〈練習問題①〉文はうきうきと 答2

※『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(フィルムアート社)の課題用に書いたものです。

 違和感を覚え、ぼんやりと夢から覚めた。おなかのまわりが、なんだか痒いのだ。朦朧としながら肌をかくと、ビリッと感電したかのような痛みが走り、一気に意識が覚醒する。肌が痒いというよりも、なんだか熱を持っているのだ。そして指先が、なぜか湿っている。驚いて起き上がろうとすると、今度は皮膚が破れたかのような鋭い痛みが走る。まずは落ち着け、と自分に言い聞かせながら腹部に目をやると、火傷でも負ったかのように皮膚がドロドロになっている。あまりのグロテクスさに、思わず声をあげる。なんだ、これは。寝ている間に、ゾンビウィルスにでも感染したのか。本当になんだよ、これは。バクバクと鳴る心音にかぶせるかのように、窓の外からセミの鳴き声が聞こえてくる。痛みと痒み、そして腹部から漂ってくる異臭が、この状況が悪い夢ではなく現実だと自分に突きつける。もう本当になんなんだよ、これは。