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北大恵迪寮寮歌集アプリはどうして生まれたか

寮歌アプリをつくろう

北海道大学恵迪寮寮歌アプリは 2014 年に作成しました。これは私が恵迪寮を卒寮した年、北大理学院の修士 1 年生のときのことです。本当は寮にいるときに作ってみたかったのですが、現役寮生のときはある意味忙しく、とてもじっくり時間をかけてアプリ開発をする余裕がなかったので、修士になってヒマができたから (?) 作りました。当然ながら寮歌は「寮歌集」を見ながら歌うもの、覚えるもので、アプリなんて使うのは邪道なんじゃないかと思ったりもしましたが、スマホアプリ制作を学んでみたかったという動機のみで作りました。

アプリ (の紹介ウェブページ) は上記リンクを参照してください。スマホアプリの作り方はこの記事では述べません。ただリストから歌を選んで、歌詞のテキストを表示して、押されたボタンによって音声を流したり、Web へのリンクを処理するだけなので、何も難しいことはしていません。もしも具体的なプログラムを見てみたい人は GitHub に Android 版のソースコードは上げているので自由に見てください。

寮歌アプリ制作で一番手間がかかっているのが歌詞のテキストデータ作成でした。もともと寮歌集という紙媒体をもって受け継がれてきたものなので、ほとんどはアナログな形でしか残っていませんでした。実際にはよく歌われるような人気の歌はウェブに転がっていたりもしましたが、それは多くとも 2, 30 曲くらいのもので、明治 40 年からほぼ毎年作成され、全部で 100 を超える歌を全てデータで用意することが最初に必要でした。この歌詞データについては以下の記事「恵迪寮寮歌アプリの歌詞データ」を参考にしてください。


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昭和 53 年第 70 回記念祭歌「草は萠え出で」のページ

2014 年 7 月 5 日には当時の寮歌集に掲載されていた全ての曲をデータ化することが完了し、これをもってアプリは正式版として、Google Play にて 2014 年 7 月 9 日 (日本時間) に公開することになりました(ちなみに 7 月 9 日に公開した理由は単に自分の誕生日に合わせたかったからである)。

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iPhone 向けアプリをつくろう

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Android 版アプリを作ってすぐ、当然のように iPhone (iOS) 版のアプリも作成しようと試みました。しかし iPhone アプリの開発には Apple の Macintosh (macOS) が必要で、Windows ユーザの私はそんなもの持ち合わせていませんでした。そのため、しばらく手をつけることができず、その間、Android 版で楽譜演奏データを流す機能や楽譜などを表示する準備などの改良を続けていました。

2014 年 10 月末にごにょごにょすることでとりあえず Mac 的な環境を動かせる状況を作ることができたので、Objective-C を用いた開発を開始しました。約一ヶ月半ほどで Android 版リリースのころと同じ程度の機能 (歌詞の閲覧、検索機能) を実装し、リリース直前まで準備を進めていました。

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(この写真はイメージです)

しかし問題はどうやってリリースするかでした。Mac 的な環境はアプリのリリースを行うことはできず、macOS (当時は OS X)  が動く端末を用意する必要がありました。しかしそのために 10 万円を超える出費を工面するほどの金銭的余裕はなく、さらにいえば App Store で iPhone アプリを公開するには毎年 11,800 円 (2014 年当時は 7,800 円) の費用を支払う必要があり、なかなか大変なことででした。

クラウドファンディングで集めよう

せっかく作りかけたものを世に出せないのは惜しいので、なんとかすることにしました。当時たまたま寮の後輩でクラウドファンディングを使って世界一周を企てた話があったのを聞きました。

この企画の詳細については「妊婦 世界一周 箱山」とかでググればいっぱい出てくるので割愛します。彼らしいスゴイ企画だと思います。このような社会貢献系の企画と比べて私の「寮歌アプリを作りたい」という企画は全然大したものではなかったけれど、せっかくなのでこれを参考にしてやってみることにしました。

クラウドファンディングの詳細については上記リンクを見てください。このプロジェクトは結果として恵迪寮 OB・OG を中心に 15 万円ほど集まったことで成功しました。ここで得られた出資を元にして Macbook を購入し、またアプリの公開資金に充てています。

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寮歌アプリの今後の展望

その後、寮歌アプリは音声再生機能、ルビ表記の追加、を経て現在に至っています。ルビ表記は一段落したのでそろそろ次の改良に移りたいと考えており、今は音声再生が常に最初から流すことしかできないので、途中から再生できるようにシークバーを設けたいと思っています。ただこれはまったく急いでいない機能なので、実装がいつになるのかはよくわかりません。

それよりも、もうすでにリリースしてから 5 年以上経っていて、全体的に設計が古臭いと感じています。アプリのインターフェースも含めて、中身の実装がそれぞれ Java や Objective-C なので、もういい加減 Kotlin や Swift による開発へ切り替えないといけないでしょう。早くしないと動かなくなってしまうかもしれません

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最後に (サポートのお願い)

寮歌アプリは先にも述べたように、その公開に少なくない費用がかかっています。おそらくこのような専用アプリを一般の企業に依頼すれば、それだけで開発費は 2, 300 万円は取られてしまうでしょう。年に一回、新作の寮歌を追加するメンテナンスだけでも数十万円取られるかもしれません。しかし完全にこの作業は私個人のボランティアで行なっています。

そのため、その費用を少しでもカバーするためにアプリには広告を載せています。あれは(間違ってでもいいので)一回タップすると、それだけで数円が入るので、鬱陶しいと思わず、ぜひ積極的にタップしてください。

また、かつて行ったクラウドファンディングのリターンとして「ウェブサイト・アプリにお名前掲載」「アプリの広告消去用パスワード提供」があった。こちらは現在でも受け付けているので一番下の「サポートをする」からサポートしていただいて、申告してくだされば対応致します。どうかご検討ください。単なる匿名のサポートもお待ちしております。

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また資金調達の一環として、Tシャツ、マグカップなどの「グッズ販売」も始めました。詳細は以下の記事を御覧ください。購入いただけると、一点あたり 500 円の支援になります。

おまけ

ところで、この記事の見出し画像にあり、アプリを起動したときにも現れる「流轉(転)永劫の死點(点)に立てる人々のために」という詩、意外と知らない人が多いらしい。あれは寮歌集を開いてすぐの扉にある献詩で、大正 9 年か 10 年のころに寮歌集が校正されたとき、服部光平氏によって書かれたものとあります。昭和 51 年の日付で水野一 (はじめ) 氏による「歌詞校訂後記」として寮歌集の最後に記されているので、みなさん読んでみてください。

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