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甲状腺がんの初期の症状ってどんなものか

甲状腺スクリーニングは

米国予防専門委員会(USPSTF)
無症状の成人における甲状腺がんに対するスクリーニングを推奨しない。(D推奨)(JAMA 317:1882-7, 2017)

超音波検査による甲状腺スクリーニングの利益と害について詳細な検討をし、成人では無症状の対象者に対して甲状腺スクリーニングをすることは利益よりも害が大きい

としています

じゃあ、症状があるとはどんな症状でしょうか

よく、甲状腺機能低下症の症状を甲状腺がんの症状と考えている方が外来でも多いのでまとめました。

甲状腺がんによる症状は下の3つです。

ある程度の大きさ(2-3cm程度)で見た目でしこりがわかる(これが圧倒的に多い)
さらに大きくなると、圧迫感、つばをのみこむときの違和感が出現
非常にまれですが、甲状腺がんに特徴的な症状として、のどの反回神経に浸潤することによるしわがれ声(嗄声)があります。これはがんの大きさより位置によるので、小さながんでも出現することがあります。

よく間違えられるのですが、

甲状腺がんでは甲状腺ホルモンの異常はでませんし、痛みもありません。すなわち上記以外の症状がでることはまずありません。

参考までに専門書からの抜粋を記載します。



甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版 編集日本甲状腺学会

p201甲状腺腫瘍および腫瘍性病変
臨床面からみた症状
1)小結節では気づかないことが多い、ある程度の大きさであれば自覚症状として、自ら結節を触知する。圧痛、自発痛はない
2)増大してくれば気管を圧迫し、前頸部に圧迫感が生じる
3)嚥下運動に伴って結節が上下に運動するので 触診で、また大きくなれば視診でも結節に気づく


甲状腺診療マニュアル 改訂第3版より

p139 甲状腺良性腫瘍性病変
 主要症状
無症候性であることも多い
自覚症状がある場合 前頸部腫瘤であることも多い
 頸部違和感 嚥下時違和感の訴えも多いが 咽喉頭異常感症として対応する方がよいケースも
 声帯麻痺が出ることは極めてまれ
 p147 甲状腺分化癌
主要症状
①乳頭癌は頸部腫瘤の他は自覚症状にとぼしい、時に反回神経への浸潤からくる嗄声が自覚症状となることがある
②濾胞癌も頸部腫瘤の他は自覚症状にとぼしい、良性の腺腫との鑑別が難しいものが多い