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右親指くんと兄弟たち【春ピリカ応募】

僕は10人兄弟の長男坊。
と言っても僕は双子。
双子が5組の10人兄弟だ。

僕は右親指くんと言われている。
僕たち親指は、誰よりも力が強くて働き者だ。

他の兄弟たちとはちょっと離れたところにいて、みんなを助けてるんだ。

下の兄弟たちは、ぼく達のことを
チビとか、太ってるとか、関節が一個少ないとかって、意地悪を言う。

あんまり腹が立ったから、僕はボイコットをした。

もう何もしないぞ!

他の右兄弟たちは、お前なんていなくても、4人で力を合わせれば大丈夫さ、と言った。


だけど、やっぱりご飯を食べる時にお箸がうまく持てなくて、食べるのに苦労した。

勉強する時には、鉛筆もうまく持てなくて、下手くそな字になった。

洋服を脱いだり着たりするのも一苦労。
ボタンも、ファスナーも、うまくできない

本を読みたくてもうまく取り出すことができない。

僕は、得意げだった。
やっぱり僕がいなきゃダメなんだな。

僕は調子に乗って、下の二人の兄弟に言った。

君たちなんて、一人で動けなくて横の兄弟と一緒に動いてもらう有様だし、特に何もしてないじゃないか…

僕がいうと、下の二人は言った。

ペンを持っている時に、一番下でしっかり支えているのは誰?

顔を洗う時、僕たちがいなければ、水はすくえないよ。

すると右手のひら母さんが言った。

もう喧嘩はおよしなさい。
私たち家族がみんなで力を合わすことによって、重たいものを持てたり、
多くのものを掴むことができるのよ。

みんな一人一人に役割があって、
誰か一人が欠けても、大変なんだよ。

左手兄弟たちも次々と言った。

僕たちだって、
お茶碗を持ったり、
コップを持ったり、
フォークを持つことだってある。

文字を書くときは、僕たちが紙を支えてるし、
服を着る時だって、僕たちが服をしっかり掴んでないと、右手を通す時に困るだろう。

左手のひら父さんが言った

そして10人いたら
美しい音楽を奏でることができるし、
多くのものを作り出すことができる。

10人兄弟は、
それぞれの役割を果たしつつ、みんなで仲良くすることによって、多くのことを成し遂げられることを知った。

でも僕は、本当は腹を立ててボイコットしたんじゃないんだ。
近頃働きすぎたようで、
痛かったり、力が入らなくて、うまく動けないんだ。

右親指くん、
僕たちにできることはやるからね
他の兄弟達が、声をかけた。

みんなは右親指くんが、早く元気になるように、出来るだけ休ませようと思った。

右親指くんがいないとできないことがたくさんあったけど、みんなは協力して右親指くん無しでもできることはやろうとがんばった。

元気になった僕は、みんな違っているからこそ、それぞれ必要な存在だということが分かった。
そしてこれからも皆で助け合って、たくさんの楽しみを作りだしていこうと思った。


本文1125文字
♯春ピリカ応募


このお話は、以前書いたものをリメイクしたものです。





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