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ポルノグラフィティ/メビウス  ひねってめぐって裏も表も

ポルノグラフィティの新アルバム、「暁」がリリースされて数日経ちました。
 気がついたら聞いています。みなさんもそうですね(圧)。

 
 5年ぶりのアルバムだし、アルバムトータルで語りたいような、でも曲ごとに語りたさの強弱もあるしなぁ……みたいにもじもじしていました。重いよね、筆。 

 と言いつつ中でもこの曲については割と気が狂うくらい好きなので、とりあえず書き留めておくことにします。
 今このリストを作ったら絶対入れるはず。

 まず曲のリンクを貼っておきます。
 読む前でも読みながらでも読んだ後でもいいので聞いてください。

https://amazon.co.jp/music/player/albums/B0B6VSY6ZP?marketplaceId=A1VC38T7YXB528&musicTerritory=JP&ref=dm_sh_BYNDpgG9VB9J3ABoNmuhR8RTx&trackAsin=B0B6VV821H



以下、思いつくままに。

やさしいあなたは わたしのくびねを 
りょう手でしめ上げ 泣いてくれたのに


 温かく柔らかく甘く激しく、そのどれもが不器用でイビツに組み立てられて崩れかけているような。
 歌詞の内容もそうだし、表記が平仮名であることも相まって、達観と無垢、強い感情と呆然とした困惑が同居しているみたいな曲。
 強弱や高低の対比が多い曲だけれど、全体として受ける印象は静かで広々としている。

イントロからこの曲の歪さを主張するように、響きを抑えたアコースティックギターとリバーブたっぷりのエレキギターが対比されます。
 空間にゆっくり溶けていくようなエレキの響きが美味しすぎて。

その間にそっと現れる昭仁さんのボーカルは歌詞に違わず優しく。
「しあわせ」で一瞬だけ涙が滲むようで、でもこぼれ落ちないまま。
 
 2コーラス目では更に低いウィスパーボイスが重ねられていたりして、この曲のどうしようもない歪さを更に描写していく。
 この人、年々低音の色気と深みが増しているような……

サビでは“らしい”伸び方をする歌唱だけれど、感情を強調するというよりただひたすらに伸びる。
 バッキングと相まって気持ちよく広がって、そこにあるただ一人の感情の強烈さを克明にしていく。
 
 その人は自分が何を感じているのか、なぜそう感じているのかも知っているけれど、それを表す手段についてあまりにも無知でどうすればいいのかわからないと思っていそうな。
 叫びたいのに涙は出ないし、崩れ落ちたいのに膝の力が抜けてくれない、みたいな。
 そのどうしようもない持て余し具合も聞き手からすると更に切ないわけで。
 
 ギターソロも胸を掻きむしるようなのにどこか清潔で、割り切った爽快感と粘ついた執着を同時に抱えている。
 それでいてどこか一歩引いて、そこにある衝動を俯瞰しているみたいに。

そこからCメロでは「えいえんとはこういうこと?」という言葉の通り、扱いのわかっていなかった、しかしずっと自分の中にあったものをようやく理解したようで。
 
 そして大サビの「わかってんだ」ではこれまで以上に声が張り上げられて、一曲を通して持て余していた感情にやっと追いつけたようにも聞こえる。
 ブレイク部分でじわりと漂うシンセの音も、その感情や思考が決してぶつ切りのものではなく、繋がって流れてきたものであることを示してくれるみたいに。

アウトロのギターソロでは遂に声を上げて泣くことができたような気がして、もっと長く聞いていたいと思ってしまうけれど、それを提示したらスパッと終わる潔さもまたある種の収まりの良さがあって。
 
 幕が閉じたあとも、その後についてじっと思いを馳せてしまいたくなる。
 でもその後を詳細に描写して欲しいわけじゃないんです。ただ祈っていたいだけで。

昨年のライブツアー、続ポルノグラフィティでも披露されていた曲なんだけど、主なメロディや歌詞の内容は変わらないまま、深化を遂げて音源となっています。
 作品の研ぎ方が垣間見えるようで、その辺りにも圧倒されたりニヤついたりしつつ。

もう何年も追いかけていても、まだこうやって見たことのない景色を見せてもらえて、そのどれもが既存の名曲と比べても全く見劣りしないってのは、つくづくファン冥利に尽きるなと思う次第でございます。


以上、怪文書でした。

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