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恋と積み木。3

2/3のつづき

彼女の話に戻る。
あの2人は付き合い始めた。

わたしは心から彼女の喜びを味わい、
いよいよ自分が浮いていく。
もう目で見えるものがテレビと変わりない。

何だろうなコレ、何だわたし。

心理学系の本を手に取り始め
自分が離人症に当たるのでは と思いながら、
本を閉まった。
知ったから 何が変わるというのか。


文字は救わない。
文字が救えるものは文字の傷だけだ。
わたしは積み木を積んでしまった。
積み木の是正はどうやるの?
過去に飛ぶ魔法などなかった。
この現実を 物語は救わない。
わたしの物語、この歪な積み木は
なにに差し出しても 返品されてばかりだ。

その返品される積み木を積んだのは、わたし


だから血走ったのだ。

何ならもう どっちも 欲しい。

叶わないのなら どちらも手に入れたい。



そのとおり、わたしは高校入学までの
モラトリアムに それを実行した。期間2ヶ月。


文字どおり、全てを失った。



彼女は泣き崩れ 別れたと、
周りの友人たちから 非難されながら聞いた。
あの挑発に弱い馬鹿な男と続くだろうとおもっていた
わたしは驚いた。あいつは話したのか。
その生真面目さも 彼女の涙も、もう届かない。
いや届かないところへ、逃げ飛んだのだ。


今回も予想通りで、しかし、予想以上だった。

取り戻せないとわかっていたのに学ばない。
また暗い水に流してから
しでかした事の意味を 思い知る。
来月からは彼女と同じ高校に通うのだ。
確信犯だった、今回はあの時と違う。


知ってて、やった。


この手は また 積み木を積んだ。
このプロットは生まれた時に決まっていたのだろう。
最初から積むしか出来ない。
それしか知らない、いつか崩れるモノ。


ねえ それならもう
何を積んでも いいのでしょう?
だってこれは わたしの積み木 なのだから。

はやく、はやくはやくはやく崩れて。後生だから。


◆◆


高校は 彼女とその友人たちと 違うクラスだった。

その時仲良くなった男の子には彼女がいて
好かれてることは知っていた けど
もう学校で恋をするのは こりごりだった。


教室で座っていられるわけがなかった。


登校する素振りでひたすら外に出歩き
不登校や中退の友達ができた。
親の知らないバイト代をつぎ込み
親の知らない携帯電話で 世界と繋がった。
夜家を出て朝帰り 風呂で酒臭さを抜いて登校した。
周りにお堀ができていた。


無関心が 心地良い。


出会い、次の機会のセッティングをすることで
人の中で 自分の居場所を幾重にも作り 安心した。

お互いのメリットを上手く組み合わせることで
よく知らない人とも繋がれる。

誰にも知られていないところにいきたい。

積み木を積まねばならない。

早く崩れますよう、お願いしないと。かみさまに。


◆◆


彼女に友人ができた。
その子が彼女の友達になってくれてホッとしていた。
ごめんなさい。もう関わりません。

その子とは高2で同じクラスになった。
数ヶ月経って、やっぱりすごく良い子だと思った。


突然、彼女ともう話さないの?と聞かれた。
何かの満を持した のだとおもう。彼女の中で。
きっとこの数か月 お互い様子を伺ったのだ。
お昼を食べてる教室で ボタンは押された。
ずっと押したかったという顔をしていた、にしても

ここできたか!!


自分のした事が 傷つけたことを知ってる
もう話せないと思ってしたことだから(話さない)
と答えたとおもう。

その子は泣きそうに話した。



彼女は とても後悔してる と
気付かなかった、傷つけた と

わたしを。



頭がグラっと沸騰した。


もうそんな資格ない、とか 言ったとおもう。
本当のことを こんなところで、言えるわけない。



違う、わたしが好きなのはあなた。

あなたの方。



どうしようもない。どうしたらいい。
どうにもならない。なにも伝わらない。
本当のことを聞かせていいのか。
なにも伝わらない。なに1つない。
信じてもらえない。わたしだって信じられない。
わたしだって信じられないのに。
本当のことを、聞かせていいのかさえわからない。


初恋のインパクトは大きな影を落とした。
信じられなくなったのは たしかだ。
人をすきになることなんて
わたしにできるのか。

人を愛するなんて高尚なこと、自信がない。
もうできるわけがない、この生で。この人生で。

だけど信じてほしい。
信じてほしいと叫ぶ。
わたしの 好き を、信じてほしい。
信じさせてほしい。


ああこの辺はちょっと、記憶が薄い。



◆◆


彼女とはこれで最後。
今は伊豆にいるのだそうだ。

その後の生活が 時々 耳に入っては、
幸せなことや 大変だったことを 聞いている。

遠く遠く遠く離れた場所で。近寄れないところで。


いつも姿を探していた。
言葉を持てないまま。

だけどここ数年は 探さなかった。
今なら、たぶん言えるのだとおもう。
自分の人を想う心を信じていいとおもえている。

話していい時がきたとすれば、もうそうなら。


本当の気持ちを。ごめんなさいを。