〈練習問題②〉ジョゼ・サラマーゴのつもりで

※『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(フィルムアート社)の課題用に書いたものです。

 めでたい縁起物をモチーフとした10種類のパンを詰め合わせた新春初売りの人気商品である福袋を今年こそは手に入れようと大晦日の夜から店の前に並びはじめた人々の列の長さが100メートルをゆうに超えていることをSNS経由で知ったチーフスタッフは顔から血の気がサーッと引くのを感じつつも臨時で雇った3人のアルバイトたちにウィンドウのブラインドをきっちりと下げるように指示を出してから整理券を配布すべきか販売方法を抽選制に変更すべきか厨房スタッフにかけあって福袋の数をいまから増やすべきかと客からのクレームを最小限に抑えるためにとるべき手段は何かと必死に考えながら店長が仮眠をしている事務室へと急いで向かった。