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植野DatPiff日記24モジー

自分はどうも多作の人が好きで妙に気になってしまい、Mozzyのリリースペースがすごいので気になりました。

見える多作と見えない多作がありますが、実際沢山作っているのにリリースしないタイプ。あと、絞ってリリースしてるのに多作っていう怪物もいますね。ディランとか、、、the bootleg seriesがあるんで最終的には「見える多作」になりましたけど、、、自分は見える多作が好みです。だから、James Ferraroとかも気になります。

ネット時代になって、自分もそうですがアーティストは比較的容易に作ったものを発表できるようになったわけですが、古くから遡ると7インチレコードやソノシートの時、カセットの時、CDRの時、それぞが流行った時、「もうこんなのキリがないし到底聴くのが追いつかない、このままだとどうなってしまうんだろう?」って、思ってたけど案外限界みたいなものはあったわけです。それは物質的、精神的、流通的、など色んな理由によって。

それらと比べると現在は一層ヤバいですよね、精神以外の限界がない。でも本来、精神が一番限界がないんで、ここからは完全に未知の領域です。

Mozzyの名前で活動とリリースは2013年からってウィキペディアには書いてあるんですが(その前はLil Timという名義)、Discographyには11年に「Money Means Mozzy」と「Money Makin Mozzy 」、「Dope Fiend Tryna Get His Corsica Back」のリリースがあります。

この3枚、ジャケを見るとMozzyの赤い、左端に女性が座ってる例のロゴももう確認できます。最初からずっと変わってないんですね。

しかしこの3枚、自分のサーチ能力じゃ全然詳しい情報が分からなくて、、、配信サイトにあるってだけで、レビューもない、、、

聴いてみるとこのへんの作品は、音質や作りが粗かったり、90年代初期にタイムスリップしたようなトラックとか、ほぼインストじゃん!みたいなやつとか、イキってるけどサウンドに全然迫力ないやつとか、結構おもしろいんですけど、心に引っかかるような曲とかラップとかは特になかったです。でも、総じて雰囲気的にヒップホップ初期に戻ったようなブート感覚があります。

2012年はどうやら何もリリースはなくて、13年にDJ Freshがやってるシリーズ「The Tonite Show」が出ています。DJ Fresh?と思ったけど、UKのジャングルDJとは別の人みたいです。ありふれた名前ですもんね、世界に30人ぐらいいそう、、、

でその名物シリーズのTonite Show、DatPiffに20枚ぐらいあって色んな人が出てて、知らない人ばっかりだな、、、って見てたらRoy Ayersってのがあって、一瞬おおっ!?って思ったので聴いてみましたが、、、曲が途中から始まったり突然切れたり、相当ブートっぽい編集と内容で、、、まるで誰かのヴェイパーウェイブ作品を聴いたような感じでした。そう考えるとおもしろいしカッコよかったです。

Mozzyのやつは、少しいなたい感じの、アンダーグラウンド感っていいよりローカル感がある、ギャングスタなんだけどそれほどイキってるわけでもなく、危ないけどどこかのんびり感もある、この泥臭い感じがベイアリアの特徴なのかはわかりませんが、、、その中で「Chew Something」は寂しげでシンプルなシンセのフレーズとリズムに、ラップがカッコよくて独特なムードがあって良いです。続く「Couple Real」は哀愁を帯びた速いピアノフレーズが印象的で、ラップもカッコ良かったです。締めの曲「Doing This Forever」は何も特別じゃないんだけど、じわじわぐっとくるいい曲でした!

90年代にヒップホップを聴いてた頃はアルバムの最後の曲なんて、聴いたかどうかも分からないぐらいだったなあー、てふと思い出しました。当時は、ヒップホップのアルバムはどれもCDぱんぱんフルサイズ入ってて、後半からだんだん集中力がなくなっていって、DJの人でさえ「え、アルバム最後まで聴くの!?」って言われたりもしたけど、今になってもっとちゃんと最後まで聴くべきだった、と思いはじめました。いや今からでも、、、

14年は3枚のリリースがあります。まず「Goonbody Embodiment」、このアルバムから突然ワンランク音がカッコよくなります。今までと雰囲気が違います。

まず2曲目「Wit the Ishh」が激カッコよくて、続く「Bladada」も中近東っぽいフレーズにクールなビートで、その後もトラップの影響が混ざって独特のヤサグレ感が漂います。「Moe Shots」は重くて不穏な音がこれまたカッコいい。「Day」は、まるでSolangeの新曲?と思ってしまいそうな名曲だし、「Body Somethin」もちょっと変わったトラックで、ラップとの組み合わせがかなりカッコいいです。

「Kick It In」はホラーっぽい雰囲気で音の使い方がおもしろカッコよくて、その次の「Daily Basis」は一転して明るく青春ぽくなりますが、ループされるインド声楽みたいな女性声とか、サウンドは一筋縄ではいかない感じがあります、、、正直、こいつは名盤だと思います!

同じく14年、「Next Body On You」のPart 1、Part 2が出ます。アルバムタイトルの曲は、その前のアルバム「Goonbody Embodiment」に入ってました。かなりジャケがてきとーですね、、、いい意味でも何でもなく。

これもまた音の雰囲気がガラリと違います。しばらくJuneOnNaBeatの音サインがYoung Chopの音サインっぽく聴こえてました。でもコレ、真似してますよね?

このJuneOnNaBeatが、その後のアルバムもかなりのトラックを手がけてて、Mozzyに必要不可欠な存在となっています。現在は、自身のサイト「SHOP BEAT」でビートも売ってます。こういうの、初めて見ました!

このへんのアルバム、検索してみても、ぜ〜んぜん詳細が見つからないんですよね、、、reviewもないし、、、でも例えば、このアルバムの中の「I’m Just Been Honest」とかは、シングル曲なのかな?YoutubeにMVがあって、カッコいい曲なんですがそんなに特別売れたわけでもなさそうなんですが、映像もストリートにやたらみんな出てカメラ目線で騒いでる感じの、何百もあるようなありきたりなパターンなんですが、、、この曲でも538万回とか再生されてるんです。日本のヒップホップで、そのへんの回数がいきそうな、と有名な人たちのをいくつか見てみましたが、そういう人たちでさえ余程のヒット曲じゃない限り、そんな再生回数を獲得してる感じではありませんでした。

自分はどうやら、調べる方向というか認識を全然分かってない気がしてきました。たとえ英語ですら、Google検索では何も分からないんじゃないか、と、、、特にこういうローカルなギャングスタ系(なのかな?)なんかは、誰も真面目にサイトに情報や感想を書いたりせず、ひたすらYoutubeが勝負場所、情報場所で、自分なんかは辿り着けないようなところでみんなは盛り上がってる、みたいな、、、だから、Youtubeをひたすら見まくればいいのかもしれませんが、、、

で、この「Next Body On You」の2枚なんですが、まずほとんどの曲が複数ラッパーでできていて、しかも一定の人が何度も登場するので、「チームみんなで作った」ってノリなんじゃないかと思います。オートチューンバリバリの人もいるし、色んなタイプのラッパーがいるためか、受け皿的なトラックはトラップ度高めで音もスッキリしていて立体的です。あまり泥臭い感じはないです。ラップは泥臭いので、グッとくるカッコ良さはそのままあるし、どこか一風変わった感じのトラックが多いです。

1曲目「Black Ass」からそういう今までとは一味違う感じがあります。今から総力戦、みたいな物騒な雰囲気があり、そのまま2曲目、3曲目と続いていきます。「Free Throw」は、低音で歪ませすぎようとしてスカスカになってしまったような音が鳴ってておもしろいです。

Pt. 2のほうは、心なしか少し遊び心が入ってきてる印象があります。「Come Down」なんかは、女性ヴォーカルの何かの曲をイコライジングしてるだけ、みたいなものだったり、「Scale Weight」は音が出る木彫りの蛙みたいなコロコロした音が鳴ってます。「Dolla Bills」は一風変わった感じで、かわいらいくもありカッコいい曲でもあります。

15年は、5枚もリリースがあります。まずは4月に「Gangland Landscape」、ジャケとか、まさかまるべく印象に残らないようにでもしようとしてるのか?って感じのてきとーさです。

「Stealin Bases」とか「Smaller Than A Dot」、「Hockey Stixx」とか、やっぱこういう感じのベースが来ると、Gファンクの血統的なカッコよさを感じます。もちろんベースだけじゃないんですが。

もうちょいでドラムンベースになりそうな「Hectic」と「Neva Take Away」、なんか、ちょいシャレオツ気味ないい曲です。

7月リリースの「Bladadah」は、プチ出世作っぽい感じみたいです。サウンドはまた一段、特にミックスの感じが変わります。ラップもますます磨きがかかってきている感じで力強いです。

「Tryna Win」は重苦しい雰囲気の中流れるラップが力強くてグッときます。続く「All I Eva Known」は、打って変わって小柳ゆきの「be alive」に激似トラックで、かなりいい曲です。

「Like That」、「Cold Body」もちょっとクサいかなー、と思わなくもないけど、じわじわくるいい曲。だけど今回、こういう女性ヴォーカルR&Bポップスのサンプリングがちょっと多めな気もする。基本と言えば基本なのかもしれないけど。

「Wat It Izzery Luv」は思わず、イングリッシュマン・イン・ニューヨークかと思った!、、、続く「Unkonditional」とラストの「Posta Move」は、泣き曲です。

もしかして、歌詞が分かったらちょっとクサくて引くかもなあー、とも思ったりします。昔々、U2の歌詞訳を読んだ時にそうなったことがあります。

全体的に大変聞き応えのある、いいアルバムです。

そして何と9月には、「Yellow Tape Activities」と「Hexa Hella Extra Head Shots」の2枚が出ます。すごい!段々ペースと内容が上がってきている!?

「Yellow Tape Activities」、まずは冒頭のトラックからイカしています。民族音楽系の弦楽器の音にシュワシュワシンセ、そしてややトラップ気味のリズムとベースのマッチングがおおっと思わせます。

「Till They Smoke Me」、なんだーこのメロウかつグーッドなコード進行!?最高にいい曲じゃないですかー。リリックもかなりおセンチっぽい雰囲気です。いやー、この曲はすごくいいなあー。

「Found Him」や「Mike My Momma Care」、「Streets For A Minute」は、見捨てられた80年代の遊園地で鳴っているような音です。少し寂しいような懐かしいような、なんとも不思議な雰囲気にさせてくれます。

最後は、何だか元気のない暗い曲「On God」で、救いのないような後味で終わります。このアルバムは、あまり遊びもオートチューンもなく、Mozzyのソロとして、かなり集中的な作りです。例によって女性ヴォーカルのR&Bループでおセンチっぽいのとかもあって色んな顔は見せますが、トラックもラップも終始静かに気合が入っている感じがあります。

Mozzyには、どんな曲調でどんなラップでも、常にある種の哀愁のようなものがあります。意図的かどうかは分かりませんが、信用できる熱いものがあります。

そしてもう1枚の「Hexa Hella Extra Head Shots」は、出だしの「Same Nigga」の、ポール・モーリアみたいな鍵盤のリフがこんなにカッコよく響くなんて!、みたいな曲です。次の「All This Pain」もポール・モーリア応用編です。

「We Dem Nigga」は、ブクブク低音ベースがカッコいい、ちょっとブレードランナーのテーマみたいです。最後あまりにも突然に切れるんですけど、、、

4曲目「Dead And Gone」は「あれっ!?」って思ったんですが、「Next Body On You」に入ってる「Wrong Nigga」と同じ曲です。こういうの、Gucci Maneにもありましたが、「ラッパーが変われば違う曲ということでもいい」みたいな共通認識でもあるのでしょうか?ポップス界だと結構おどろきーなことなんですけど、、、

「Nightmare」は、モコモコしたバスドラだけでラップしてて、何かが後ろで薄く鳴ってますが、イコライザーかな、、、とにかくなぜか突然すごいプリミティブなトラックです。終わりかな、と思いきや、結構しつこく続きます。

「100 Plus」は攻殻機動隊サントラっぽいコーラスがループされてて、運命的な香りのトラックに淡々とラップが乗っかるカッコいい曲です。

11月に今まで通りの路線内容の「Down to the Wire 4th Ave Edition」が出た後、16年の最初のリリースとして2月に「Hexa Hella Extra Head Shots 2」が出ます。16年はすごい年です。12枚のリリースがあります!

物事を西暦の年ごとに考えることにあまり意味はないのかもしれませんが、それにしても多作が極まった期間です。このGucci Mane全盛期に匹敵するかもしくはそれ以上のこのペースは、一体何なんでしょうか?12枚中9枚は、誰かとのコラボです。Mozzyは何をしようとしたんでしょうか?

Youtubeには、3月に出たアルバム「Beautiful Struggle」からのシングルとして、「Love Her More」のMVがあって、内容はいつも通り、ストリートで大勢でカメラ目線でカッコつけてるだけなんですが、、、この曲、どう見ても「Hexa Hella Extra Head Shots 2」のほうに入ってるんですよね!まあ、年に12枚も出ればどの曲がどのアルバムに入るか、Youtube優先のマーケティングとしてはそういう行き違いみたいなものも出るんじゃないか、とも思いますが、それにしてもなんて適当な、、、

Mozzyチームの人達でさえ、誰もアルバムをちゃんと聴いてないんじゃないか?と思います。もしかしたら、こんな文章を書いている僕以外に、世界で誰もアルバムごとにこうやってちゃんと聴いてる人なんていないのかもしれない、、、なんてことを思いました。

「See Em Again」のフェイザーかかりまくったギターのゆったりとした感じが、すごくいいです。

「Yo Potna」のシンセベースリフの静かな感じのトラックもミステリアスムードでクールです。めっちゃ短いですけど、、、続く「Chop Stixx 2」もブウーンとしたベースにちょっと変わったテンションのラップがのっかっておもしろいです。

「Beautiful Struggle」は全体的にグッと腰が座った感じのトラックとラップが繰り広げられます。哀愁感も磨きがかかっています。「Beautiful Struggle」、「Hopeless」、「Strip Em」、「Not Bout It」あたりが好みです。

4月からコラボレーションの嵐が始まります。まずは、Stevie Joeとの「Extra Curricular Activities」です。Stevie Joeが誰かなんて知らないんですが、、、ベイエリア・ラッパーみたいです。

サウンドは意外にもカッコいい!1曲目の「House Shoes」から、調子っぱずれの機械工場のような音がいいです。

「Light Now」とか、何だこりゃ?っていうおもしろチープトラックで、おもしろい音楽になっています。コラボがこういう試しの場になるんだっら、残りのやつも楽しみになってきます。

「Benz Coupe」は、2つのフヨンフヨンなシンセが絡み合う、なんというかこう、、、絶妙なトラックでおもしろいです。

5月は2つのリリースがあります。そうですよね、2枚の月もないと計算が合わないですもんね、、、Red Dot との「Mob Ties」と、E Mozzyとの「Fraternal Twins」です。自分はもちろんRed Hotとか知らないですが、E Mozzyは双子の兄弟みたいです。「Mob Ties」のほうは、いつもよりトラップ色強めでいつも通りの骨太な感じです。

「Fraternal Twins」のほうは、少しイケイケな感じですかね。ツインで攻めてやれ!ってノリでしょうか。

6月にも2つのリリースがあります。ソロ名義の「Mandatory Check」と、Dutch Santanaとのコラボ「Earthquakes & Muder Rates」です。2ヶ月で4枚のアルバム、、、

「Mandatory Check」は、ほとんどの曲に複数ゲストがいますが、ガンガンイケイケな感じじゃなく、ゆっくりどっしりとしたトラップ寄りの感じでじわじわ押してきます。不気味ですね!

7月にはまたコラボシリーズが始まります。Troublezっていう人との「Promise Not To Fumble」です。Troublezさん、知りません。Troubleではないみたいです、、、

ジャケは、かなり適当に見えます、、、内容的にはかなりGファンク色を帯びている感じです。軽快なギターカッティングと、カラカラスネアにディレイの「Real Personal」が好きでした。スキャットにかかってるリバーブが深すぎてわけ分からなくなってる「Stay Alive」とかも、ちょっとおもしろいです。

8月もコラボで、JuneさんはOnnaBeatの人かな?「Gang Related Siblings」、ジャケは相変わらずセンスない感じです。

威嚇的なジャケの割に、内容はゆっくりめな西海岸哀愁系です。トラップもすっかり定着したようで嬉しいです。地味だけどいいアルバムじゃないかと思います。

9月もコラボ。Philthy Richと「Political Ties」です。Philthy Richさん知らなかったんですが、08年から最初の作品が出て、その後も現在までリリース多数のベテランのようです。当然、内容も西海岸哀愁系で腰が座ってます。「All Hunnids」とか、ドスカッコいいです。

しかしこういう、、、トラップのリズム以外は特に何も新しいものもないまま、量産し続けるのってどんな状態なんだろう、と思います。日本だと演歌みたいなものなのかな?演歌は歌い手が量産したりはしないか、、、

Mozzyはリリックが常にいいみたいです。ちょっと調べただけなんであまり詳しくは書けないですが。9分ぐらいの、喋ってる動画を見て、それは自分の色々な体験を面白可笑しく話してるんですけど、結構明るいのと、喋っててももうほとんどラップに聞こえるのが印象的でした。ちょっとしたディティールの入れ方とか、こういうのが曲の中に入ってるんだろうなあ、と。ラッパーは大体そうなのかもしれないけど、、、

「Knocked Off」のサビが、どうしても「納豆」に聞こえてしまって、自分の中でこれは最高の納豆ソングです。

10月には再びリアルブラザーと「Fraternal Twins Ⅱ」が出ます。内容は相変わらずですが、相変わらずカッコいいです。

DatPiffに、「Money Over Zery Zang Yung’n」っていう正体不明な編集盤みたいなものはあって、16年の4月にアップされているんですが、22曲入ってる中にチラホラと、この時点までMozzyを聴いてるとパッと分かる曲もあるので、これはレアトラック集というより、このへんの時期までのベスト盤的なものかな、と思います。基本、DatPiffにはこのへんの作品はないので、これ聴いとけ!的な意味に捉えてもいいんじゃないかと思います。なので、Mozzyに興味を持った方はまず、これを聴けばいいんじゃないかな!

実際、選曲とかもすごく良くて、ここまでMozzyのアルバムを23枚聴いた僕が思うぐらいだから間違いないです。これはとてもいい!おそらくリリックからの視点でも、グッドなやつを選んでる気がします!

そしていよいよ16年ラストのリリースは、12月に出た「Tapped In」です。ミックステープやコラボも含めると50枚以上のリリースがあるTrae Tha Truthとのコラボです。

ところで、ヒップホップではよくこの「Tha」って表記を見るんですが、これは「The」がなまったものなのか、進化したのか、それとも何か決まりがあるのか、「The」とは全然違うのか、、、

この作品、今までに比べると音がクリアでダイナミクスがあるような気がします。共演のTraeはテキサスのラッパー兼活動家で、ラップはカッコつけてるっていうよりもっと何か切実で説得的な感じがします。結構独特な重量感のあるラップです。

トラックまでどこか劇的な演出になっているので、これはちょっと良し悪しがあり、すごいカッコいい時がありますが、少々トゥーマッチな時もあります。17曲と、他のコラボより量も多めです。

Traeは、ジョージ・フロイド氏とBig Floydというグループを組んでいたこともあるみたいです。故人のことを、すべてにおいて大きな人で多大な影響を受けた、と語っていました。

2017年にまり、2月に「Fake Famous」がリリースされます。なんとコレがファーストアルバムってことらしく、、、現代ヒップホップのこういうとこは、相変わらずついていけません。こんだけ多作で今更ファーストとい、わ、れ、て、も、、、

ファースト名乗るだけあって、さすがにぐっと聞き応えあるものになってます。ほぼ全曲複数のゲストがいますが、浮わついた雰囲気は皆無です。どっしりと引き締まっています。流石というか、、、

1曲目「The People Plan」からもう、かなりのカッコよさがあります。これはヤバそうなアルバムだな、と思わされます。続く「My Eyes!」も怒涛のクールラップが聴けます。「Scorin」のトラックとラップの感じとか、ちょっと感動的です。手応えはゴツっとあって、それは相変わらずです。何も変わりません。

ファーストを出したばかりだというのに、全く落ち着くこともなく、5月に「Can’t Fake The Real」、6月に「Dreadlocks & Headshots」、そして8月にこれもデビューアルバムと呼ばれてる「1 Up Top Ahk」が出ます。「Can’t Fake The Real」は、Blac Youngstaというメンフィス出身の人とのコラボで、音はシカゴドリルかと思うような、ゴリゴリなトラップです。「Dreadlocks & Headshots」のほうは、Gunplayとのコラボで、こちらは色々遊んでるようなゆるいバラエティのある、ゆるバラな感じです。アルバムとしての完成度みたいなものはあまりありませんが、音質もバッラバラなんですが、なんかいいんですよね、、、聴いてて、楽しさすらあります。

「Gangland」のコロコロとしたトラックに対する激しめのラップの感じとか、「We Ain’t Going Broke」の不思議な感じに乗っかるラップとか、何だかすごいワクワクします。

「1 Up Top Ahk」は、これもファーストだそうです。スタジオアルバムのファースト。この作品はそのせいか、ひとつの区切りのような、始まりのような作品です。内容は更にぐっと全体的に落ち着きます。トラックも男泣き感があるものや、神聖にすら思えるもの、非常に落ち着いて深い感じです。ラップは熱を秘めたまま抑えた感じになり、深い悲しみを感じさせます。

それは、アルバムの後半に入れば入るほど増していきます。作品として見て本当に素晴らしいと思います。コラボを含んだものすごい多作の後に、このようなものを作る創造性と意志に、心からの尊敬の念が湧いてきます。

そうしてラストの「Can’t Take It」と「Fall Off」では、歌詞の意味が全然分からなくても、なぜか涙が落ちそうになります。作品全体を通して、何かが伝わってくるからだと思います。

「Sleep Walkin」のYouTubeの再生回数がえげつない数字になってますが、これはどうやら映画「Black Panther」のラストシーンでかかっているかららしく、この映画はサントラにもMozzyの曲が入ってて、ここで知名度がぐんと上がったようです。Kendrick Lamar万歳!

そして2017年は、12月にYowdaとのコラボ「Hell Made」というAC/DC的なタイトルの、8曲入りでEP扱いの作品を出して終わります。内容は、Gトラップって感じです。

18年はぐっとリリースも落ち着き、EPが2枚出ます。まずは、6曲入り「Spiritual Conversations」。出だしから多幸感に溢れたようなサウンドとラップで、意外でちょっと驚きますが、これがかなりいいです。

その後もほぼ、ふわーっとしたスローなR&Bタイプの曲が続いて終わります。なんだか妙な気持ちですが、新鮮です。この作品は、Mozzyのカタログの中でも特異な位置にあると思います。

もう1枚は、出し忘れてたのかな?って感じのコラボ、Kae Oneとの「Run It Up Activities」EPです。8曲でもEPなのか、、、トラップ色が強く、悪くはないんですがここ数作の変化による期待度を考えるとどうも、、、故Jacka参加の静かなる「celebrate」と、ラストの「How I Live」が良かったです。

そしてやっと(でもないか)フルアルバムの「Gangland Landlord」が出ます。タイトルからして、15年の「Gangland Landscape」の続編でしょうか?、、、この作品はシビれます。派手さはないですが、今まで以上に落ち着いた誠実な感じのする、カッコいい内容です。必要以上の威嚇もなければ、おセンチさもないんですが切実さは滲み出まくっています。イントロからもうラップしまくりなんですが、誤解を恐れず書くと、最初から最後まで18曲というなかなかの量が、全然負担をかけてこずに楽に聴けます。決して聴きやすいってワケじゃないです。聴けば相当な熱量はあります。退屈なワケでも、もちろんありません。しかし楽に聴けます、何度でも聴けます。

サウンドはやや、タイムスリップ気味に過去のヒップホップを回想しているような部分があります。そして、ゲストラッパーが、今までの共演者やそうでない人も含めて新旧織り交ぜて豪華めに大勢います。

R&B的な曲もいくつかあり、最後の「Tear Me Down」はリズム無しでピアノだけをバックに歌とラップがあります。しかし、演出過剰では全然ありません。素晴らしいアルバムです。

ところでMozzyは、影響を受けたラッパーとして、2Pacは別格としてMessy Marv、The Jacka、DMX、Master P、Beanie Sigel、Silkk Da Shocka、Money Fresh、をあげていて、すいません自分は半分も知らないです、、、

あとは全体としてDeath Row records、Lil wayneはもちろんCash Money Recordsをあげています。生まれも育ちも生粋の西海岸(DMX以外)といった感じでしょうか。

Mozzyが多作なのは、2Pacの影響ですかね。

2019年に突入します。まず、2月にBerner、、、と言っても知らなかったですが、、、とのコラボ「Slimey Individualz」が出ます。地元同士って感じで、意図的なのか、かなりクラシックなカリフォルニアサウンドで固めていて、そういう意味では完成度の高い、いい作品です。

DatPiffに19年3月に上がった「The Beautiful Struggle Mozzy Mixtape」というややこしめなタイトルのDJ Mixがあって、これがかなりいいミックスなんです。Mozzyの曲を30曲つないでいるんですが、選曲や曲順がとてもよくて、最高です。自分が大好きな「Til They Smoke Me」や「Can’t Take It」とか、かかった時に今更グッときます。ミックスによって生き生きしてる感じもあって、とてもおススメです!

同じく3月には、ソロアルバム「Internal Affairs」がリリースされます。こりゃカッコいい!何が特に変わったってわけでもないんですが、トラップ要素がかなり馴染んでる感じかな、、、でももうこの頃は、他の人達もみんなそうですよね。

前作ほど派手なゲストがたくさんってわけじゃないけど、1人1人の力の発揮具合も非常にいいです。Mozzyのラップのほうは、もはや無敵感ともいうべき安定感があります。最後の2曲「Free Yatta, Part. 2」と「Killdrummy」のトラックがひんやり奇妙な感じで、不思議な後味を残してアルバムは終わります。

8月には、Raz Simoneとのコラボ「Members By All Moment」をリリースします。当然、この人のことは知りません、、、

出だしから数曲は、なんだか宗教っぽい厳かなトラックです。その後、グライムっぽくなったりします。あとは、誰かの語りのトラックとか。こうやって流れでMozzyのアルバムを聴いていると、かなり異色な感じです。最後の「Cross Colours」も、そういうスピリチュアルっぽい感じなんですが、ひときわ感動的です。色々思いながらも最後まで聴いたら、とてもいい作品だと思いました。

翌月の9月には、おいおい前作と真逆じゃねえかよ、と言いたくなる内容、Gunplayとのタッグ第2弾「Chop Stixx & Banana Clips」です。もう出だしから最高です。

「Talk About It」は、背後に変なシンセ音が薄く鳴ってるだけのトラックにラップがあって、サン・ラでも聴いているような気になります。一体何なんだろう、、、?

「Where I’m From」は、Gucci Maneがやってそうなオリエンタルなムードのトラップ。いい曲です。

このデュオは、どことなくユーモラスで自由な空気があって好きです。是非、第3弾もやって欲しいと思います。

19年のラストは、TSU Surfという人とのコラボ「Blood Cuzzins」です。TSUは、Tsunamiの意味のようです。全然海とか関係なさそうな人ですけど、、、結構テクニカルでオートチューンもかかってて、歌もやるオールマイティな感じです。

このアルバムは、自分はとにかく「Frozen」が好きで、featuringのStacey Bartheも素晴らしく、Mozzyの気配はあまりないので、聴いててMozzyを聴いてる意識がなくなりかけますが、とにかくいい曲です。ちょっとサウンドもFKA Twigsみたいだな、と思ってたら、16年にSt.Bartheという名義で「FKA Stacey Barthe」というEPを出していました。

興味が出たので聴いてみたら、やはり!こういう浮遊感のあるおもしろい感じや、ジャズシンガーな一面も見えたりして、とても良かったです。

あとは、ヒップホップアコギ反応の自分としては、「Any Second」とか、ふわーっとした感じのラストの「Play It Safe」とか好きでした。

2020年は他のプロジェクトのリリースも特になく、ソロ名義が2つでした。まず「Beyond Bulletproof」、今回ちょっとキャッチーにも思える印象です。別に日和ったわけでも売れ線になったわけでもないですが、、、

「Body Count」なんかは、Playboi Cartieかと思いました。「Pricetag」はガットギターがリフのラテントラップ、と。意外と流行取り入れが行われているんですが、どちらもカッコいいです。新しいことは、新しい人を入れて一緒にやることで、自分がそんなに変化せずともうまいこと融合させてるのかな、とも思いました。

最後は、ジャズギターリフでメロウなムードの「Big Homie from the Hood」でややおセンチに終わります。

そしてもう1枚、今のところ最新作の「Occupational Hazard」があります。そのまんま「Beyond Bulletproof」から続いているような印象です。全体の中でピアノの音と共に哀愁メロディックが増している感じで、正直Mozzyで初めて、「これはちょっとクサいんじゃないか?」って思いました。もちろん、Mozzyの本領はその誠実で文学的とも言えるリリックとスキルにあるので、全体クサくない可能性もああるんですが、このアルバムはサウンドだけだと情緒過多に思えます。

そろそろ新しいアルバムが出てもおかしくない時期なんですが、今のところそういう気配はありません。もちろん突然発表&リリースされる可能性もあありますが。一体どういうことになるんだろう?、と楽しみではあります。


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