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【夜梟伝】制作裏話

この記事は、フリーゲーム「夜梟伝(やきょうでん)」制作についてのおまけ記事です。ネタバレを大いに含みますので未クリアの方は先にプレイしていただくことを推奨いたします。

幸い進捗を見守ってくださっていたフォロワーさんを始め多くの方々に遊んでいただき嬉しい限りです。当初短編のつもりで制作を始めた本作ですが、思いの外紆余曲折を経て1年くらい、アプデも入れたら+3ヶ月くらい取り組んでいました。まだゲーム制作始めて1年ちょいの人間にとってはなかなかの長期戦だったので、振り返りとか没ネタとかを吐き出してみようかと思います。


制作動機

「墨をバシャァってしたい!」。これに尽きます。

ですよねー。

昔書道を嗜んでいたのですが、墨をたっぷり浸して半紙に乗せた時に、こう、飛び散る墨が好きなんですよ。あと擦れ具合とか。なんかこれ一部の人にしか伝わらない気がするぞ!
そこで思い付いたのが墨エフェクトでした。なんかこれでバトルもの作るぞーと、そんな感じです。あの戦闘画面に至るまでは棒人間で色々実験してました。
私は浮かんだ一場面やコンセプトをベースに作品を作り始めることが多いので今回は徹底して和、墨を基調にすることを意識しました。

余談ですが前作はデジタル絵初挑戦で人はそんなに描けん!じゃあ花メインにしよう!って感じです。あっ、前作はこちらです!(すかさず宣伝)

題字やミニゲームの「勝負」「決着」なんかはアナログで書いたものに修正を加えて使っています。実は自分で書いた字をゲームに使用したいという気持ちもどこかにあったのかも。念願叶って良かったです。

シナリオ

ベースと核になるピースがいくつかあるものの、それが繋がらないという状態がずっと続きなかなか難産でした。作りながら色々変更を加えていき何とか収まりました。そんな中でも初期から変わらなかったのは、
①間違って伝わった歴史の真実を紐解く話
②歴史改変による現代への変化
③憑依ネタ
ですかね。

タイトル

タイトルも最初全く浮かばなくて後回しにしていました。和物としてはよくある「~伝」とか「~譚」とかかなぁというイメージではありました。
前述の①を話のベースとして考えていた時「歴史上では悪者扱いされている人物が本当はいい奴だったのを現代で暴く」という構成で考えていた過程で「鴟梟(しきょう)」(心の正しくない人を例えていう語。ふくろうの異名。【引用:コトバンクよりhttps://kotobank.jp/word/%E9%B4%9F%E9%B4%9E%E3%83%BB%E9%B4%9F%E6%A2%9F-2045354】)という言葉が引っ掛かったので、キョウの名前はここから来ています。結局この構成は形を変えてセキの設定のほうにスライドされましたが。
「夜」は最初「鵺(ぬえ)」を使用していて「鵺梟伝(やきょうでん)」と読ませていました。これはキョウが「鵺」と「梟」の二つの名前を使い分けている設定があったためでした。
最終的に本の名前に落ち着いたのは成り行きでしたが、結果何とかまとまってくれたので良かったです。

名前の由来

せっかく名前の話が出たのでそれぞれ由来を。

継巳:
前述の通り、キョウが「鵺」だった頃の名残です。「鵺」は不気味な鳴き声の妖怪とされていますが、その声の正体はトラツグミであると言われています。漢字は思い付いたのを当てましたが話的に「継」の字は当たりだったかなと思います(自画自賛)。「鵺」の設定がなくなっても仮で付けていたこの名前がしっくりきてしまったのでこのまま採用にしました。
苗字の町谷のほうは「夜」が付く苗字で探している時に「待夜」を見つけたのですが格好良すぎるのでベーシックな字に直しました。でも継巳のペンネームとして使っててほしい。

目白兄妹:
メジロが由来です。後述の鶯巣夫妻(ウグイス)とセットです。メジロとウグイスって似てないのに何かセットな感じがしません?不思議ですね。実際ウグイス色の身体をしているのはメジロのほうなんですって。
メジロは「花の蜜」を好むらしく、光也は「蜜=みつ=光」、花乃はそのまま「花」から名付けました。

瀬黒家:
セグロセキレイが元です。後述しますが当初は親子で出てくる設定ではなかったので苗字だけ。名前はノリで。そもそも名前はノリで付けることのほうが多いので。こんなに記事にするほど由来が書けるのは珍しいです。

キョウ:
前述の通りです。ここから他の人物も鳥ベースで名付けようとなりました。
因みに間者組がカタカナ表記なのは「普段見慣れない漢字で読みにくそうだから」+「平仮名だと弱そう」という理由です。

セキ:
唯一作中で言及している通り鶺鴒(セキレイ)からです。師匠ポジションなのは決まっていたので「教える人」の要素が欲しく、調べていると「教え鳥」が出てきました。厳密には神に子孫繫栄を伝授したということらしいのでちょっと違うのですが。細かいことは気にしない。

鶯巣夫妻:
ウグイスから。別名「春告鳥」「歌詠鳥」というらしいです。二人の名前はそこから。

ヤス:
カッコウが由来です。郭公や閑古鳥とも書き、外伝の題はここから来ています。商売にも関連するのでいいかなと。カッコウは托卵といってちょっと怖い生態があるらしいのですが「騙す」とか「狡い」といった要素を入れたくて。閑の読み方は当て字かもしれないけどどこかで見ました。
感想で「犯人は…」ネタで弄られているのを笑っているのですが、私このネタ理解したのリリース後なんですよ!なので全くの偶然です。笑

鷲宮、鷹合:
なんか強そうな鳥!それだけ。

はく、しろ:
苗字はなし。兄はハクセキレイから。弟は「はく=白=しろ」。はくが「俺と弟を繋ぐ名前」と言っているのはこのためです。後付けだけどシロフクロウにもできるなぁ、なんて思ったり。
セキが名前を変えたのはゲーム内での通りですが、キョウは幼い頃に
「しろ」が上手く発音できない⇒「ちょう」みたいな音⇒何かフクロウの箱持ってる⇒「梟(きょう)」って呼ぼうか⇒周りに定着した後本人もそちらで慣れてしまったので採用
という流れです。

人物設定

初期設定とか先祖と子孫の繋がりとかを書きます。

キョウと継巳

キョウは前述の通り結構設定が変わっていて。当初はキョウが未練から継巳に憑依して色々調べさせる流れで、ほとんどこの二人で完結させる予定でした。なのでよく喋るし愛想もいい。今見ると誰だお前という笑顔のラフが残っていたりします。
継巳のほうはあまり変わってないです。ご先祖様に振り回され主人公。
最終的に全く性格が似ていないコンビになりましたがお茶碗の持ち方以外に「目を細めて笑わない」という点が共通しています。継巳くん笑ってくれなかったんですよね、何故か。表情筋が仕事をするのはもう少し後の世代なのかもしれません。

セキと正一

この二人は最初は本当に端役程度だったのですがいつの間にか重要人物に。セキは面倒見のいい師匠であることは変わらず、キョウのことも可愛がるし最終的に命まで懸ける設定も同じ。でも…弟子ってだけでここまでするかな?という疑問から「そうか!お前ら兄弟か!」という閃きに変わりました。
正一は瀬黒という苗字しかない何か研究してる変わり者のおじさん設定だったんですが(雅照の設定に近い)セキのポジション昇格に伴いこちらも兄さんポジに変更。
あとは二人とも「教える立場」であることが共通しています。セキは後日譚で語られる通り子供たちに字を教えたりしていて、正一は雅照からの手紙にチラと「教壇に立って~」と書かれているのですが大学の非常勤講師をしています。

鶯巣夫妻と目白兄妹

この二組はあまり初期設定から変わりないです。強いて言えば兄弟が最初期は金髪美男美女設定だったくらいでしょうか。憑依ネタもこちらに関しては初期に決定していました。
あまり共通点がなさそうな二組ですが、広い心は共通しているかなと思います。夫妻は見ず知らずのキョウやセキに良くしており、兄妹もなんの躊躇もなくご先祖を受け入れているので。

没ネタ集

人物設定に限らず、没になった設定は多くあるので思いつける限り書き出していきます。

高校生組は演劇部だった

目白兄妹は部長と看板女優、継巳は脚本担当でした。脚本ネタ探しに行く過程でキョウと出会う形に。だから当初本ではなく劇で受け継いでいく形だったんですね。劇の描写ができなかったので没になりました。
因みに現行の彼らの所属部活動は継巳が文学部、光也がバスケ部、花乃がバドミントン部です。

現代でも事件が?

戦闘システムがメインなのでどうしても現代編の存在感が薄め…というのは今もあるのですが、一時何か現代でも事件を起こして目立たせよう!という試みがありました。結局「せっかくご先祖が繋いだ平和を壊すような未来は何か違う」と思い直して没に。なのでむしろ現代編はとことん平和になるよう心掛けました。

探索要素

最初は探索ゲームにしたかったんですが、良い案が思いつかず没に。瀬黒家へ行くきっかけが遺品整理になっていますが、そこも結構迷走して「宝探し」だとか「資料整理の手伝い」だとか色々ありました。

継巳くんノート

今回時代や時系列があちこちに飛ぶので読み手が困惑するのではと心配していました。いただいた感想を見ると思ったより不自由はなかったようで安心しているのですが、解消案として現状をメモしてくれる「継巳くんノート」なるものの導入を検討していました。謂わばTipsの役割ですね。アイキャッチなど演出でカバーできたことと、開発コストが高すぎるので没に。進行に影響しない小ネタはこうした記事のほうにまとめてゲーム内は必要最低限の情報のみに留めました。結果的に情報が多くなりすぎずに済んだので良かったのかなと思います。

例のあの人

何とか卿みたいな呼び方をしてしまいましたが商人のことです。
彼は本当に最初ただの「間者1」でした。それが途中で役割を得て、名前を得て、立ち絵を得て、大出世ですね。
でも実際過去と現代を繋ぐ何かが足りず、シナリオに行き詰まっていた点が大きかったので、彼は良い橋渡し役になってくれました。MVPです。

総括

今回プレイ時間約2時間の作品を作ってみて、トライ&エラーの大切さが身に沁みました。一度作ったものを壊してみるのも大事だし、根本から見直してみたり、部分的でもいいから作り始めてみたり、要素を増やしたり減らしたり…大変でしたが良い経験になったと思います。そして遊んでくれる方がいて、楽しかったとのお声が聞けると感無量ですね!これからもマイペースですが制作続けていきたいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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