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日本甲状腺学会雑誌12巻2号の特集 2 『福島県民健康調査における甲状腺検査からの現状』 に福島での過剰診断を否定する論文は のっていたの?

日本甲状腺学会雑誌12巻2号
特集 2 「福島県民健康調査における甲状腺検査からの現状」が発刊されました


この特集号が発行された経緯は以下の通りです。

2021年の4月に日本甲状腺学会雑誌特集号「甲状腺癌の過剰診断を考える」が発行されました。2021年6月9日に日本甲状腺学会がこれについての声明を出しました。
(日本甲状腺学会雑誌 12 巻 1 号に掲載された特集1「甲状腺癌の過剰診断を考える」についての日本甲状腺学会の立場について http://www.japanthyroid.jp/public/img/news/20210609_1201_2_opinion.pdf )
要点は下記のとおりです。

1.この特集の意見は学会の一部の人の意見である。  
2.学会は過剰診断に対する対策についてはガイドラインを作成するなど常に前向きに取り組んできた。
3.福島の甲状腺検査については学会としてずっと支援してきた。

これと同時に理事会から、次号で本特集の内容を訂正する目的で理事会が指定する内容で特集号を発行するように編集委員会に指導が入りました。

今回の『福島県民健康調査における甲状腺検査からの現状』の特集を執筆されたのは以下の先生方でした


1)Editorials 福島県立医科大学 鈴木眞一先生
2)小児甲状腺癌の病理学的特徴‒成人甲状腺癌との比較‒ 隈病院 廣川満良先生、樋口観世子先生、宮内昭先生
3)福島県県民健康調査「甲状腺検査」のこれまでの評価と課題 福島県立医科大学 志村浩己先生
4)福島県における小児甲状腺癌の手術療法の実際 福島県立医科大学 鈴木眞一先生
5)成人の甲状腺微小乳頭癌の取扱いについての日本甲状腺学会,日本内分泌外科学会による取り組み 日本医科大学 杉谷巌先生
6)超低リスク甲状腺乳頭癌のactive surveillanceの現状 群馬大学 堀口和彦先生


以下、ツイッターの中の人であるマモルが日本甲状腺学会雑誌を読み、要約を書き、思うところをまとめました。

【要約】


1)Editorials 鈴木眞一先生
・ 反論ではない(前回の特集とのディベートをする目的ではない)そうです。あれ?
・ ご依頼されたにもかかわらず、多忙を理由に執筆をお断りになった先生がいらっしゃるような文面が‥

2)小児甲状腺癌の病理学的特徴‒成人甲状腺癌との比較‒ 廣川満良先生、樋口観世子先生、宮内昭先生
・小児甲状腺がんの病理所見の解説をされておられます。
・福島の甲状腺検査や過剰診断には全く言及がありません。

3)福島県県民健康調査「甲状腺検査」のこれまでの評価と課題 志村浩己先生
・検査受診は同意を取って自由意志で受けてもらっている。
・甲状腺検査のメリットとともに,デメリットの説明にも尽力している。
・放射線被ばくのない成人に対しては,超音波検査による甲状腺癌のスクリーニングは推奨されていないが福島県民のように放射線被ばくの被害を受けた場合は例外である。
・診断はガイドラインに従うことで過剰診断のリスク低減を図っている。
・治療においてもガイドラインに従ってできるだけ小さな手術を行い、経過観察も採用している。
・過剰診断のリスクや甲状腺癌の診断の必要性は,病理所見等を見て考えるべき。
・学会に検査継続のためのさらなる支援を要請したい。

4)福島県における小児甲状腺癌の手術療法の実際 鈴木眞一先生
・チェルノブイリと違って手術適応はガイドラインに従いできる限り小さな手術をした。アイソトープ治療(RAI) もほぼおこなわなかったので過剰診断・治療の指摘にはあたらない。
・過剰治療とならないよう経過観察をしている症例もある。
・遺伝子変異や病理組織で判断したら過剰診断ではない。
・ガイドラインに従ってやっているので過剰診断ではない
・将来臨床がんとなる症例を治療しているだけ
・福島での過剰診断,治療を裏付けるようなエビデンスはない。
・学会に検査継続のためのさらなる支援を要請したい。

5)成人の甲状腺微小乳頭癌の取扱いについての日本甲状腺学会,日本内分泌外科学会による取り組み 杉谷巌先生
6)超低リスク甲状腺乳頭癌のactive surveillanceの現状 堀口和彦先生

・2つとも成人における低リスク微小癌の経過観察についての論文です。
・福島の甲状腺検査や、過剰診断への言及はありませんでした。ただ、杉谷先生は未成年の乳頭癌に対する 経過観察についてはエビデンスがない、と書いておられます。


以下、マモルの感想です。


あれ?福島の甲状腺検査は過剰診断ではないという特集?になっていました??
鈴木先生と志村先生以外は過剰診断についてのお話はなかったですよね?
それから、「過剰診断を考える」の特集の論文に対する具体的な反論もなかったですよね?

志村先生の論文に、自由意志と書かれていましたが、福島県の対象者やその親御さんたちは、受けなくてもいい検査だ、とか、害のある検査だ、ということをご存じなのでしょうか?。サインもらっているし知らなかったのが悪いから自己責任ということ? 現状、学校の授業中にやられているので、検査を断るだけで変に目立ってしまって、断るのもかなり勇気がいるようです。新型コロナワクチンの接種でも、学校での接種は同調圧力があるので好ましくない、という意見が出ていましたが、甲状腺検査にはそういう配慮はいらないの?

甲状腺がんの場合は、転移しようが浸潤しようが一生無症状の人もいるので、過剰診断かどうかは病理組織ではわからないはずでは?? 今、甲状腺がんの過剰診断が世界的に問題になっていますが、病理診断や遺伝子診断で将来治療が必要なくらい大きくなるがんかどうかがわかるなら、医学の歴史に残る研究成果です。でもそんな論文は見たことがありません。

ガイドラインって過剰診断を想定して決められたものではありませんよね。それにそもそも主に成人のエビデンスを元に作成されたものですから、子供や若者に使っていいかどうかすらまだわかっていないはずですが‥ 

手術方法が縮小の片葉手術だから、アイソトープ治療(RAI) をしていないから過剰治療ではない?どのような治療を選択したとしても、将来命に関わることのないがんを治療したら、その時点で過剰治療では?

被曝の影響があるときは甲状腺検査が必要なのだ、と書かれていましたが、IARC(WHO)は原発事故後には甲状腺スクリーニングをするべきではない、という提言を出していますが、甲状腺学会ではこれを無視して検査が必要であると言うのでしょうか?ましてUNSCEARからは甲状腺がんが増えるような被ばくはなかったとされているのでは?

福島では過剰診断の被害が出ていない、という見解を甲状腺学会が支持するなら、国連(UNSCEAR)、WHO(IARC)、SHAMISENなどの国際機関の専門家たちがまとめた意見と正反対になりますけど、ひっくりかえすだけのデータを持っているのでしょうか?


行間がよめないマモルにはいまいちよくわかりませんでした。


詳しくはJCJTC 第 2 回甲状腺癌過剰診断国際シンポジウムでの解説を聞いてください。



この雑誌、会員になれば読むことができます
http://www.japanthyroid.jp/index.html 

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「日本甲状腺学会の入会には、特別な資格を必要としません。どなたでも学会の趣旨に賛同され、年会費(6,000円)を納入していただいた方は、会員になれます。 WEBフォームよりお申込みいただくか、申込み用紙(ダウンロード出来ます)に必要な項目を御記入になり、事務局に郵送、FAXまたはメールでお送り下さい。
なお、入会申込書および年会費納入の確認をもって入会とさせていただきますので、ご了承くださいますようお願い申しあげます。」と書かれています。

パスワードをもらえると、前回の日本甲状腺学会雑誌特集「甲状腺癌の過剰診断を考える」12巻1号や、いままでの学会雑誌例えば 2016年の 特集2 甲状腺スクリーニングとその問題点(7巻 1号)や2015年(6巻 2号)シリーズ [一家言]植野映先生の回の雑誌なども読めます。まるで学会の営業になってしまって申し訳ありません。