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植野DatPiff日記22フューチャー

ここに書く中では、かなり売れているほうであろうFutureです。日本語の記事も多そうなので、今更自分が書くことは何もない気もしますが、いちおう「私的トラップ四天王」と銘打ったからには、最後の1人となってしまったので何か書くことにします。

これを機会にあまり聴いてなかった初期の作品も聴いてみました。

自分は、Futureを初めて聴いたのがCDで買った「DS2」 で、これはかなり衝撃でした。なんだこの退廃的で未来的なサウンドとヴォコーダーなヴォーカルの不思議なカッコいいマッチングは!?、みたいな感じです。 かなり中毒性が高いサウンドで、ジャケのアートワークもあいまって「これが現在のヒップホップかあー!」と興奮した覚えがあります。

その後にミックステープというものを知って、「56 Nights」を聴いて、こっちもかなりスゴくて「こんなクオリティの高いものをタダでダウンロードできるなんて!」と震えたのも覚えています。ある意味、スタジオアルバムの最高傑作とミックステープの最高傑作という、ピークから入ってしまったってやつです。

Futureの 特質は、スタジオアルバムだろうがミックステープだろうが、とにかく発表するもののクオリティがどれも異様に高いこと、そしていい意味で常に売れ線の要素があるってことです。他の三者の天然なキャッチーさと違って、最初からメロディックに歌う部分が強かった印象です。本人も、キャリア初期の頃から「ス タジアムで演る音楽を目指してる」とか言ってました。そして言った通り、「生きる伝説」になったわけです。

さて、Futureの記念すべき第一歩は、DJ Scream印の2010年のミックステープ「1000」です。他の作品が比較的どれも同じような感じと考えると、これだけ違います。トラップ具合もオートチューン具合もまだ薄くて、サウンドも少々ガチャガチャしてます。それでもFuture独特の感じは既にあるし、ラップもキャッチーさがあります。この時期でDJ Screamなんで、グッチメインっぽくもあります。「Good Look」がTashaのコーラスもかわいらしい、明るいポップないい曲だと思いました。

次の作品は11年の 「Streetz Calling」、今度はDJ Dramaとグッチ印が続きます。しかし内容は既にぐっとFuture寄りになっていて、1曲目からカッコいいシンセの「Made Myself A Boss」や2曲目の華々しくキャッチーなシンセの「Same Damn Time」、と続きます。もうオートチューンはかなりかかってきてて、トラップな感じも充分にあります。「Running Through A Check」は新しい世界の幕開けシンセがカッコいい曲です。ぶよぶよシンセの「Power of That P」もいいし、「Ball Forever」もかなりポップでカッコよくて、まさにメロディック・トラップ!って感じです。

後半も、ノリノリカッコいい「Never Be The Same」やエルム街の悪夢に出て来そうな怖童謡メロディの「Easter Pink」、優しさ感動系の「If You Know What It Took」とか、全体的に前作より格段にトラック、曲、歌うラップが良くなっています。これはかなりいい作品じゃないでしょうか。この段階で、こんなアルバムを出していたとは驚きです。聴いてよかった!

同じく11年に、再びDj Screamと「Cool DJ in the world !」が少々ウザいDJ Escoのプロデュースで「Dirty Sprite」が発売されます。これは、せっかく進んだものが少し戻った感じですかね。特に好きな曲もなかったです。

どこからともなく、ここからがFutureの歴史と言われているのが12年の「Astronaut Status」です。確かにイントロから続く最初の曲「Future Back」がカッコよくて「きたきたー!」って感じがあります。

全体的にいいですが、特に「Deeper Than The Ocean」が今までにない感じで、哀愁ギターから始まり、最後にはは熱いギターソロまであるエモいトラックでよかったです。

Futureのヴォーカルって、かなりダンスホールな瞬間が多くないですか?ひょっとして当然すぎるから誰も言わないのかなって思って、、、

最後の「No Matter What」がこれまたいい曲です!

そして2012年、メジャーデビュー「Pluto」です。これは、こうやって流れで聴くとひときわポップなアルバムです。そのせいかファンの中でも賛否両論あるみたいですが、自分は好きです。

オープニングからエレキギターのコードと語りで、そこからティンバランドっぽいトラックで、ゲストは今やすっかり悪者のR.Kellyです。少し前の売れ線といったとこでしょうか。

3曲目「Straight Up」は、ギターロックっぽいエレキの低音弦ミュート8分弾きでイントロからもうポップです。その後も始まった瞬間からポップな印象の曲ばかりで、やる気満々って感じです。Make Will Made-Itが手がけた「Neva End」と「Turn On The Light」もかなりいい曲いいです。

個人的には、Streetz Callingに入っていた「Same Dawn Time」が、更にカッコよくなってて一番お気に入りです。いいリフだー。

このPlutoの直後に、DJ Dramaプロデュースの「F.B.G. : The Movie」という24曲も入ったミックステープが出てます。ポップなPlutoの 反動かどうなのか分かりませんが、ハード目でアッパーなヒップホップトラックが多いです。「こういうのはいつでも作れるんだぜ、どうだ?」といった感じで しょうか。音質もいかにもミクステって感じですが、そうは言ってもさすがに濃い内容の作品で、ある種圧倒的でもあります。

ゴリゴリだけじゃなく、「Appeal」みたいなさびしげなR&B曲もあります。もろにPluto1曲目な「Big Rube」なんてのもあります。ということは、Plutoセッションの時に色々やってみた曲たちの余り物を集めた感じでしょうか。

そしてまた同年に「No Sleep」っていうミックステープが出てますが、これがまた23曲入った、更に寄せ集め感が強い内容になっていて、これはさすがに、よほどのファン向けって感じです。

2年後の14年、スタジオアルバム第2作目「Honest」が出ます。1曲目「Look Ahead」からもう、女性コーラスがカッコいい高揚感がある感じで、ワクワクします。PharrelとPusha Tがゲストの「Move That Dope」の不思議なシンセ音のトラックもカッコいいです。

「Honest」は、バスドラと共に鳴っているジャラジャラがついたアフリカン・パーカッションみたいな音と、後ろでずっとピキュンピキュンしているシンセの音がすごくおもしろいです。これだけでもう、勝った!って感じです。

「I Be U」は魅力的だがシンプルなシンセリフのループに変化をつけるドラムのプログラミングが素晴らしいです。ドラムの音だけでもう、勝った!って感じです。

「Special」は、アコースティックギターの哀愁トラップで、もたってついてくるようなシンセのアルペジオの音の感じがかなりいいです。それにしても、Futureの声は哀愁系が似合う、、、

「Benz Friendz」はなんとウェスタン・トラップ、最高です!これは、ついニヤけてしまうタイプのカッコよさ、驚きました!ゲストはAndre 3000。続く「Blood, Sweat, Tears」も、ウェスタンの匂いがしてしまう。2曲セットで最高です。

喋りを挟んでの「Side Effects」にも、ウェスタンの香りが!奇妙なスライドギターが意外にいい効果を出してて、しかも曲は最高にキャッチーです。これは、3曲セットで最高です。

「I'll Be Yours」も奇妙な音と不思議な感動がある、いい曲です。

以上のように、このアルバムはかなりの傑作だと思います。Futureが今までやってきたことをしっかりと全部やりながらも新しいこともやり、そしてすべて上回るという離れ業な内容。この時点でまさに最高傑作を打ち出した、と言えます。これ以上のものっていうのがちょっと思いつかないぐらいです。

普通に考えれば、キャリアの頂点だと誰もが思うんですが、ここからのFutureがすさまじいんです。

まず、同年の14年にミックステープ「Monster」をリリースします。あんなにすごいアルバムを作ったんだから少しは休めばいいのに、、、とか思ってると、この作品がまた傑作なんです。

全部で16曲、全編をみなぎるラップとトラックのエネルギーがまず並々ならぬ雰囲気です。Metro Boominも最高の仕事をしていますが、とにかくFutureのゴリゴリとラップをし倒す勢い、そして気迫の中から生まれるメロディ。おそらくリリックの内容もスゴいと思われます。一体何があったんだろう!?っていうぐらい、すべてが極限のような作品になっています。ひょっとしたら、これがFutureの最高傑作かもしれません。

DJ Escoの音声サインが少々うざいのが唯一の難ですが、最近はこれを取り外したバージョンがあるみたいで、それによって再評価みたいな動きもあるみたいです。何というマイナス要因!

とにかく曲が始まった途端から最後まで、ラップ、ラップ、ラップです。完全に気が狂っているかのようにも思えるドラッギーさがあります。どれもすごいんですが、特にと言えば「Radical」、「Monster」、「Fuck Up Some Commas」、「Throw Away」、「Codeine Crazy」です。

ラップをしまくっているんですが、Futureの ラップは技術とか速さとかじゃなく、歌も折り込んでいるスタイルなので、本人がのればのるほど変化が無限で言葉が分からなくても聴いてて飽きることがあり ません。ジャズのすごいインプロを聴いているような感じもあります。ここには最高の発想と速度と勢い、エネルギー、そして抑制、統制までもがある感じで す。本当にすごい!

そして次の年の15年にも、今度はZaytoven と組んでまたしても傑作アルバム「Beast Mode」を作ります。こっちはもっと抑制が効いてぐっと冷ややかな格調高い雰囲気が漂い、クールトラック目白押しです。

「Just Like Bruddas」、「Real Sisters」は流れるような鍵盤フレーズとビートが見事です。「No Basic」や「Peacoat」なんかはジャズっぽいような鍵盤と弦に緻密なビートが絡む素晴らしいトラックです。

このように、タイプや雰囲気が違う作品を立て続けに出して、どれもが傑作という状態のまま、なんと同年に次のミステリアスな傑作「56 Nights」を発表します。ものすごい密度の制作ペースです。

56 Nightsはとにかく、更に冷ややかなシンセに抜群のビートが絡み、絶好調ラップも絡むというすごい作品です。一切の淀みもなく、取り憑かれたような雰囲気があります。裸のランチの世界にいるような冒頭からの「Never Gon Lose」、そして「Purple Coming In」と非常にカッコいい流れです。

初めて聴いた時は、ビートのカッコ良さとトラックとラップの雰囲気にヤられました。今聴いても全く色褪せてません。自分は一番聴いたFutureの作品です。

狂気を帯びてくるような「No Compadre」から、一瞬視界が開けるような「March Madness」の流れなんかは、もう本当に凄まじいです。そして、アルバムの最後まで集中力が途切れることはありません。

この勢いのまま、なんと同じ年にスタジオアルバムが発表されます。「DS2」です。Dirty Sprite 2というわけです。冒頭からコデイン注いでる音で始まる、不穏もいいとこな雰囲気です。ジャケもアブナイ感じで、自分はこのCDからFuture入ったんで、相当にアブナイ奴イメージでした。

ここ数作は、私生活の女性関係のぐちゃぐちゃを赤裸々に書いたリリックでしたが、今回はその果ての薬漬けみたいな、かなり退廃的な内容みたいです。

とにかく終始、冷たい退廃的な近未来ムードが漂っていて、ラップの感じと声、サウンド、リズムが一体となってトラップで表現できる究極の種類の一つなんじゃないかな、と思います。とにかくクールです。そしてこの世界感が滲み出て支配されたような音楽には、感動すらあります、少なくとも自分には。

ここまで傑作を立て続けに作れば、もういいじゃん疲れたでしょ、と思うけど、まだまだ続くのです。これまた同じ年に、Drakeとのコラボアルバム「What A Time To Be Alive」が出ます。録音は短期間に集中してあっという間に録ったらしいですが、まあトラップ作品はそういうの多いんじゃないでしょうか。

乗りに乗ってる2人が組んだということで悪いものになるはずもなく、当然かなりクオリティの高い作品にはなっていますが、特に強い引っかかりがあるわけでもなく、でも聴いて損はない、みたいな感じです。少なくとも自分には。

長くて実りの多かった2015年がようやく開けると、今度は「Purple Reign」という、まあ絶対にPrinceの名盤をパロったアルバムが出ます。ここにきてさすがに、さすがに、内容的にはトーンダウンの感じはあります。ダウンというより少し力を抜きながら作ったようなムードがあります。ジャケも何だか手抜きっぽいです。しかしこの作品、結構くせ者で、気合い入ったテンションの高いFutureよりこういうやつのほうが好きかも、と思わせる魅力が潜んでいます。何度か聴いてると、これはかなり重要な作品じゃないか、と思えてきます。

まず、イントロから続いて始まる「All Night」が、今までにない奇妙なスカスカビートでおもしろいです。「Rum Up」も、ちょっとおもしろい感じの曲で好きです。ラストは、全然違うけどやっぱりPrinceの曲を意識してるような「Purple Reign」で終わり。なんだか不思議な後味が残ります。

しかし本当に、どうしてここまで止まらずに作り続けるのでしょうか?創作欲なのか、意地なのか、戦略なのか?いずれにせよ、常人には分からないし真似もできない領域です。この作品が少々トーンダウンしてるおかげで、ふとそういうことを考えてしまういい機会になりました。

何度も何度も入ってくるDJ Escoの音声サインがマジでうざくて、Spotifyにあるのはこれが入ってないバージョンで、おかげで作品の評価を上げ直したっていう人が結構いるぐらいです。

もはや「リリースしないと死んじゃう病」のように、同年に「Evol」が出ます。ペースも内容のクオリティの高さも異常事態になってきています。この作品は、テンションがぐっと緊張感を持って上がっています。「Photo Copied」とか、急くような緊張感でカッコいいです。

比較的穏やかで瞑想的だったPurple Reignの反動でしょうか、それとも色んなタイプの曲をたくさん作っていて、アルバムのコンセプトごとに選んでいってるんでしょうか、このパターンは以前にもありました。今回のほうが、それぞれの完成度も統一感も高い気がします。今回は、メロウやメロディの部分よりも、The Weekndが参加した「Low Life」以外は、ハードめなラップのほうに焦点が当たってます。どっちかしか興味ないファンには関係ないですが、Futureそのもののファンならば、何枚次々と出ようが、「次はどんなものが来るんだろう?」という楽しみがあります。

そしてまだ16年、これでもかと言わんばかりに更に「Project E.T.」が出ます。この作品は、半分ぐらいが、Drake、2 Chainz、Juicy J、Lil Uzi Vert、Young Thug、Rae Sremmurd、Rich Homie Quanらとのコラボであり、単独の曲よりコラボのほうが出来が良く、心なしか全体的に楽しそうです。おもしろい曲が多いので、こういうのもいいかもね、と素直に思えます。

ようやく次の年の17年、またもやすごいリリースです。一週間しか違わないので、ほぼ同時発売の「Future」と「HNDRXX」です。どちらも自身の名を冠したアルバムってことになります。

「Future」のほうは、今までの集大成って感じで、あまりにもソツがないような完成度の高い内容です。しかし我々は既に、どんなに良くても少々飽きてきてもいます。内容を正当に評価するのが難しくなってきています。

というわけで、「HNDRXX」です。全編ポップ&アダルト寄りなスローR&B集です。これはかなり新鮮に感じます。こちらも完成度高い!しかもバリバリ売れそう!

時々、これ売れ線すぎじゃね?と思う瞬間も何度かありますけど、、、

そしてすごいのは、「Future」「HNDRXX」両方とも結構な量でもあるのです。離れ業のようです。こんな密度と連続性は、トラップ随一どころか近代音楽史にも稀なんじゃないか、て思うぐらいです。コデインパワーか自虐詞パワーか、もともと持っているエネルギーがすごいのか、、、

自分は、多作なアーティストは基本的に好きなんですが、多作は可能性がどこまでも広がるけど密度は薄くなる印象もあります、実際はそうでなくても。

実際に密度が薄くなっていくあたりも好きなんですけどね、アーティストの隙みたいなものは。ただ、音楽って時間芸術なので多作で密度がぼんやりしてくると、こちらの限られた時間ではなかなか、それを聴くことを選びにくくなります。たまにはずっと、リルBとかグッチメインだけ延々と聴く日々とかあったら豊かだなあ、と思います。

Futureは生産のスピードが増しながら密度も高くなっていき、そこにバラエティもでてきます。半端ない集中力と能力だと言わざるをえません。これは一体何がどうなっているのか皆目見当もつかないですが、我々はそれをほとんど無料で聴くことができます。

自分の音楽友達や知り合いでトラップ聴く人はほとんどいませんが、こんなに純粋で創作パワーがみなぎっていて、結果も出まくっていて斬新で、個々のオリジナリティが強くてカッコいいのになあ、と思います。

文章がもう結びっぽくなってきましたが、Futureはまだ終わりません。これだけのことを成し遂げたら、普通はもう10回ぐらい終わってるはずなんですが、、、

同じ年に、今度はなんとYoung Thugとのコラボアルバム「Super Slimey」が出ます。

そういえば、すっかり忘れてましたがFutureと御大Gucci Maneのコラボっていうのも、「Free Bricks」というタイトルで、11年と16年に出ています。お二人ともすごい多作ですからね、、、

2018年になり、まずZaytovenとのコラボ「Beast Mode 2」が出ます。前後の「Monster」でも「56 Nights」でもなく、「DS2」のように「BM2」と表記されることもないです。

この作品は、FutureとZaytovenの2人にとっても特に新しいことにチャレンジしているわけじゃないですが、お互いに少し枯れシブ感が出てる感じで、統一感があり短めにまとまっているので、作品として上質感、コラボ続編としては成功感があります。サウンドもどこか心地良い感も獲得していて、聴きやすくもあります。

そして同年、発売当時よりも現在では重要性も増してしまった故Juice WRLDとのコラボ作「WRLD On Drugs」。死によって付加価値を付けるっていうのもフェアじゃないかもですが、残された貴重な音源だと、思いを馳せながら聴いてしまうのは多少はしょうがないところ。

ドラッギー・オートチューン・ブラザーズによる一期一会のような内容です。「Oxy」、「WRLD on Drugs」あたりは、特にドラッギーなトラックで好みです。「No Issue」のハエが止まったような不思議な雰囲気も好きです。

19年のスタジオアルバム「THE WIZRD」から、検索するとようやく日本語の記事がチラホラ出てくるようになります。読んでみると、

「2015年の3rdアルバム『DS2』から『Hndrxx』までの4作が、総合(Hot 100)、R&B/ヒップホップ・チャート、ラップ・チャートの3冠を制覇している」

とか、

「快進撃が続き『DS2』(2015年)、『EVOL』(2016年)で2作連続全米制覇を記録。自身のフルアルバムの他にもDarkeとのコラボミックステープ『What a Time to be Alive』でも全米1位を記録、2017年には『FUTURE』、『HNDRXX』2作の全米制覇を得て、5作連続の全米1位を記録した」

とあるように、売れてるとは思っていたけど、ここまで最高潮に売れていたとは、、、ちなみに今回の「THE WIZRD」も、当然のように1位を取って記録をのばした模様。

逆に言うと、ここまで売れ売れでも日本語の記事にならなかったってことですかね?そう考えてみると日本の市場の、世界からの剥離を痛感せざるを得ません。つまりそれだけ聴く人がいないってことで、それが世の流れなら、別にしょうがないしいいんですけど、40年近く洋楽派だった自分には、なんだか寂しいものがあります、勝手に。

と書いておいて、ふと世界各国におけるチャートを見てみると、1位なのはUSとカナダだけで、他の国はほぼベスト10にも入ってないんですね。日本はチャートすら存在してないけど、、、

だからまあ、日本だけが世界から剥離しているわけじゃなさそうだな、と。USが特殊なのかもしれないし、各国も日本と同じように洋楽離れが進んでいるのかもしれない、と思ったのです。調べてないけど。

自分がヨーロッパにツアーに行っても、みんなUSの音楽に詳しいから、、、USに限らずですけど、、、世界はみんなそうかと思ってしまってたけど、自分が出会ってる人は結構、音楽マニア的な人が多いだけなのかもしれない。

それでも、例えばビリー・アイリッシュを知ったのは、ドイツで友人の子どもから教えてもらったんですけどね。中学生だっけな。日本だと、さすがにそういうことはなさそうだなあー、、、

で、肝心の「THE WIZRD」は、ソツなく強力でヴォリュームな1枚ですが、特に新しいものや突出したものは自分にはなかったです。どの曲を聴いても、いちおう既視感があります。それでも充分にいいアルバムだし、入門編ですらあるという強固な作品でもあります。思えば、全米1位になった「Evol」も「Future」もそういうアルバムでしたし。

70年代サイケデリック・ロックなイメージのジャケのせいか、少しそういう音に聴こえる時もあるんですが、、、少し枯れ気味にも感じます。

19年はこの後、7曲入りEP「Save Me」が出てます。これは全体的に元気がなくて静かで、メロウ&疲労みたいな感じでちょっとおもしろいです。これは、かなりいいんじゃないでしょうか?、、、次のアルバムが楽しみになってきます。

というわけで、ついに最後の、現時点では最新作の、今年出た「High Off Life」です、、、と書いたら、今年はもう次が出てることを知りました。うーん、やはりすごい、、、というわけで現時点最新作は、Lil Uzi Vertとのコラボ「Pluto x Baby Pluto」です。

「High Off Life」は、予想通り期待通りメロウ&疲労要素が全体を支配しています。つまり哀愁度が増しています。テンポもスローで静けさもあって、キャッチャーなメロディー要素も増しています。フォークロックっぽい情感があるし、新しいメロディックトラップのような気もします。21曲入り、と相変わらずヴォリューミーなので一回二回聴いただけだと全容も細部も掴みにくいですが、何度か聴いていると、何かこう、、、どこかに辿り着いた境地感がある名盤顔した佇まいがあります。シンプルながら効果的なトラックも、いい曲ばかりで何度か聴いても全然飽きてきません。そういえば、トレードマーク的なスペーシー感があまりありませんが、随分前から、いつのまにかなくなっていたような気もしてきます。

DatPiffには、19年にアップされた「Future HNDRXX」という、ジャケの雰囲気も限りなく公式発売の「HNDRXX」に近い紛らわしい物があって、しかもこれには30曲(CDだと2枚組分量)も入ってて、、、

音質も音量もまちまちだし、途中でいきまり切れるトラックもあるし、ミックスがバラバラだったりして、明らかにデモとかボツ曲集なんですが、おもしろいトラックやちょっと試してみた変なラップみたいなもの、ちょっと変わったリズムとかもあって、なかなか楽しいです。ずっとシンセがピコピコ鳴ってるだけの、ほぼインストみたいなものもあります。

自分が見つけた時はDLできたんですけど、現在はできないようです、、、変に同じようなものばかりの完成度高めのやつより、下手したらおもしろくていいんじゃないか?、とさえ思います。

ただ、「HNDRXX」のアウトテイクではなさそうです。ああいう感じの曲はないです。結構古いっぽい感じのもあるんで、広範囲から集められたのかな、と、そのぐらいしか分からないです。

そして最後になりますが、最新作「Pluto x Baby Pluto」、タイトルと相手からしてスペーシーな感じかなー?、と思いきや意外と少し変わった感じの穏やかなのんびりしたようなトラックが多くて、ラップは2人の掛け合いなんで、アッパーなノリなんですが、トラックのせいかトータルでは平和な印象です。さすがにこの2人なんで、何をやってもキャッチーな感じもあります。結構いい内容なんですが、何でこのタイミングでこういうの出したんだろう?なんてことをチラッと思ってしまいました。まあ、何でもクソもないでしょうけど、、、

というわけで、次の作品もすぐ出るような気もするけど、相変わらずどんなものが来るのか楽しみです。「HNDRXX」路線から更に枯れた、穏やか〜なやつとか聴いてみたいですけどね。「もうほとんどアシッドフォークじゃん!」みたいなやつとか。

Futureの作品はどれも濃くて密度があるので、こうして順に聴いて最後までいくと、また「Monster」あたりから順に聴きたくなります。そしてそうやってまた聴けば、絶対にまた新しい発見がありそうです。ほぼすべての作品に。

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