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僕は今日も雨を聴く

雨を聴くように、
僕は彼女の話を聴く。

彼女の話は、静かにしとしと降る雨のようかと思えば、激しい雨のように声を荒げたり、
そして又、さらさらと流れるように、という具合に、いつまでも続いた。

僕は雨の音を聴くのが好きだ。
サラサラ降る音
パラパラ降る音
ざーっと降る音
時に窓を叩きつける激しい雨音
音もなく降る時でさえ、僕は耳を澄ます。
何かを考えているようで、考えていない。
ただ雨の音に耳を澄ます。

そんなふうに、僕は彼女の話に、ただ黙って耳を傾ける。

僕は彼女の話に口を挟んだりしない。
真剣に聞いていないわけじゃない。
だけど、彼女はただ聞いて欲しいだけなんだってわかるから。

それに、真剣に聞きすぎると、あれこれ言いたくなるし、自分ならそうは思わない、なんて考えたりしてしまう。
こうしたらいいのでは?
なんて言ってしまいそうにもなる。

そうじゃないんだ!

彼女は僕にアドバイスを求めているわけじゃない。
彼女は1人で喋って、喋りながら自分の中で自分の心を整理して勝手に納得したり、決断する。

彼女の心の中の叫びが全て雨となって降り終わってからでないと彼女の心は晴れない。
もし途中で止むようなことがあれば、しばらくは曇りの日が続く。
それに、次に降るときには雷雨になったりもする。

だから僕は、彼女の心に寄り添って、彼女の気持ちを肯定し、彼女が降らす雨の音を、静かに聴いているだけでいいんだ。

外は、しとしとと雨が降り出した。

僕は今日も雨を聴くように彼女の話を聴く。
彼女の晴々しい笑顔を見たいから。


♯シロクマ文芸部

小牧さんの、シロクマ文芸部の企画
「あめを聴く」から始まるお話
に参加しました。

聞くのではなく聴くってのが、大切だと思います。
私もこんなふうに、人の話を聴ける人間になりたいです。
そして、こんな人に近くにいて欲しいと思いました。


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