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中小企業診断士 森健太郎シリーズ⑥ハードボイルドソフトウェア(前編)

はじめに

この記事は中小企業診断士一次試験合格のため、試験範囲の論点を記憶する目的で執筆した記事です。私は受験前ですので中小企業診断士の資格は取得しておりませんし、登場する人物および会社はすべてフィクションです。
中小企業診断士の有資格者の方や専門分野の知見をお持ちの方がご覧になられていたら、内容の齟齬や間違った理解をしている箇所についてご指摘、ご指南いただけると幸いです。
試験後に時間があれば記事にしたいと思いますが、私は認知特性タイプが言語優位(言語映像型)で文章の読み書きによる記憶や理解が得意としています。ストーリー法とプロテジェ効果を利用した学習の一環として記事を執筆しております。
ちなみに今回の記事は下の動画で紹介されていた事例を参考にしております。



インターフェイス

株式会社SFCの代表取締役で中小企業診断士の斉藤幸次との待ち合わせは、森の事務所のすぐ近くで斉藤が経営している純喫茶ワトソンだった。

新緑が萌える季節の朝は清々しく、モーニングタイムの準備をしている厨房の音さえも心地よく感じた。森にとっての問題は、集合時間が6:30だということだった。

森が純喫茶ワトソンのドアを開けると、パートタイムの従業員がせかせかと開店準備に取り掛かっていた。手前の席に座っていた斉藤がよく通る声であ挨拶をする。

「おはようございます!朝早くに来ていただいてすみませんね!」

斉藤は太陽のような笑顔で声をかける。森はその眩しさに思わず目を細めた。森はTシャツにジャケットを羽織っているだけで髪には寝ぐせがついたままだ。辛うじて最低限の仕事の道具が入ったバッグだけは持ってきたという状態だった。

「本当ですよ。私も朝は強い方ですけど、リズムがあるのでね。」

「太陽のリズムに合わせて活動するのは、パフォーマンスを上げるのに最適ですよ。で、早速メールでご相談した案件の話なんですが…。あ、ちょっとコーヒーをお持ちしますね。朝の淹れたてのコーヒーは最高ですよ。」

「太陽じゃなくてあんたのリズムの間違いだろ」と「朝の淹れたてのコーヒーが最高なのは知ってますよ」というコメントは伏せた。森は斉藤の会社のコンサルティングを担当してから、お店のブレンド豆を分けてもらっていた。斉藤がコーヒーを運んできた。たしかに豆は同じなのに自宅で入れるコーヒーよりも香りがさわやかな気がした。

「それで、いかがでしょう?この案件、引き受けてくださいます?」

森は激しくむせて、コーヒーをこぼすところだった。

「銃弾のように単刀直入ですね。一応、話だけは聞きに行こうかと思ってました。斉藤さんからのご依頼ですし。しかし、いくつか疑問があります。私に依頼が回ってきた経緯です。なんでわざわざ私に案件を回すんです?斉藤さんが担当すればいいじゃないですか。中小企業診断士なんだし。」

「それがですね…。知識はもちろんあるんのですが、製造畑で育ったもので旅館経営とかDXは自信がないんですよ…。それに、ちょっと場所が遠いのでうちの店舗とのシナジーも生まれなそうだったので…。」

斉藤は少し悪びれた様子で答えた。

「まぁ、斉藤さんの事情はわからなくもないです。もう一つ、この旅館は県のDX支援補助金で既に設備などを導入してるんですよね?なぜ県の担当に問い合わせないんです?」

「理由は制度のアドバイザー派遣やフォローの期間が終わってしまったことなんですが…。知り合いの県の担当者の話では、導入自体はうまくいったそうなのですが使いこなせていないということなんです。」

「使いこなせていない?使いこなせていないものを導入してうまくいったなんてことがありますか?それは導入されているとは言えませんね。」

森はコーヒーを飲む手を止めて声を荒げた。

「まぁクライアントあるあるですが、うまくいっていると見栄を張って現状を隠している節があるんです…。森先生はそういうのお得意じゃないですか…。そのクライアントにガツンと指導するのが…。」

「私は中小企業診断士です。喧嘩番長みたいな言い方はよしてくださいよ。新しい事業を作ったり立て直したりするのが私の仕事です。」

「それに、図解で説明されるのも得意じゃないですか。」

「えぇ、まぁ。」

「若い方も年配の方も接し方がうまいですよね。」

「そうかも知れません。」

「温泉と風呂上りのビールもお好きでしたよね?」

「それは否めません。」

森は事務所に戻り、件の温泉旅館に訪問のアポイントを取った。


マスカレード

斉藤からの案件の概要を森は整理した。

宮城県の遠刈田温泉にある老舗旅館かの屋は、3年前に経営者の持病が悪化したことをきっかけに、東京の商社に勤務していた27歳の息子が跡継ぎとなるべく実家に戻り旅館の運営に参画した。

コロナ禍での大打撃をなんとか乗り越え、さらなる安定経営を図るべく2年前に県のDX支援補助金を申請し採択された。DXを主導したのは東京から帰った息子だが、肝心の従業員に使い方が一切浸透しなかった。跡継ぎ息子は「俺が従業員に指導する」と息巻いたらしいが、それもうまくいかず、見かねた女将さん(跡継ぎの母親)が斉藤に助け舟を求めた。

遠刈田温泉は仙台市内から車で1時間ほどの場所にある温泉地で、高速道路を使えば他県からもアクセスしやすい。蔵王山の山々の自然が美しく、温泉街は長閑な雰囲気だった。

森は旅館の駐車場に車を止め、旅館に入り呼び鈴を鳴らした。
着物姿の女性が丁寧に出迎えてくれた。年齢は60歳くらいだろうか。この方が女将さんかも知れない。森が名乗ると「お待ちしておりました。」と緊張した面持ちで奥の座敷に案内された。

温泉旅館にありそうな湯呑に入った緑茶とお菓子を食べながら待っていると、先ほどの女性と半纏姿の若い男性が襖を開けた。

「わざわざ遠いところをお越しいただきありがとうございます。かの屋4代目の岡野流星と申します。」と若い男性はきびきびとした動作であいさつをした。髪はジェルでしっかりとセットされ、シャツにも清潔感がある。ふざけたドラ息子を想像していたが違っていた。しっかりと跡継ぎとなるべく所作を学んでいるようだ。

「女将の岡野貴子でございます。今回は無理なご相談に応じていただきありがとうございます。」女将も深々と頭を下げた。こちらも老舗旅館の女将らしい、愛嬌と誠実さが感じられた。

「株式会社シックスマンコンサルティングの森と申します。初めてこのあたりに来ましたが、随分と賑やかな温泉地ですね。」

「ありがとうございます。昨今では、円安の影響もあり海外からのお客様が多くいらしていただいております。当旅館も英語や中国語の案内やヴィーガンやハラールなどのメニュー開発にも取り組んでいるところです。」

流星は目を輝かせながら、しっかりとした口調で答えた。森には何か問題があるようには見えなかった。

「そうでしたか。では、お客様は多くいらっしゃっているんですね。何よりです。そうなると、何が問題になっておいでですか?」

森が極力丁寧に質問すると、女将の貴子がもじもじしながら答えた。

「お恥ずかしい話ですが、数年前に導入したDXの使い方が私を含めてほとんどの従業員が分かっていないという状態でして…。この子はある程度のやり方を知っているようなんですが…。」

「女将さん、館内でこの子なんて呼ばないでくださいよ。それにDXは必要なことなんですから根気よく私が指導していきますよ。先生、そういうことですので、さほど深刻な状況ではありませんのでご心配には及びません。」

たしかに貴子と流星では認識の違いがあるように見受けられた。

「県の方と何回か面談をされて事情をお話いただいているかと思いますが、もう一度理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?なぜDXを導入しようとお考えになったのか。」

「今や老舗旅館という看板だけでは生き残ることは難しくなっています。原材料費の高騰などサービス業を取り巻く環境は厳しさを増す一方です。それらをなんとか打開するためにDXを推進しようと考えたのです。」

流星はハキハキと質問に答えたが、森は煮えきらない表情のままだった。

「私の質問の仕方が悪くて申し訳ありません。DXで何をどう改善しようとお考えになったのですか?」

「ですから、昨今の景況から勘案してDXやIoTの導入は必須と考えております。具体的には、今までノートや台帳などの紙に頼っていた情報をデジタル化して業務の効率化を図ろうと考えております。」

流星は端切れよく答えたが、やはり森は問題に靄がかかったような印象を受けた。

「そういうことでしたか。では、何のためにデジタル化を?」

「それは…。紙では資材にお金がかかりますし、デジタルにした方が見やすいからです。」

「ノートや台帳は毎月かなりの量を使うのですか?高くても一冊1000円以下ではないかと思うのですが、その経費を削ることが目標の一つですか?手書きの文字が見づらいことで何か問題があったのですか?」

「先生、何が仰りたいのかが分かりかねるのですが…。」

流星は怪訝な顔つきになっていた。森の質問にうんざりしている様子も見られる。

「大変失礼しました。私がしつこく質問した理由はDXの目的を確かめることです。流星さん、私にはDXを導入するためにDXを導入しているように見えます。これを手段の目的化と言ったりします。」

「手段の目的化…。」

「そうです。4代目の思いやお考えが間違っているわけではありません。従業員に機器の使い方が浸透しないのは、使い方が分からないのではなく、何に使うのかが分からないからです。自動車の運転だってかなり難易度が高い操作ですが、高校生だって老人だってほとんどの人が出来ます。それは自動車を何に使うか分かっているからです。」

貴子が目をらんらんとさせて話す。

「そうなんです!何に使うのか分からないんです!」

「流星さん、女将さん。ご迷惑でなければ私から従業員の方に講習を行いたいのですがいかがでしょうか?お仕事もあるでしょうから、一度に全員は難しいと思いますが、各セクションの代表者を集めて目的と使い方を説明しよと考えております。」

先ほどまで流星は苦虫を嚙み潰したような顔をしていたが、森の講習の申し出を受けることにした。


デューデリジェンス

かの屋への最初の訪問から10日後、森は再びかの屋を訪れた。
朝食会場兼宴会場の広間に10名ほどの従業員と女将の貴子、4代目の流星、3代目の信一が集まっていた。流星の父親である信一は腰のヘルニアが悪化して立ち仕事は難しいらしく、椅子に座っていた。

森はPCをセッティングし、プロジェクターにスライドを映し出した。研修などで使う自己紹介用のスライドだ。

「はじめまして。中小企業診断士で株式会社シックスマンコンサルティングの森と申します。今日はDXについての講習ということですが、さほど難しい内容ではありませんのでリラックスして聞いていてください。こちらから
皆さんに質問をしながら進めていきますが、学校の授業と違って正解を求めているわけではありません。皆さん自身がどう考えるかを答えていただければ結構です。」

集まった従業員は40代以上の男女がほとんどだった。皆、何が始まるのかと不安げな表情を浮かべている。

「早速ですが皆さんに質問です。この中で携帯電話もスマートフォンも持っていない方はいらっしゃいますか?」

従業員たちは黙って首を横に振る。

「もちろん皆さん通信機器をお持ちですよね。皆さんは普段スマホでどんなことをしていますか?」

森は最前列に座っている従業員を順番に一人ずつ指していった。通話、メール、ライン、ゲーム、SNS、地図、写真などテンポよく答えていった。

「そうですね。これだけいろんな機能がついたスマートフォンを皆さんは使いこなしているんです。では30年前はどうでしたか?スマートフォンがない時代は不便でしたか?」

森は手前に座っていた年配の女性に話かけ、「お若いので30年前なんてお生まれになっていたか分かりませんけど、いかがです?」と冗談を飛ばすと会場は笑に包まれた。

「30年前は携帯電話すらありませんでしたけど、特に不便は感じなかったと思います。でも、スマホを使い始めるとそれがない生活は考えられません。」

「ありがとうございます。仰る通り、特に不便は感じないのに一度使い始めるととても便利なのがスマートフォンです。一体何が便利になったかというと情報伝達です。IT革命なんていう言葉を聞いたことがあると思いますが、ITとはInformation Technologyの略です。似たような言葉でICTというのもありますが、これはInformation and Communication Technologyの略です。スマホやパソコンによってインターネットを介して情報を取得したり発信する出来るようになったことが革命的だったんです。そして、かの屋はスマホを持つ前の人と同じ状況にあります。」

従業員は頷いて聞いていたが、まだどこか懐疑的な表情だった。

「つまり、使ってみないことにはその利便性は分からないし、使ってみれば
意外と簡単だってことです。ということで、まずは講習のタイトルであるDXについて説明していきます。」

森はプロジェクターのスライドを送った。

【企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。】

2018年 経済産業省 デジタルトランスフォーメーションのガイドライン


「これは経済産業省が発表したDXの定義です。データとデジタル技術を活用して…とありますね。つまり、デジタル化することはDXではないんです。例えば、手紙がLINEに置き換わったことはデジタル化です。これはデジタライゼーションと言います。」

森の講習を聞いていた流星は、自分の足りなかった視点に気づき始めていた。

「先生、一つ前のお話の内容になるのですが、使ってみないと利便性が分からないのに、なぜ私たちはスマホやPCを使うのでしょうか?」

「後ほどその話をしようと思っていましたが、いいでしょう。それは私たちが新しいものが好きだからです。正確には新しいものを持っているという優越感や未来に起こる期待からくる高揚感からです。4代目もスマホを買い換えた時やPCや車を買って人に褒められたりすると嬉しいし、何が起こるかワクワクしますよね?」

「たしかにそうです。DXにはそれが無いから浸透しないということでしょうか?」

流星はとても素直でまっすぐだった。知ったかぶりや経営者としての体裁を考えることはすでになくなっていた。

「その通りです。DXを使って変わった将来の姿を想像出来ないことが要因ではないかと考えられます。」

「将来の姿…。DXが出来れば売上も上がり、経営は上向くことは想像できる気がするのですが…。」

森は小さく溜息をついた。

「売上が上がり、経営が上向いたら何が起こると想像できるのですか?」

「それは…。設備を新しくしたり、お給料を上げたりといろんな投資が可能になると思います。」

「ここにいる皆さんはそれがまだ想像できていないようですよ。」

森は従業員に目をやり、話をつづけた。

「4代目のご質問については、皆さんにも話を聞きながら答えを出していきたいと思いますが、DXでどのような変化が起こるかを一言で表すことは難しいです。」

会場はざわめいた。便利なものなのにどのような変化が起きるか分からないという状況が理解できなかった。

「スマートフォンの使い方が人によって異なるのと同じように、どんな変化をもたらしたいかによって方法が無数に存在するからです。先ほど4代目は売上を上げて、経営を上向かせると仰っていましたが、実際にはこちらの旅館はDXをフル活用していないのに、宿泊客数も売上も右肩上がりで増えています。コロナ禍やインバウンドなどの環境の変化も関係しているかと思いますが。」

たしかにそうだ。とその場にいた全員が頷いた。特に長年旅館に務め、接客対応をしている従業員たちは宿泊客の質と量の違いを日々体感している。

「いま映しているのは、過去3年間の3月と4月の宿泊客数と売上の比較です。毎年10%以上の上昇率ですね。これだけを見ればDXをしなくても経営は上向きになるでしょう。次に、3月と4月の宿泊客の名簿を五十音順に並べたものを見てください。何か気になるところはありませんか?」

従業員たちは目を凝らして宿泊客のリストを見た。自分が接客したお客様のことはよく覚えている。

「吉田様が今年はいらっしゃってない…。」

手前に座っていた40歳くらいの仲居がつぶやいた。

「吉田さん…。そうですね。今年はいらっしゃっていないですね。吉田さんがどうかしましたか?」

「吉田様は2021年にお泊りになられた時に私が担当したのですが、蔵王の風景がとても好きで、奥様と娘さんと毎年来たいと仰られていたものですから…。」

仲居は自信なさげに答えた。

「なぜでしょうね?皆さんの場所からこのリストの違いを見つけるのは難しかったと思います。私が気づいたのは3年連続で同じ時期に宿泊しているお客様が10組ほどいらっしゃるということです。」

従業員たちはハッとした。

「パレートの法則というのをご存知でしょうか。20%の顧客が80%の利益を生み出すという法則です。法則と言っても科学的な根拠はないのですが、コアなファンが大きな売上を作り出すというのは何となくイメージがつきますよね。皆さんの普段のサービスが悪いからリピーターが少ないわけではありません。が、経済や国際情勢の先行きが読みづらい昨今にあっては、新規のお客様の獲得はもちろん、既存顧客の満足度を上げることが大切になってくると考えられます。」

その時、若い従業員の女性が手を上げて質問をした。

「お客様がまた来ていただくためにはどうしたら良いでのでしょうか!?」

「例えば、受診する病院を毎回変えるという人はおそらく少数派です。病院では毎日たくさんの患者さんが来院しますが、カルテやお薬手帳などで治療の履歴や処方した薬の情報を残していますよね。患者の情報を知ってくれているというのは技術よりも安心感があって、また同じ病院で診てもらいたいと思いませんか?花井さん。」

女性は驚いて目を丸くした。

「私は、皆さんほどではないですが対面でお話した方の顔と名前は忘れない質でして。数年前に花井さんの大学で特別講義を担当させていただいた時も積極的に質問されていましたね。こうやって名前や情報を知ってもらうことってとても嬉しいことでしょ?おそらく花井さんは例え話で納得はしないでしょうけど。学生の時もそうでしたから。」

花井は少し恥ずかし気に答えた。

「仰る通りです。また生意気な質問をしてしまってすみません…。」

「結構ですよ。打ち返すのは得意ですから。話を元に戻します。現状でかの屋は宿泊客、売上共に上向きです。しかし、繁盛している医院も、驚異的な売上をたたき出す営業マンも共通しているのは既存顧客のフォローが手厚いことです。今後の安定した顧客確保や繁忙期以外の売上獲得を目指すのであれば顧客の情報をしっかり共有することが必要ではないかと考えます。そのために、DXを使ってお客様の声を現場に早く正確に伝達することが必要ではないかと考えます。」


ソフトウェア

「最初に、顧客の情報を誰がどのように知るのかをお話したいと思います。」

スライドを三か年の顧客リストに戻した。

「花井さん。このリストの中で対応したことのあるお客様は何割くらいいらっっしゃいますか?」

「1割くらいでしょうか。」

花井が自信なさげに答える。

「戸田さんはいかがです?寺島さんは?」

それぞれ答えは1~2割程度と話した。

「現在、かの屋でメインで使っているのは手書きの顧客台帳と伺いました。お客様の細かい情報は担当者が暇なときにメモ書き程度に書き残しているだけですよね。つまり、多くの従業員は8~9割のお客様の情報を知らないまま接客に当たっているということです。」

「大変失礼ながら、それを全従業員が知る事でどのような変化があるのでしょうか?私は長年フロントで受け付けを仰せつかっておりますが、さほど大きなクレームを受けるような不手際はここ何十年もお目にかかっておりません。」

フロントのマネージャーをしているという塩野という60歳くらいの男性従業員が質問してきた。

「長きにわたって素晴らしい接客応対をされてきたんですね。早くから顧客情報のデータ化をしている宿泊施設でこんな事例がありました。ある老夫婦が宿泊しました。従業員は以前に宿泊した履歴やお客様と立ち話を記録したデータを確認していました。お食事の時にチーズケーキをお出ししました。「またご利用いただきありがとうございます。41回目の結婚記念日おめでとうございます」というメッセージカードをつけて。それ以来、老夫婦は毎年その時期に来るようになったそうです。」

塩野も他の従業員も「あぁ…。」と声をもらした。今のかの屋では、担当者がが変わってしまったら絶対にできないサービスであった。

「天皇陛下や有名人のように花束でもてなす必要はないんです。知っていれば感謝の気持ちを伝えることが出来る。それだけ十分なんです。」

塩野はよくわかりましたと腰を下ろした。森は麦茶をぐっと飲み、講義をつづけた。

「では、DX、その中でも情報システムを中心にお話をしていきます。主にパソコンの仕組みや使い方についてです。これを知っておけば仕事以外でも役立つ部分があるかと思います。」

森は自分のノートパソコンを持ち上げた。

「これはノートパソコンですが、パソコンには外側と内側があります。本体の機械のことをハードウエアと言います。その反対の中身のことをソフトウエアと呼びます。ソフトと言っても柔らかいわけではないです。形のない、情報 処理の手順や命令などのことを総称してソフトウエアと言います。自動車でも見た目はほとんど同じでも2駆と4駆では性能が違いますよね。同じように機械の中でどのような事が起こっているかがそれぞれ異なるんです。」

森はPCをシャットダウンした。

「ソフトウエアの中で基本となるのが、オペレーションシステム(OS)です。有名なものにMicrosoft社のWindowsやスマートフォン専用のiOSやAndroidがあります。OSはデータ管理や入出力の管理など基本的なパソコンの動作を司っています。Windows7とか10なんているバージョンがいくつかありますが、パソコンが進化することはソフトウェアが進化することで、より早く多くの情報を記録保存できるようになるということなんです。」

従業員たちはまだポカンとした表情だった。

「そうなりますよね…。イメージしやすいように私のパソコンを立ち上げてみます。」

森はPCの起動させ、その画面を見せた。

「パソコンが起動中です。テレビと違ってすぐに使えるというわけではありません。いまはOSに先駆けてBIOSというプログラムがPCを使える状態にするために頑張っているところです。この処理が終わるとOSにバトンタッチして、キーボードやタッチパッドが使えるようになります。次に応用ソフトウエアの話です。パソコンを使う目的は様々ありますが、文書作成や表計算などのアプリケーションのソフトウエアを共通応用ソフトウェアと言います。共通応用ソフトウェアにはwordとかExcelなんかが有名です。今日は先ほどの顧客の情報管理に役立つExcelの使い方を少し紹介します。」

そういうと、森はExcelを起動して画面を表示した。



「画面をご覧いただくとマスが並んでいるのが見えますか?これをセルと言います。縦軸と横軸の二次元の表を並べ替えたり、抜き出したりしてデータを整理して情報を共有することが出来ます。かなりいろんなことが出来るので、一部しかご紹介できませんが、枠の中の文字や数字などのデータと関数と言われる式を入れると合計値や平均値を自動で計算することが出来ます。」


女将の貴子が不安げな表情で恐る恐る手を上げた。

「あの…ソフトウェアのお話までは何となく分かるのですが、この共通応用ソフトウェアというものの使い方を私たちが全部覚えなくてはいけないのでしょうか?英語ばっかりでとても覚えられる自信がなくて…。」

「ご安心ください。これを全部覚える必要はありませんよ。最初に基になる表を作っておけば、あとはルールに従って入力すれば表は勝手に出来上がります。顧客管理にこの応用ソフトウエアで活用する場合には、宿泊者名、人数、部屋、宿泊日、泊数、コースなどを列に入力しておけば、どのお客様がいつどんな状況でかの屋をご利用になったかを一目で分かります。」

奥の方の席で「あの…。」と自信が無さげな様子で手を上げる男性がいた。

「調理担当の武田といいます。先月、料理長と副料理長がギックリ腰になってしまい、仕入の発注やお客様ごとのお料理の変更がとても大変でした…。そういうことは、ソフトウェアを使って改善できるものでしょうか…?」

「もちろんです。現在の発注の仕組みを存じ上げないので、滅多なことはいえませんが、料理の材料仕入は宿泊状況と連動します。おそらく、料理長は女将さんから日々の予約状況と例年の宿泊数と経験測で材料を発注されているのだと思います。仕入の品目、発注日、発注単価などをソフトウェアで管理出来れば、食材のロスも減らす事が出来ると思います。」

武田の目に小さな光が宿る。

「私たち料理人は、地元の食材を使ったおいしいお食事をお出しできるよに仕事に当たっています。それでも、お口に合わない料理やアレルギーなどが原因で残されお客様も多くいらっしゃいます。そういうロスを防ぐためにはどのようにすれば良いのでしょうか?」

「簡単です。お客様に好き嫌いを聞けばいいんです。」

「それは、受付で聞けは良いのでしょうか?」

森は軽く咳払いをして続けた。

「それをどのように解決するかを考えるのがDXです。先ほどのDXの定義を思い出してみてください。顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する です。例えば、お部屋にご案内してから、タブレットで好みや体調やアレルギーのある食材のリストを選択していただければ、夕食時には別の食材に変更することが出来ますよね?もちろん、その地域でしか味わうことの出来ない食事に出会うことも旅の楽しみですから、お客様の好きなものだけをお出しするわけにはいきませんけどね。」

武田は満足した表情で席に腰をおろした。

「話を続けますよ。先ほど応用ソフトウェアの話をしましたが、ソフトウェアの中にオープンソースソフトウェアと言うものがあります。蓋を開けっ放しのソースという意味ではないですよ。このオープンソースソフトウェアはソースコードというプログラムがインターネット上に公開されていて、誰でも改良、再配布が出来るプログラムです。自社が使いやすいソフトウェアを作るので無償または安価で利用できる点が特徴です。オープンソースソフトウェアには以下のような要件があります。」


「オープンソースソフトウェアの代表的なライセンスに、BSD License(Berkeley Software Distribution license)、GNU General Public Licenseがあるります。また、オープンソースソフトウェアに類似したソフトウェアライセンスにMIT Licensというものもあります。後ほど詳しく説明しますが、BSD LicenseはWEBサーバーや、ファイアーウォールなどのセキュリティ、工場の自働化などのOSなどに使われています。ただ、自由に改造できるため、基本的に無保証でエラーなどがあっても自己責任となります。」

「これは代表的なオープンソースソフトウェアですが、FirefoxやWordPressなどは見たことがあると思います。このように、使う人の用途と情報の取り扱い方に合わせてソフトウェアを構築していくこともDXの一つと言えるかも知れません。」

森は話を続ける。講義の時のモードに入っていた。

「オープンソースソフトウエアと似たような概念のソフトウェアでシェアウェアというものがあります。シェアウェアは名前の通り、共有して使えるソフトウェアです。インターネット上でダウンロードしますが、最初の30に日間は無料で30日以降は月額の使用料が発生するというようなソフトウェアですね。例えばWinRARなどの解凍ソフトや、DropBox、Evernoteなどが代表的なシェアウェアです。有料のソフトウェアよりも高性能なものも数多くありますが、アプリストアやアップルストアからダウンロードするものに比べてウィルスに感染しやすいというリスクもあります。完全に無料のものをフリーウェアと呼びます。」

従業員たちは聞きなれた言葉が出てきて、ソフトウェアの可能性をイメージすることができた。

「その他のソフトウェアの種類としてはデバイスドライバファームウェアなどがあります。デバイスドライバはマウスやキーボードを動かすためのソフトウェアで、カードリーダーなどにCD-ROMが付属しているものや、インターネット上でインストールするものがあります。マウスなどはOSに最初から組み込まれているものがほとんどですね。ファームウェアは一番最初におお見せしたBIOSのことです。ハードウェアとソフトウェアの中間的な役割を担うものです。」


「少し小難しい言葉もありましたが、ソフトウェアは皆さんが普段使っているスマホやPCに必ず入っているものです。それぞれの目的や行動ごとに違うソフトウェアが働いてくれているんですね。次にファイルについて説明します。ファイルと聞くと皆さんこんなファイルを思い浮かべませんか?」

従業員たちが顧客名簿や清掃の点検票などでいつも使っているものだった。

「このファイルには紙に書かれた様々な情報が、カテゴリー別に保管されていますよね。コンピュータでは、内部および外部の記憶装置などに記録されたデー タのまとまりのことをファイルと呼びます。OSはデータをファイル単位で取り扱っています。ファイルはテキストファイルバイナリファイルという大きく2つに分類されます。テキストファイルはその名の通り、文字コードだけで体系化されているので、異なるOSでも読み込む事が出来ます。WindowsからMacのPCに送っても見られるということです。代表的なテキストファイルにCSVファイルやHTMLファイル、XMLファイルがあります。何となく見たことありますよね。例としてCSVファイルの使い方を紹介します。」


「このようにCSVファイルの形式で保存して、先ほど説明した表計算の応用ソフトウェアで読み込むことが出来ます。」


「CSVはComma Separated Valuesの略で、上の図のように元々はカンマで区切られています。CSVのままだと区切りがあるだけですが、表計算ソフトウェア読み込むことで枠線や二次元の行列で表現することが出来るんです。」

「はい!」と花井が手を上げた。

「CSVはすべてのソフトウェアで読み込むことが出来るんですか?」

「それがそうとは限らない。ソフトウェアで扱えるファイルの種類は限定されています。このファイルの形式を区別するために拡張子という文字でフ ァイルの形式が分かるようになっています。」

「例えば、この図のGENKOというファイルは右端に.txtとあります。これはテキストファイルのことです。下のパソコンというファイルは.jpgとありますね。これはJPEGという静止画像のデータになります。この拡張子やデータ形式を見ればそれがどんなデータかが分かります。」

「MP3とかGIFとかはよく使いますし、他のマルチメディアも名前は見たことがありますね!」

花井は知っている言葉を見て全体像を理解することができた。

「テキストと動画の2つの特性を持つデータ形式というのもあります。MPEG-7というのですが、映像データのあるシーンに映像データの特徴を記述したテキストファイ ルを映像に付加するすること出来ます。どういうことかと言うとインターネット上に流れているサッカーの動画に対して 試合日時、試合会場、選手名、シュート数などで検索することで必要な情報 を的確に得ることができるんです。おもしろいでしょ。」

「たしかにおもしろいですが…そんなに多くの情報が入ったデータなら重くなってしまうんじゃないですか?」

年配の従業員たちは花井の重くなるという表現が何を指すのか分からずぽかんとしていた。

「花井さんと4代目以外はデータのイメージがついていないようなので、少しだけ詳しく説明します。先ほどファイルの話をしましたが、ファイルに挟む書類が多くなるほどファイルは重くなります。同じようにパソコンのデータも情報量が多くなれば重くなります。もちろんパソコンそのものの重量が変わるわけではありません。軽いものよりも重いものは持ち運ぶのが大変だし、保管場所だって確保しなければなりません。パソコンでも同じことが起こっています。紙のファイルとパソコンが違うところはデータを圧縮できることです。圧縮とは一定の手順に従いデータの意味を保ったまま、容量を削減する技術です。それを実現するソフトウェアを圧縮ソフトウェアとよぶ。圧縮されたデータ を元の状態に戻すことを伸長(解凍)といい、それぞれの形式にあった解凍ソフト ウェアが必要になってきます。容量の大きいデータをそのままメールで運ぶのは大変なので、圧縮データにして軽く、小さくして送るんです。」

データベース

「横文字が多くて難しく感じますけど、普段私たちがやっている情報を伝達したり保管したりすることをコンピュータの中でやっているだけなんですね。」

女将の貴子は感心して思わず声を出した。

「矢継ぎ早にお話をして申し訳ないですが、次はデータベースの話をします。かの屋の皆さんは気になったことを端的に素早く質問して頂けてこちらも安心してお話できます。自分が使うつもりで積極的に発言してください。では、データベースについてですが、データベースとはデータの蓄積や検索を容易にするための仕組みです。データベースを作成すると、データを集中管理し、さまざまな目的に応じてデータを取り出して利用する ことができます。簡単に表した図がありますのでこちらをご覧ください。」


プロジェクターに移された図を見た従業員たちは一様に狐に化かされたような表情を浮かべた。

「データベースには、データの格納方法によっ…」

「先生、ちょっと待ってください。今出ている図は応用ソフトウェアのセルの図ではないんですか?」

流星が森の話を遮って質問し、従業員もざわめきだした。

「やっぱり気づきましたか。素晴らしい反応です。しっかり内容を理解している証拠ですね、4代目。これはセルではありません。」

「セルとデータベースは似ていますが、まったくの別物です。セルの説明をした際に数式や表の作り方についてお話しましたよね。応用ソフトウェアは表を作ることが目的であるのに対し、データベースはその名の通り、データの基地です。基地から取り出したデータを応用ソフトウェアが処理します。セルや表がお料理だとしたら、データベースは冷蔵庫やパントリーのようなものです。そして、冷蔵庫の中身は上記の図のような形で保存されています。図の形式をリレーショナルデータベースと言います。」

「データベースでは表の行をレコード、表の列をフィールドと呼びます。っこのフィールドとレコードをどのような配置になっているかが、データベースの特徴の違いです。冷蔵庫の並べ方や仕切り方の違いで内部の熱効率や取り出しやすさが変わるようなイメージです。」



「例を羅列しましたが、このようにデータベースには様々な種類と特徴があるんですね。しかし、データベースと応用ソフトウェアだけで機能するわけではありません。DBMS(DataBaseManagementSystem)という仲介役が必要です。データ形式のお話をしましたが、Excel以外にも音楽や動画、写真などたくさんのデータ形式があります。形式によって、それらを使うためのソフトウェアが異なります。先ほどデータベースを冷蔵庫に例えましたが、料理に使う様々が材料がすべて冷蔵庫に入っています。料理を作る時に使う材料や量をDBMSが管理してアプリケーションに渡します。同時に複数の人がデータを取り出したり編集したりできるのはDBMSがあるからです。DBMSはデータベースとアプリケーションの間にあるのでミドルウェアと呼ばれているんです。」


「DBMSの立場はよくわかったのですが、管理というのはどんな事をしているのでしょうか?厨房の料理長のようなものですか?」

貴子が頭に疑問符を浮かべている。システムの名称や役割を擬人化して覚えようとしている。

「そうですね。ざっくり言えば料理長です。DBMSの機能は主にこの3つです。」


「え~っと…。この定義とか規定というのは料理長っぽくないですが、どういう機能なんでしょう…?」

今度は板前の武田が困惑した様子で質問をした。

「では、データベースの定義と規定についてお話します。データベースはDBMSを通じてアプリケーションにデータを送ります。先ほどからデータベースを冷蔵庫に例えてお話していますが、冷蔵庫から効率よく材料を取り出すにはどうしたら良いですか?武田さん。」

「それは…。どこに何を置くかを決めておくことです。」

武田の答えを聞いて森は笑顔になった。冷蔵庫の例えがしっかりハマっている。

「武田さん、その通りです。厨房の冷蔵庫ではどこに何を置くかが決まっていますし、仕込みの順番によって古いものを兄貴と呼んだり、ラベルをつけたりしますよね。先ほどデータベースの種類の話をしましたが、データベースの種類はデータのしまい方の違いなんです。」

「データベースを使用する場合、3層スキーマというプロセスでデータベースとアプリケーションをつないでいます。3層スキーマは外部スキーマ、概念スキーマ、内部スキーマという3段階に分かれていてます。」

「先生、冷蔵庫はチルドや冷凍などいくつかの部屋に分かれていますが、3層スキーマと言うのも、同じようなものでしょうか?」

「武田さん、実は若干それとはイメージが違います。先ほど、CSVファイルの説明をしましたが、CSVファイルは異なるアプリケーションで使えるようにするための元のファイルです。つまり、データというのは目に見えるものとそうでないものが存在するんです。外部スキーマはPCで見えているパソコンの表です。しかし、データベースの中では正規化されたデータと、データベースの形式によってさらに分類されたデータに分けられるんです。3層に分ける理由は、私たちが作った表のデータを整理して格納しやすくするためです。この作業をデータベースの定義と言います。」

データベース操作というのはどういう事でしょうか?」

武田が目を輝かせて質問する。料理しかして来なかった武田は異分野の知識を吸収できることが嬉しかった。

「名前の通り、データベースを操作することなのです。データベースを操作する時に、関係演算を使います。関係演算があることで射影、選択、結合というリレーショナルデータベースの操作が出来ます。」


「手書きの帳票や台帳から特定の名前や時期のものを抜き出したりするのは難しいですよね。すべてに目を通すなんて非効率ですし。データならある特定の情報に絞って表の情報を見やすくすることが出来ます。これもデータベースとDBMSがあるからなんです。ついでにデータ制御についてもお話します。」


「データ制御が必要な理由は、データを保管したり取り出したり、障害を回復させる必要があるからです。一つの冷蔵庫から材料を出し入れする時、同時に10人が作業をしたら大混雑になりますし、割れたり壊れたりするかも知れません。データベースではこのようなことが無いようにデータ制御をしています。上の図を見てください。これは金融機関で振り込みをする際の手順です。操作自体は金額を入れて振込を実行するだけですが、借主と貸主のシステムの中では①~④の作業が行われています。②借主の口座から残高を減らしたのに、④貸主口座に残高を加えなければ振替は出来ません。つまり、この4つは分けることが出来ない作業ですよね?これらをトランザクションと言います。口座から出金されたのに相手の口座に振り込まれていないという状態をシステムではデータの矛盾と言ったりするのですが、このデータの矛盾を防ぐことをトランザクション管理と言います。」

「この図はデータベース制御でロック方式という同時実行制御を表しています。2人が同時に作業を行った場合、2つの引き算を一つの在庫情報として記録しなくてはなりません。実際には同時に作業することは可能なのですが、データベースの中では一つのトランザクションをロック(使えない)状態にして他のトランザクションの処理をするという交通整理を行っているんです。」


「他にも時刻印アルゴリズムという制御もあるのですが、ざっくりと上の図のような感じです笑。」


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