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『楽しいのがいい』

踊る!ディスコ室町の新しいMV『楽しいのがいい』を公開した。

映像の舞台となっているのが「御所西ハウス」である。

この部屋「御所西ハウス」は、踊る!ディスコ室町のメンバーが集う制作部屋として2018年6月に契約したもので、感覚的にはもっともっと長いこと使っているような気がするが、意外と1年半ほどの歴史なのだなと驚く。

この部屋を借りる前の話。

かねてから、各人の機材をはじめとして、イベントの制作物(自主企画「どDEEP部」のための巨大な看板や、MVで使う木製のバンドロゴ、シルクスクリーン用の版やインクなど、DIY精神あふれる我々ならではの諸々)やフライヤー・物販等々を保存するスペースの確保に苦労しており、私ミキクワカドの個人の部屋を中心としてメンバーの家が半分物置と化していたというバンド内での問題があった。

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そんなとき、バンドでの合宿が企画された。

普段からバンドメンバーで飲んだりしないわけでもないが、リリース等を終えて活動の区切りがあったタイミングで今後の進展を語りつつ、楽器を持ち寄り曲も作ってしまおうというものだった。当然、音を出せるようなスタジオ付のロッジなどがよかったのだが、予約もとれず、案外我々の日程にも余裕がなかったため、民宿などを借りれるサービス・Airbnb(エアビー)で、一軒家を一晩借りることにした。

実際は、大したミーティングも行われず曲も出来なかったのだが、バンドで一軒家を貸し切って集い、時折友人なども訪れ、酒をのみつつ語り演奏をするということが、なにか新しいものが生まれる空気を作ったように思った。この経験が転機となった。

京都には古い家も多く、賃貸の一軒家も少なくない。実際ギターのまことは、学生時代に大学そばの一軒家に住んでいたこともあり、我々はバンドで借りる物件探しに奔走した。色々な物件を見る中で、やっと見つけたのが「御所西ハウス」である。

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ワンルームがそのまま一軒家になったような妙な建物で、床がへこんでいたり、ドアが曲がっていたりと、いろいろ不思議な(おそろしい)ところはあったが、安さとアクセスの良さが決め手となった。

その後、各人の荷物問題は解消され、その後の楽曲の制作やレコ―ディング(ちなみに今回のMV『楽しいのがいい』のボーカルとコーラスとパーカッションの一部はこの部屋で録音されている)、バンドのミーティングやMVの制作、さらには東京からイベントに招いたミュージシャンの宿泊施設としてなどなど、大いに活躍した。

特におもしろかったのは、いつも企画に出演してくれていたDJ JORDANくん(大学の後輩でもある彼。いまは東京に引っ越した)がCDJとミキサーを貸してくれ、室町メンバーに巻き起こったDJブームだろう。音楽をかける装置があり、そこに部屋があるだけでパーティーになるという基本的なことを我々に教えてくれたのがそれらの機材であり、DJ JORDANくんであり、このハウスであった。

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実は「御所西ハウス」の場所は、自分たちが通った大学のすぐそばにあり、学生の往来が常にあった。自分が通っていた頃には目もくれなかった建物だったが、昔からずっとあるらしい。もしも自分が学生だとして、通学途中にある家の中では、大人がそろいもそろって音楽をやるために集まり、時には夜中までパーティーをしているなんて、想像できただろうか。そんなことを考えていると、おもしろくてたまらなかった。

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残念な知らせが届いたのは今年の6月のことだっただろうか。

実は、契約当初からこの家が取り壊されることは決まっていた。それは色々と傾いた部屋の様子からすれば一同納得のことであった。しかし、この度突然大家が変わってしまったため、最近の地震などの影響も関係して、数年先の予定だった取り壊しを急遽年内に行いたいという知らせであった。一刻も早く立ち退いてほしいとのことだったが、相談を重ねて10月末にこの家を去ることが決まった。

そのようなわけで今回のMV撮影に踏み切ったのである。

当初から、部屋の様子を映像で残したいという思いはあったが、まさか取り壊しを機にとは考えていなかった。しかし今回特別なのは、部屋は取り壊してしまうので、どんなふうに汚してしまってもいいというところだった。この環境を生かした面白い企画はできないだろうか。

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そこで選んだのは、部屋中をペイントすることだった。

だれにでも思いつきそうなものだが、壁に画びょうをさすことさえためらわれるのが賃貸の物件。そうそう実行できることではなく、取り壊される物件ならではの企画だろう(悲しすぎるけど)。ペイントした部屋で、DJブースを作り、友達を呼んで、踊る!ディスコ室町のライブイベントをする様子を映像にしたい。そう思ったのである。あとはMVでご覧いただいた通りだ。撮影に協力してくれたみんな、来てくれたみんなありがとう。特にバレーボウイズの3人は、映像を編集していても良い場面がありすぎて、もう一つ映像を組めそうなほどであった。しかし、主役をとられてはかなわんと、室町メンバーの画に差し替えておいた。

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いろいろと思い出の詰まった部屋。ガラッと変わってしまうのは寂しいのではないかと思ったが、一度スプレーを噴射すると楽しくなってきてしまうものである。この部屋の映像を夏の終わりに、この曲のMVとして作れたことは、偶然だったが良かった。たくさんの人に見て欲しい。

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歌詞について。

昨年室町を脱退したベーシスト・山田トノ。脱退せざるをえなかった彼を目の当たりにして、僕なりに思う事があり、それが種になった。自分らしく生きたい。その気持ちは至極当然で、息を吸うように実現されるべきことのように思うが、案外難しい。むしろ、自分にとってこれだけは大切にしたいということであっても、そうできないような現実があったりする。毎日を忙しく過ごしている中で、何を大切にしたかったさえかも忘れてしまうこともある。生きづらさを感じながらも自分らしく生きることを求めて進む“LIFE IS PUNKS”の人が流す涙は美しい。

「楽しい」というのは、思いのほか大事なことなのだろう。以上。

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