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半分ろうそく

明るかった会場が、急に薄暗くなり、
アナウンスが流れた。

メモリアルキャンドルの点灯です。
末長く、この火を灯し続けてください。

大きな拍手とたくさんのフラッシュの中、
昴と早苗は、1メートルほどもあるメモリアルキャンドルに火を灯した。

それから毎年、結婚記念日には、このろうそくに火が灯された。
ろうそくは、書かれたメモリが2、3、4…と大きくなるにつれ、少しづつ短くなっていく。
二人でそれを眺めながら、毎年乾杯した。

しかしいつのまにか、ろうそくは忘れられた。

ある年、大きな台風がやってきて停電になったとき、昴と早苗はあのろうそくを思い出し、久しぶりに火を灯した。

停電は3日間続き、二人はあの日を思い出しながら、和やかな時間を過ごした。

ところがその後、ろうそくは灯されることはなかった。
二人は別の道を歩き始めたのだ。

その時まだ半分ろうそくは残っていた。

半分ろうそくは、その後も押入れの奥で、二人のそれぞれの人生を密かに応援し続けた。

ここまで本文410文字

これはたらはかにさんの企画
♯毎週ショートショートnote
の企画に参加したものです。

思い出半分
創作半分…


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