見出し画像

嵐の中の『KOUMI100』でライバルのペーサーをしてきた話

こんなに楽をさせてもらえるペーサーってあるのだろうか?

RBRGTRCのチームメイトで2019年の上州武尊70kでバチバチと戦ったライバル「まーそー先輩」。(上州武尊の戦いはこちらから)
KOUMIを走ると聞いて、『ペーサーが必要なら声掛けてくださいね』と伝えていたところ、本当にペーサーの依頼がきた!
コロナウィルスの影響を受けて開催されるのかどうかわからない状況だけど、準備はしておかねば。。。
そんなことを思ったエントリー時期。

私が思うペーサーの役割

選手の理想のゴールを手伝う人

その時の選手の状況により、冷静な判断(DNFとかね)も必要だけど、一番は「選手の思い描く理想のゴール」をするためのお手伝いをすることだと思う。ペースを作るだけではなく、ゴールするためのすべてを手伝うこと。これが役割だと思っている。

KOUMI100に向けた準備

なにもしていないwレース前に打ち合わせ1回。一緒に走ったりはせず(練習会で何度か一緒に走っているけど、そこまで意識して走ったことはない)ぶっつけ本番だった。
今回のレースはエイドで出るのはお水のみだったので、エイドサポートとして、補給食などは準備したが、事前に準備したのはそれくらい。
なんでそんな状況だったかというと、まーそー先輩なら潰れることもないし、仮に潰れたとしても這いつくばってでもゴールまでいくだろうと言う信頼があったから。実際にめちゃくちゃ強いし、練習してないといいつつ、よくわからん峠走とか、翼の形を描く坂道練とか、いろいろやっているのを見ているからこそ。
レース当日は自分が走れなくなるのでは?とちょっと不安に思いつつ、仕事を終わらせて会場へと車を走らせた。

会場は大雨(台風だもんね)、それとは裏腹に士気の高まる選手たち

朝4時に会場に到着し、バディと合流。土砂降りの雨の中、黙々と準備を進める。本当にやるのか…厳しいレースになるだろうな。自分だったらDNSだな。などとネガティブな感情になる。選手たちはそんなことを微塵も感じさせず、今年最初で最後になるだろう100マイルレースというお祭りに盛り上がっていた。ちょっとイカれた人たちの集まりだったが、誰もそんなこと思っていなかったと思う。

サポートに持っていったもの

(補給関連)
・カップラーメン
・どん兵衛
・アルファ米
・ビバークレーション
・おにぎり
・お稲荷さん
・漬け物
・フルーツゼリー(途中から追加)
・チョコレート(途中から追加)
・ジェル
・味噌汁
(飲み物)
・スポーツドリンク
・コーラ
・オレンジジュース
・レッドブル
・コーヒー(ブラック&カフェオレ)
・紅茶
・緑茶
・麦茶
・梅昆布茶
・ココア
・水
(装備)バディに貸し出せる用
・交換用ライト
・ライトの予備バッテリー
・エマージェンシーシート
・レイン
(その他)
・アウトドアチェア
・テーブル
・ガスコンロ
・タオル
・毛布
・ホッカイロ

画像1


漏れがあるかもしれないけど、これくらいサポート用品を持っていった。
今回の準備で意識したのは、「食べ物」と「防寒対策」。
「食べ物」は事前の打ち合わせで食べれているうちは動けるけど、食べれなくなると動きが悪くなると聞いていたので、とりあえず食べられそうなものを各種取り揃えておこうと思った。補給食でオススメなのはお稲荷さん。もう何も食べたくない…となっても何故か食べられる。実際にエイドにいろいろ広げていたら、麺類以外だとお稲荷さん食べていた。
「防寒対策」は台風通過しているので、雨に濡れるし。濡れた状態で動けなくなると低体温症が怖いから、着替えはバディに準備してもらうとして、エイドワークしている間に体温下げないようにする工夫は必要だと感じた。

選手4周目、ペーサー1周目

3周目ですこし膝が痛いとの連絡があり、残り2周も厳しい戦いになるだろう。そう思っていたのだが、その次に入った連絡は復活した!とのこと。3周終えてエイドに入ってきたときは、体の不調なんてものは感じられず、すぐにでも飛び出しそうな勢いだった。
4周目は夜間パート。経験上、2時~3時あたりで眠くなるだろうと思い、仮眠を提案したが、勢いがあることから仮眠なしで進むことになった。今回のレース最大の反省点はここだった。5分でもいいからこの場で目を閉じて休んでもらっていたら。。。にゅうの登りで眠気と、それ以上に高山病のような症状が出てしまった。寝不足だと高山病の症状がでやすい。これもいろいろ試した結果、わかっていたこと。朝4時に駐車場で集合したということは、3時くらいには目覚めていて…前泊しているにしても睡眠不足なのは間違いない。痛み止めの薬を飲んでもらったり、いろいろしたけど高度を下げないことには解消されることはなく、我慢の時間が続いた。
ちなみに稲子湯手前のロードで、RBRGTRCのライバルチームとちょっと並走した。いろいろなトラブルから足が完全に終わってしまったとのこと。それでもやめずにここまで進んでくるあたり、諦めの悪いチームだとわかる。
抜かす時は、相手にもう二度と追いつけないと思わせるよう走り抜く。それがたとえチームメイトであっても。目を合わせると、どちらからともなくペースを上げて、「また会おう!」と声をかけて走り去った(ごめんなさいw)。
また稲子湯エイドでは、これまたRBRCのチームメイトに会う。足が痛くて休んでいるとのこと。そしてロキソニンと胃薬を一緒に飲んでいいのか悩んでいた。ロキソニンは胃粘膜に強い刺激を与えるという情報を耳にしたことがあり、胃薬と併用して飲むとその後の胃腸トラブルに繋がりにくい。足の裏がいたいと言っていたので、『足の裏の痛みはロキソニンで取れたことはないけど、胃薬との併用は大丈夫だと思います』と伝える。これが効いたのか、のちのち爆走してくるこのペアに、教えなければよかったな…と思ったのは内緒。
そんなこんなで話しは戻るが、にゅうの登り。沼?というか落とし穴みたいな場所があるから教えるね。とバディから言われていた。今回ペーサーとは名ばかりで、やったことは話し相手。バディの実力が十分にあるから、ただ70kmの道のりをぺちゃくちゃおしゃべりするだけで、こんなに楽をさせてもらえるペーサーってあるのだろうか?と思いつつもそれに甘えた。そのため、バディの後ろに付き、ペースが落ちてきたら間合いをつめてちょっと煽るもののペースメイクはすべてバディにお任せ。3周も走った道なので、どこにどんなアトラクションがあるのか事前に教えてくれて、落とし穴にハマることなく通過することができた(バディは膝上まで埋まっていたw)。
そして下り。ズルズルだし、視界は暗いしだったが、2人とも下りは得意な方。足元に注意しつつも、1人2人と軽快にパスしていく。
帰り道の稲子湯エイドでまた1つ。沖サバなどスーパーロングでご一緒することのある方が、焚き火にあたっていた。胃腸トラブルとかかな?と思って声をかけると、なんとライトのバッテリーが切れてしまい、予備電池も切れたことで明るくなるまでその場に待機させられているとのこと。ライトの種類を聞くと、自分が使っているものと同じもの。予備電池は2本持ってきている。夜明けまであと2時間弱。仮にバディと自分のライトが切れたとしても、この先はロードと林道だから少し明るくなってくれば問題なく走れる。ということでその場で持っていた予備電池を渡す。自分のレースの時も多めに荷物を背負うけど、ペーサーの場合はさらに余分に荷物を背負う。いついかなる時もトラブルに対応できるよう備えたいから。この時、予備電池を多めに持ってきていてよかったと本当にそう思った。
その後の林道は最終週のことも考えて抑えめに。気付くと麓まで降りてきていて、野菜畑を通り抜けて4周目終了。

画像2

選手5周目、ペーサー2周目

4周目で眠気が来たので、このタイミングで仮眠を取ってもらうことにした。15分。車のシートを倒して、ほぼフルフラット。暖房も入れて、毛布にくるんで。たったの15分だけど効果は絶大で5周目は4周目に比べて体が動くようになったらしく、足取りが軽かった。
レース中の睡眠は人によるけど、自分の活動限界を把握しておくといい。自分の場合、40時間。40時間を超えるレースの場合は、24時間に1回は睡眠を取りたい。そして寝る時間帯はできれば2~3時の間。夜が明ければ自然と脳も体も起きてくるので、この時間に寝るのがパフォーマンスを維持するのに最適だと思っている。(自分の場合は…だから万人に適応するとは思わない)
5周目は4周目に比べ、最初の林道の状態が少し良くなった。水が抜けたのか、単純に明るくなって歩きやすくなっただけなのかはわからないが、とても歩きやすい。4周目よりも格段に良いペースでぐんぐん登り、エイドで多めに休憩している間にパスされた選手たちを追い抜いていった。
にゅう登山口手前ではRBRGのジュニアチームのメンバーが夜通し応援をしてくれていた。応援っていいよね。パワーがもらえる。冗談を言い合えるくらいまだまだバディは元気だ。よし!このまま厳しい山岳パートを抜けてゴールまで突き進むのみ。登りも下りも軽快に進み(落とし穴もうまく越えられたw)、ロード&林道。最終エイドまでの登り返しの林道では無駄にインターバル走をやってみたり、レース最後の道のりを楽しんでいた。
4周目後半から抜きつ抜かれるしていた選手と林道の下りで勝手にバチバチやり合ったり(絶対抜かされたくないねと会話していた)最後まで飽きないレース展開。
KOUMIのコースを知っている人ならわかるはず。ゴール手前の登り坂。短いとも長いとも言えないあの坂。野菜畑を通過しているときにバディが、坂ダッシュするくらいの足は残っていると言う。そんなこと言われたら、ガチチームの名にかけてやらない訳にはいかない。
最後の最後に坂ダッシュ1本決めて、笑顔でゴールに飛び込んだ。

目標タイムには届かなかったものの、幾多のトラブルを飛び越えて、最高の笑顔でゴールできたのは良かったと思っている。
ただし、選手が思い描いていたゴールに近づけたのかはわからない。
これまで何回かペーサーやってきたけど、こんなに楽なペーサーはなかったと思うくらい、自分のことを自分でやってくれるバディだった(旅行代理店の人のペーサーやったときも同じくらい楽だった)。
レースに対する思いや、取り組みもちゃんと見える楽しいペーサーの時間だった。

ちなみに、KOUMIのペーサーしたけど、自分で走ろうとは思わない。完走した方もできなかった方も、あのコースを5周しようとする意志を持てるだけで尊敬してしまう。そんなレースのお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?