M-1グランプリ2020を振り返る

2020年、コロナ禍、ステイホームの中、私はニューヨークのYouTubeチャンネルにハマっていた。
ニューヨークのことは2016年から2017年にかけて放送されていた「ニューヨークのオールナイトニッポン0」がきっかけで好きになっていた。
そんな彼らがYouTubeを始め、初めてM-1決勝進出を果たした2019年の年末から私も彼らへの熱を上げていく。
気づけば人生で一番M-1に、お笑いにのめり込んだ一年だった。
12/20に行われた衝撃の決勝を振り返るその前にライブビューイングで見た準決勝から振り返りたい。

12/2(水)準決勝ライブビューイング感想

M-1の準決勝、真のお笑い好きだけが観客として集まる、日本一レベルの高いライブだ。
私はここ数年チケット抽選を申し込んではハズレを繰り返していた。去年からライブビューイングが始まっていたが、まだ自分の中ではそこまでしてという温度感。しかし今年は上記の通り気合が違ったので、会場の抽選は外れたものの、死ぬ気でライブビューイングチケットを確保。
結論から言ったら最高だった。
とにかくほぼみんな面白い。長くなるので、かいつまみながら、敗退してしまった何組かの芸人の感想をメモ程度に箇条書きで簡単に。

ランジャタイ
死ぬほど笑った。敗者復活とは違うネタ。
右手をズボンのポケットに突っ込んで激しく動かして、「連れてきた(ペットの)ちくわが暴れ出した」と言い出し、それを食べ(?)、そうこうしてたら黒柳徹子が上から降ってくるネタ。
自分で書いてても意味が全くわからないがまた見たい。最高。

コウテイ
敗者復活の結婚式とは違う、学校の先生だか転校生だかのネタ。この人達ってなんでこんなベタな設定からあんな漫才作るんだろう。
敗者復活同様、それまでやっていた形を変えてダブルボケにしていたのがバッチリハマっていたが、決勝進出ならず。

インディアンス
実力の塊。最高だった。その後の錦鯉のパチンコのボケ被りが痛かった。先にやってたのに錦鯉に持っていかれた感。

ぺこぱ
ぺこぱ2年目といった漫才でそこそこよかったがその後滝音が同じ設定だったため両者気を使って敗者復活では違うネタに。
敗者復活のネタは正直全然だったが、決勝にもし上がっていても準決勝のネタであればそんなに文句ないなという印象。

ゆにばーす
お互いの見た目を罵り合う、コンビ歴7年の集大成のようなネタだった、が、であればもっとウケなきゃいけないのに客があんまり乗り切れないネタだった。
漫才はその人の人格を出したら客が心を乗せやすいって昔ノンスタの石田さんが言ってたが、。
敗者復活ではネタ変えてきっちり仕上げてて流石だった。

ダイタク
ニューヨークの兄貴なので肩入れして見てたが、本人らが後で言っていたようにスベっていた。出順が後の方だったのと、客がネタについてきていないのに2人のネタの仕方が大ウケしている時みたいできつかった。
こちらも敗者復活はきっちり仕上げてて流石であった。

総括
正直ライブビューイング会場の笑い声によって会場の笑い声が聞こえてなかったが、我々観客目線で面白いと思った、ウケていた組がそのまま決勝に上がったイメージ。
見取り図とオズワルドよりコウテイとインディアンスのがウケていたが、正統派漫才師がニューヨーク以外いなくなってしまうバランスを鑑みて調整されたのかな?という印象。他7組は文句なし。

ただ、これまでがわからないが、準決勝で客ウケ重視にされるのはどうなのかとも思う。準決勝の観客は相当なお笑い通、決勝の観客は真逆なのでネタの仕方が難しいだろうなと思った。

敗者復活の感想

視聴者投票=人気投票=ぺこぱ の構図を予想していたため全く楽しみでなかったが、一番ウケてたインディアンスが勝ち上がってよかった。
コウテイや金属バットは出順が早すぎたかなと思うが、これもくじ運なので仕方なし。
トリのニッポンの社長が面白すぎたので大満足。
キュウとコウテイは準決勝でやったネタの方が面白かったのでまた来年以降のライブシーンも注目されたい。

決勝の感想

まず決勝進出者の顔ぶれと準決勝の感じから、本当に順番次第で誰が優勝してもおかしくないなと思っていた。
決勝前の予想は東京ホテイソンが優勝、ニューヨークが準優勝、マヂカルラブリーが3位 としていたが、アキナと錦鯉とおいでやすこがも来るだろうな と考えていた。
結果的には大外し。その原因も合わせて準決勝でのネタも含めて各組を振り返っていく。

インディアンス
トップバッターは点数が伸びづらい。ここで95点とかつけると以降より面白い組の採点ができなくなってしまうからだ。
だったら不公平なので敗者復活をトップバッターに固定しろと長年唱えてきたが、こんな形でついに実現。
出順が後半なら優勝まで狙えたと思うと彼らには申し訳ないが、トップバッターとして会場をしっかりと盛り上げる最高のネタであり、今大会のMVPだと思う。
今年は去年までよりさらに実力を感じたので来年、満を辞して決勝にストレートで上がり優勝争いする彼らを見たい。

東京ホテイソン
4〜5年前から同じスタイルで手の内がお笑いファンやM-1の予選の審査員にもバレきっている中、毎年進化を遂げて今年ついに決勝へ。そう、ただそれがこの決勝では仇となった。
私のような東京ホテイソンのネタを多少知ってるお笑いファンであれば、彼らの漫才は、どんな意味不明なボケでも、ツッコミのたけるが一言で落としてくれるとわかっているので頭も使わず安心して見ていられる。
準決勝、決勝で披露したネタは彼らの完成系のようなネタで、これは優勝もあるなと思っていた。
しかし決勝の場では狭く深く進化した彼らのネタは、わかりづらい、の一言で跳ね返されてしまった。

しかし彼ら自身はこの決勝進出や上記背景を凄く冷静に戦略的に捉えていて、2020年決勝はあくまで顔見せ、優勝は来年以降と見据え、あえてわかりやすい昔のネタではなく今年一番面白いと思うネタで勝負をしたのだ。
また出順も後の組が個性的でインパクトがあるため、早めにインパクトを残せるトップバッターがいいと公言していたので2番目も歓迎だったのであろう。
来年以降に期待だ。

ニューヨーク
早い。出順が早すぎた。
ネタは最高、点数も結構伸びた。松本人志の点数も去年から10点上がった。
軽犯罪や犬のう○こだったり、観客が引かないかなと心配していたが杞憂だった。
あと数組後ろだったらファイナルステージまで上がり優勝も狙えたかなと思うが、恐らく2本目にやる映画のネタはしゃべくり漫才ではないためどのみち優勝はなかったか、
いずれにせよファンとしては悔しい結果になった。
ただ来年以降も今年同様テレビの売れっ子にはなると思うのでM-1関係なく活躍に期待したい。

見取り図
正直準決勝ではそこまではウケていなかった。いや正確に言えばウケてはいたが、コウテイやランジャタイのカオスなネタ、マヂカルラブリーの吊革、おいでやすこがの大声、キュウのシュールな静かなネタ、そんなパワーある他の組にインパクトが負けていた印象だった。
が、決勝はリリーの異常さ、盛山のポップさがめちゃくちゃウケていた。
ファイナルステージ進出も文句なし。流石であった。

おいでやすこが
準決勝と同じネタだったがとにかくわかりやすく面白く、案の定点数も爆発。
挨拶と掴みを敢えて小声でやることがフリになっていたのも面白い。
そんなテクニック云々もあるが、普通の見た目のおじさんが大声出すだけで面白いので来年以降小田さんのテレビでの活躍に期待したい。

マヂカルラブリー
私は間違いなく準決勝及び2本目でやった吊革をやるもんだと思っていた。が、彼らが選んだネタはフレンチだった。衝撃だった。
数年前のネタで寄席でもよくやっており、私も劇場で見たことがあった。面白いは面白いだろうが伝わるのか?と不安だった。
が、丁寧でわかりやすいフリが効き、入店のボケで30秒も拍手笑いが起きていた。その勢いのままファイナルステージへ。
このネタでファイナルステージに行けた時点で会場にマヂカルラブリーを受け入れる土壌があり、さらにそこに吊革を持っていける時点でもう優勝だなと思った。

オズワルド
彼らも実力しかなかった。おいでやすこが、マヂカルラブリーによって荒らされた後でやりづらかっただろうが、自分たちの漫才をきっちりと行なっていた。
昨年の結果を受けてというのと、元の伊藤のツッコミのタイプ上だと思うが、ネタ後半にかけてシャウト系のツッコミをしていたが、それが彼らの進化ではなく他の組に釣られてと捉えられてしまったのが残念。
気軽に言っていい言葉ではないと思うがまた来年に期待したい。

アキナ
準決勝でのウケは最高だった。
「めんどくさいねんけど地元の友達が来ててな」
と言うボケの山名の顔、言い方、それだけで、もうその人のことが好きなんだ、そういうネタなんだと十分に伝わり、以降ずーっとウケていた。
ネタ中に、あ、アキナは決勝決まったな、そう思わせるほどのウケだった。

が、決勝では全くウケなかった。

何故なんだろうと疑問でYouTubeのM-1公式のコメント欄を見て理由がわかった。
そのフリが伝わってなく、観客や視聴者が置いてけぼりにされていたのだった。

また多分直前の紹介で40歳と言われており、彼らもネタのセリフで40歳と自ら言うものの、設定がちょっとイタいと捉えられたか。
上記2点で残念な結果になったが、「恥ずかしい」と言う斬新な受け身で盛り上げ、彼らの実力を感じた。

錦鯉
準決勝、彼らは大トリだった。
26組×4分半で観客の疲れもピークだったが、大爆笑を取っていた。インディアンスとパチンコのボケ被りがあったがインディアンスごと決勝の枠を掻っ攫ってしまった。
ネタは最高で結果は残念だったが、もう彼らは決勝に行けばそれだけで充分、1000万以上の金を稼ぐ売れっ子になると思う。
今後のテレビでの活躍に期待。

ウエストランド
準決勝ではかなり早い段階で登場していたが、かなりウケていた。
「自覚があっても自我が勝つ」「仲良しコント師と悪口漫才師」「復讐だよ?」などパワーワード連発。
出順が早ければもう少し点が伸びたろうが、彼らも決勝に行って名が売れればそれでOKなところはあると思う。

見取り図2本目
M-1には強い方のネタを最初にやるか2本目に取っておくかの戦略があるが彼らは前者を選んだのかなと思ってしまった。
めちゃくちゃ面白かったが優勝するほどハネてもなく、後一歩残念だった。

マヂカルラブリー2本目
待ってました吊革。もうずーっと面白い、今年1番笑った。1本目もそうだがとにかく村上のツッコミの声と間が聞き取りやすくて良い。
物議をかもしてる件は後述。

少し話が逸れるが、大会終了後に彼らの2017のネタを見たら、マヂカルラブリーの完成形のようなカオスなネタで爆笑した。
と同時に東京ホテイソンの今年のような印象も受けた。
突き詰めた形で最下位になった後、数年後に優勝もできるんだと証明したことは東京ホテイソンにとっても大きいことだと思う。

おいでやすこが2本目
まさかの2本歌ネタ。こがけんのオンステージで圧巻。
小田さんが、視聴者が言って欲しいタイミング、セリフで突っ込んでくれるので見やすい。優勝こそ逃したものの、確実にテレビで今後売れるはずだ。

総括
順位予想は外れてしまったが、個性的な漫才が多く、どれも面白くて最高だった。世間の声通り審査員の点数も去年に比べデフレしていたが、まぁ去年が凄すぎたということで仕方ない。

そんな中、優勝したマヂカルラブリーの吊革ネタは2人の掛け合いがある漫才ではなかったため物議をかもすことになった。いわゆる「あれは漫才なのか」という論争であるが、個人的にはそんなことはどうでも良く、その日1番面白いコンビが優勝した、それだけのことなのだと思う。
お笑いファンは私以外もそうだと思うが、突き詰めてしまえば、ネタが変であればあるほど面白いし、逆に単純でくだらないことを一番欲していたりする。だからマヂカルラブリーやおいでやすこがのようなネタはめちゃくちゃ面白かった。

普段お笑いを見ない人ほどお笑いに厳しいイメージがある。何でも簡単につまらないと切り捨ててしまう。
私はその逆で普段お笑いを見て、大好きだからこそ、たとえ本当に面白いと思ってなくても、人が笑かそうとしているだけでもう笑う準備をしてしまう。
何でも簡単につまらないと切り捨てるより、いいところを見てたくさん笑うのがお互い一番幸せなのだと思う。お笑い以外のことであっても。

お読みいただきありがとうございました。

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