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とにかく胃が痛いので此処から出してください。

気付くと元彼の家にいた。おばあちゃんがせっせと布団を敷いたり、ご飯を作っている。自分たちでやりますよ、と声をかけたかったが声が出なかった。
全て終わったあと。おばあちゃんが一方的に話す。
「いやあ、会えないと思っていたから嬉しいわあ」
言葉に詰まる。ちゃんと別れたあとの世界線だったから。凄くニコニコして話されて、何とも言えない感情が湧き出る。
暫くすると元彼が登場。懐かしいなあと思いつつ観察していると隣に座って、これまたニコニコと話を始める。口がぱくぱく動いているから何かを話しているのだろうが何も聞こえない。
次は見知らぬ部屋にいた。此処は何処で誰の部屋だろうかとぐるりと見渡していると、よく知る人物が出てきた。此処ではNとしよう。わたしはNのことを一方的に知ってはいるが、Nはわたしのことを知らない。夢の中では友達のように接していた。
そのNが恋人のような振る舞いをしてくるものだから夢はなんでもありだなと驚いた。暖かく大きな手で耳を塞いできたり、体が触れ合うほど近くに座ってテレビでサッカーを観ながらはしゃいだりと、この人と付き合っているのだろうかと思うほど、兎に角距離感がバグっていた。
場面が変わる。その部屋から出てみると元彼がいる空間にいた。物凄く不機嫌になりながらおばあちゃんが作ってくれたナポリタンを食べていた。声をかける。
「どうしたの?」
「別に。何でもない」
何でもない態度ではないけれど、これ以上何かを言っても無駄だなと察したので、とりあえずわたしもナポリタンを食べた。空気が重い中で食べるナポリタンは味がしなかった。
何を話してもつっけんどんだからもう寝ようと布団に入るとNの部屋にいて、Nの布団に入っていた。夢は自由で怖い。
バッと布団から出るとまた元彼がいる空間に戻った。板挟みである。胃が痛くて泣きそうだった。
Nも部屋から出てきた。青ざめた顔をしてわたしに問う。
「おれ、怒られるのかな」
正直なところ(知らんがな…)としか思わなかった。原因はお前だよと言いたかった。いやわたしにも非があるのかもしれないけれど。

此処で夢は終わった。