定義で言うと、

②良い当たりを打てた時はホームランになる確率が高い
③少なからずチームに貢献はできている(大きく貢献とは限らない)

に当てはまると考えます。(③は得点価値の高いホームランの方効率よく打てているという点で)

DPG(Dann Plus Gallo)率

ダン率とギャロ率、それぞれ違う側面から選手のロマンっぷりを定義できていると考えています。そこで、

OPSのようにダン率とギャロ率を足した数値が高い選手が真のロマンに溢れた選手なのでは?

という単純な発想の基、以下の計算方法で示したものをDPG(Dann Plus Gallo)率と提唱します。

DPG算出方法概要

標準化(複数あるデータの平均をゼロ、データのばらつき具合を示す分散値が1になるよう、数値を変換すること)することで、2つの指標の重みをできるだけ同じにするためです。
(ダン率の方がギャロ率より高い数値が出やすいため、単純な足し合わせですとダン率への依存が大きくなります)

2022年ダン率とギャロ率の箱ひげ図。ダン率の方が平均値が高い

全く根拠はないですが、このDPGが大きい選手=ロマンに溢れる選手と考え2022年の成績を基にランキングを作成しました

2022年DPGランキング

(注意)
2022年に200打席以上立った選手を対象としています。
以降の表内における、ダン率、ギャロ率内のカッコは順位を表します。
DPGのカッコ内は"標準化したダン率+標準化したギャロ率"を表します。

10位~4位

第10位:Trayce Thompson

5年間で9球団に所属し、ドジャースへ移籍後にブレイクした苦労人はロマンさでもブレイク。特にダン率はMLB全体3位と非常に高い値を記録した。
OPSも.901と高い水準を記録しており、ロマンさを見せつけるとともにチームにもしっかりと貢献をしていた。

第9位:Patrick Wisdom

昨年と比較するとダン率は.568→.489、ギャロ率は.683→.568と共に大きく低下。ロマンっぷりが減ってしまったものの何とかトップ10をキープすることができた。
OPSも.823→.725と大きく落としており、来年はロマンさだけでなくしっかり結果を残し、積極補強を行ったチームへの貢献が期待される。

8位:Keston Hiura

個人的に意外な選手がランクイン。ギャロ率は19位ながらダン率はまさかの全体2位。ギャロ率は昨年の.482から増加(41.7%を記録した三振率が主な要因)。そこにギャロ率も昨年の.267から.467と大幅に増加したことでランクイン。とはいっても20年のギャロ率も.448を記録しており、元から潜在能力はあったのかもしれない。

7位:Giancarlo Stanton

年々主要な成績は下降傾向だが、ダン率、ギャロ率ともにトップ10入り。ちなみにギャロ率は2015年に.794、59本塁打を放ちMVPに輝いた2017年は.766と非常に高い数値を記録している。
実際に2017年に試合を見に行ったが、当たった瞬間に即ホームランとわかるような、恐ろしい打球速度のホームランを放っていたのが印象的で、本当にロマンに溢れている選手だと思う。ぜひ一度生で見ていただきたい選手の一人。

2017年8月観戦時に撮影。HRを打ってダイヤモンドを回る姿。レンズを通してではなく、自分の目にしっかり焼き付けたいと思い、打席の写真は撮りませんでした。

6位:Mike Trout

現役最高の選手はロマン率でも好成績。近年は空振りが多くなっている印象があり、ダン率も大きく上昇しているのかと思いきや、そこまでの変化はなし。むしろギャロ率がデビュー当時と比較して大幅な伸びを見せている。
そもそもTroutのような素晴らしい選手を見てワクワクしない人はいないわけで、こんな指標に関係なく、ある意味最もロマンのある選手ともいえる。

Mike Troutの年度別DPG推移(2021年は200打席未満なので省略)
2014年8月観戦時に撮影。立ち振る舞いだけでスターのオーラがすごかったです。

5位:Aaron Judge

ア・リーグ新記録となる62本塁打を放ったJudgeが5位にランクイン。ギャロ率.713は勿論高水準なのだが、5位という結果になったのは打率.313が示すように単打や2塁打でも多く貢献しているため。
月別で見ると最も本塁打を放った7月は13単打、13本塁打で見事にギャロ率10割を達成。契約延長を決めたニューヨークの地で、23年も観客を魅了することができるのか楽しみ。

4位:Cal Raleigh

「マリナーズ21年ぶりのプレーオフ進出を、代打サヨナラ本塁打で決めたルーキー」と、もうこの時点でロマンさが溢れ出ている選手。ダン率は.451で23位と低めながら、ギャロ率はなんと.900で堂々の1位。持っている男は今後もシアトルのファンの期待に応えるようなロマンっぷりを見せてほしい

番外編

DPG率ワースト5の選手は以下の通り

当たり前ですが、俊足巧打で単打の多い選手が並びました。
ちなみに自分はイチローを見て野球を始めたこともあるので、ロマン関係なくこういった選手も大好きです。

3位~1位

3位:Byron Buxton

キャリア最多の28本塁打を放つも、打率が3割を超えた前年とは一変して.224と低打率。6年ぶりに三振率も30%台、四球率はキャリアハイの8.9%を記録しダン率も前年の.370から約1割も向上。
それ以上にギャロ率が.633→.875と昨年から大幅に増加し全体2位を記録。怪我の影響で8月中にシーズン終了しなければもう少し記録も伸びていたかもしれない。
個人的にはパワータイプのBuxtonもいいけど、現地で見たランニングホームランのような、アスリート型Buxtonの方が好き

2017年8月撮影。この日に人生で初めてランニングHRを生で見ました。

2位:Kyle Schwarber

ナ・リーグ本塁打王が堂々の2位。キャリア通算の三振率が28.3%、四球率が13.1%と、元々ダン率が高くなる要素を持っている選手。そして今年は46本塁打と持ち味のパワーを十分発揮できたことで今回の結果につながったと考えられる。
ギャロ率はRaleigh、Buxtonがいる為控えめに見えがちだが、.821は十分に高く傑出度も高い。来年も変わらぬスタイルで1年戦い、1位を奪うことができるのか。

1位:Joey Gallo

始祖が1位に君臨。ギャロ率自体は6位ながら、ダン率は.580で堂々の1位。両指標で好記録を打ち出し堂々の1位となった。
ちなみに昨年もダン率は.588で全体1位を記録している。ギャロ率の始祖ながら現代を生きるアダム・ダンなのかもしれない
ちなみにこれでもロマンっぷりは減少傾向。ロマン全盛期の彼の指標は以下の通り。ケタが違います…

最後に

以下は、今回のランキング上位20人の選手をまとめたものとなります。

作成者としてのひいき目ありかもしれませんが、やはりロマン溢れる選手が並んでいるな…という印象を受けました。

ちなみに我らがオオタニさんは45位でした。2022年はホームランがなかなか出ず、単打を量産する時期も多くあった印象で、その結果ダン率、ギャロ率があまり伸びていないのかなと思います。

ちなみに昨年も同じく集計した際は、ダン率とギャロ率を標準化せず、そのまま足し合わせていたのですが、その結果ギャロ率が悪くてもダン率が高ければ上位にランクインできる事例が多くありました。
今回標準化したことでその問題は解決したのですが、今回のDPGはパッと見てもいまいち凄さがわからないようになってしまっているのかなと思います。
来年も集計してみるのであれば、より親近感がわくような形式の数値で示せたらと思います。

以上、くだらない内容にお付き合いいただきありがとうございました。

※データ引用元
Baseball Reference 

FanGraphs

Baseball Savant

※写真は全て筆者撮影


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