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植野DatPiff日記19モンタナ300

Montana of 300、モンタナ300って書くとモンゴル800みたいですが、ジャケがおどろおどろしい禍々しいものが多くてですね、まず最初の作品、2014年の「Cursed With A Blessing」なんかは、半分骸骨でDanzel Cueeyの「Ta1300」(これでタブーと読む)に似てて、、、ってTa1300のほうが18年で後ですが、、、YoungBoy Never Broke Againの「Still Flexin, Still Steppin」のジャケにも似てますが、こっちは20年発売なのでモンタナが先駆者ですね。

こわいもの見たさ(聴きたさ)で聴いてしまいました。出だしの「Slaughterhouse」は、いきなりそういう不気味な不穏な感じです。トラックもラップもカッコよくて驚きました。もっとだらっとしてもごもごしたほうの不気味さを勝手に想定してました。

2曲目はシングルになったらしい「Ice Cream Truck」で、これも不穏な感じです。不穏でアイスクリームと言うと、ついRaekwonの「Ice Cream」を連想します。関連(リスペクトかオマージュ)があるのかどうかは知らないですが、、、不穏ですがキャッチーなラップです。

3曲目「All I Ever Wanted」では急くような雰囲気でリバーヴが深い速いシンセがカッコいいです。これもやはりメロエィアスなラップです。

5曲目「Fuck Her Brains Out」は、バカみたいに明るい、キャンデーのようなトラックで、朗々とよく歌い上げててメロディック・トラップどころかほとんどポップスです。いい曲だー。

6曲目「Air Jordan」は、シンセのフレーズが思いっきりThe Calico Wallの「Flight Reaction」なんですが、これはただの偶然、、、でしょう。

7曲目「Let That 40 Bang」は、古いテレビゲームの中で撃たれまくっているような感じです。物騒だけどのんびりしてる、みたいな。

他にも「Holy Ghost」は、破れたようなカッコいいスネア音に延々とハードなラップが乗っかったり、続く「I Luh My Bitch」は一転してのんびりしたチャイルドシンセなトラックだったりといった具合に、全体的にはかなりバラエティに富んだ楽曲群で、どれもクオリティと緊張感が維持されていて、デビュー作とは思えない多才な実力と野望を感じる、スケールも大きい出来過ぎな内容でした。

この作品が6年前で、その後もコンスタントに作品をリリースし続けています。自身のしっかりしたファンベースはあるみたいですが、もっともっと売れてもおかしくないような、、、もちろん余計なお世話なんですが。

それともここ数年のトラップは、このぐらいの出来が目立たないぐらいの作品がゴロゴロあるんだろうか、、、とかも思いました。

それとも、その後にリリースしている作品があまりよくないのかな?と思ったんで、、、一通り聴いてみました。

このファーストの2年後に、スタジオアルバムのファーストがリリースされています。実は自分は、このミックステープ的なものとスタジオアルバム、メジャーアルバム的な分け方が本当に苦手でややこしくて、全部並列でいいじゃん、とか思ってしまいます。ファーストが2枚あるのっておかしくないですか?今じゃ分けることに何の意味があるのか、かなり曖昧になっているみたいだし。

というわけで、16年にいわゆるもう一回デビュー作の「Fire In The Church」がリリースされます。出だしはいきなり「ローズマリーの赤ちゃん」のコメダのスコアのような幻想的な美怖女性声のトラックに、ひたすらゴリゴリとハードなラップをかます「Heat Stroke」です。スタジオアルバムデビューのしょっぱなってことで、並じゃない気合いを感じられます。

「MF's Mad, Pt.2」は、めちゃいいポップソング!シンセがちょっとアジアっぽいフレーズです。こういうのすごい好き。

シンセ、シンセって書いてるけど、トラップなんてリズムの音以外はほぼシンセですよね(ベースもシンセ)。しかも2、3個ぐらいだったりする。この安さが、曲とラップ(歌)を引き立てているんだと思います。最高の音楽形態じゃないか、て。たまにギターとか入ってると「おおー!」って思いますけど、、、

まるでゴドレイ&クレームみたいなサウンドの「Wts Now」もいいです。朗々とクリア・ヴォイスで歌うラップもすごいキャッチーです。

Tally of 300、No Fatigue、Savageなど、おそらくチーム全員集合の「FGE Cypher, Pt 2」は、ちょっと変わり種のカッコいいトラック。この曲はその後もアルバムごとに必ず現れて「Pt 4」、「Pt 5」と続いていきます。

「Don't Trick Off」はロックリフみたいなフレーズ(シンセだけど)とユニゾンでラップメロを歌います。バカみたいにキャッチーな印象の、いい曲に聴こえます。このパターン、得意なんでしょうか?

ラスト曲「Here Now」では、どこかで聴いたような感動的なバラードR&Bを女性ヴォーカルとやっていて、あれ、その前のCursed With A Blessingも最後の曲はこんなんだったような、、、と思いました。こういうので終わるのが好きなんですね。

次のアルバム「Don't Doubt the God」のリリースがちょうど1年後の同じ日5月20日です。その次のアルバムも、その次のアルバムも1年後の同じ日です。おもしろい試みですね。理由を聞かれて、本人は「ほら、クリスマスみたいにその日が近づくと人々が、ねえそろそろじゃない?、みたいになるだろ」って答えてましたけど、、、しかし今年20年のリリースは、なんと2月18日に新作がリリースでした。コロナのせいで早く発表した?

来年はどうなるんでしょう、、、

で、17年の「Don't Doubt the God」ですが、出だしはまたしても熱い熱いラップです。この人の特徴として、どうやら熱くなると曲が長くなるようで、「止まらない!」って感じでスゴすぎて、聴いてて徐々に集中力がもたなくて意識がぼんやりしてきたりします。

「I'm The Man」はお得意のチャイルデッシュなフレーズと歌のユニゾンものですが、これもかなりポップ度が高くて、まるでハッピー・マンデーズみたいで、かなりいいです。「Like That」ものんびりしたポップス曲で、もうここまでくるとヒップホップでもない気もします。

恒例の「FGE Cypher」も、今回でPt 4です。相変わらず変わったトラックが使われています。

全体的には、今まで通りバラエティがありますが、ラップ曲に関しては崇高な感じのものや冷ややかで不気味なもの、どちらも静的なトラックが増えていっているのに対して、ラップは熱いものが増えています。極めつけはラス2の「Godly」で、ここにはもはやトラックがありません。つまりア・カペラのラップです。まるで牧師の説教のような調子で、聴いているとだんだん自分の行いがどこか悪かったような不思議な気持ちになってきます。僕だけかもしれませんが、、、

このアルバムも、少し新しいことがあって、色々なものが詰め込まれていて、かついい曲もある、かなりいいアルバムだと思います。特にポップな曲はオリジナリティがあっていいと思います。

ここで、たまたま見つけたモンタナさんの「私の人生を変えたアルバム5枚」のコーナーです。

・DMX「It's Dark And Hells Hot」
・Makaveli「The Don Killuminati : The 7 Day Theory
・JAY Z「The Black Album」
・Lil Wayne「The Carter Ⅲ」
・Kanye West「The College Dropout」

2018年に出た2枚のアルバムは、いい意味でも悪い意味でも今まで通りの内容って感じで、あまり何も変わらず、うーんって思いました。それでもアルバム「Pray For the Devil」のほうは、チャイナ風ピコピコシンセがかわいい「Dream」が、曲そのものも歌っているいい雰囲気で気に入ってます。久石譲みたいなサウンドと曲の「Left Me in the Rain」もいい曲です。

アルバム「A Gun In the Teacher's Desk」は、ホーリーコーラスなトラックの「Kill Em With the Sauce」がよかったです。途中でリズムが止まり、モンタナにしてはちょっと珍しいお経のようなラップが続くところが感動的です。

しかしどちらも、最初の頃の素晴らしい出来の作品から大きな変化はありません。リリックの内容に変化や進化があるかもですが、ていうかたぶんそうですが、ラップの調子は結構いくつかのパターンの枠から出ないというか、まあ上手いし器用なんですが、上手くて器用ってことは長い目で見れば安定してて退屈ってことにもなります。

この調子でずっといくのかなあ、と思いかけたあたりで、19年のアルバム「Views From the General's Helmet」で変化して、おおっと思います。

まず出だしの「Souvenir Into」が、枯れた感じというか落ち着いたさびしい感じで、合間の帰って来たヨッパライヴォイスが入ってくるのもいいです。

2曲目「Monster」もぐっと大人な感じで、3曲目「In My Bag」は哀愁の逆回転トラックで、ラップも少し枯れていい感じのいい曲です。

4曲目「Wavy」ではなんとアコースティックギターが入ったトラックで、爽やかな感じのいい曲です。なんか嬉しくなっちゃいます。

シリーズ曲「Cypher」も今回が一番カッコいい気がするし、「Just Slide」の左右に大きくパンするふわふわシンセが透明感があって気持ちよくて、さびしげメロウな雰囲気もあるトラックです。

ラス2の「2Pac」もラストの「Suicide Squad」も、シンプルながら効果的なトラックが抜群にカッコよくて、全体的にまずトラックがこのように大きな変化があります。自分にとっては、かなり好みなほうへのシフトです。ラップも若干枯れて落ち着いた感がありますが、そんなに変わらなくても、トラックの雰囲気のせいでかなり全体の印象が違います。

これは、かなりいいアルバムだと思います。ジャケは相変わらずゴシックなホラー的な雰囲気があるけど、内容が全然違うという、、、やっぱりリリック、歌詞の内容が関係してるんでしょうか?いつもの初期衝動ポップな曲がなくなったのは少しさびしいですが、この中にあっても浮いてしまうので、しょうがないかな、と思います。

最新作で今年に出た「A Cold Day In Hell」では、最初の「Ja Morant」から熱いラップが復活してしまいますが、埃っぽい中近東ムードのトラックはかなりカッコいいです。「Yellow Tape」では、ついにエレキギターが登場して、しかもおしゃれコードカッティングのアダルティなR&Bでめちゃしっとりと歌い上げてて、ちょっと驚きます。もともと声がキレイなんで、バッチリなんですが何だかモロすぎて気恥ずかしくなってくるぐらいです。ラップのほうは元気さ、熱さが復活した感じです。トラックは前回のアルバムから確実に進化していて、「Move Around」なんかは、曲が始まった瞬間からカッコいいし(アール・スウェットシャツの曲に似てますが)、「Freeze Tag」はエモラップ全開で、リングモジュレーター音みたいなトラックも奇妙な雰囲気でいいです。

「Black Mamba」も民族楽器みたいなカチャカチャ弦のトラックが、ロス・ロボスみたいで、結果ちょっとラテン・トラップぽい雰囲気があってすごくいいです。ラストの「Icon」も古いラテンみたいな女性ヴォーカル&ホーンのループで、かなりおもしろいしカッコいいです。熱いラップが5分半に渡って延々とぶちまけられます。

全体的には、いい意味でトーンダウンしてたViews From the General's Helmetのほうが好きですが、この最新作もかなりいいアルバムだと思います。次のアルバムも楽しみです。

あと、モンタナさんのすごいところは、作品が全部DatPiffにあって、ここに書いたアルバムは最初のCursed With A Blessing以外はスタジオアルバムなのに、現在でもほぼフリーダウンロードできるんです。自分が一番気に入ったViews From the General's Helmetだけは、なぜかできないんですが(ストリーミングで聴けます!)、、、

番外編として、マブだちTalley of 300との共作名義のアルバム「Gunz N Roses」を15年に出しているんですが、この中にシリーズ曲の「FEG Cypher」と「MF's Mad」のパート1が入ってます。すべてはここから始まったのか、、、内容的にはまあいつも通り、、、なぜこれだけ共作名義なのか、、、ガンズンとは関係あるのか、、、とかは謎です。

で、ここまで聴いて再び最初のミックステープ「Cursed With A Blessing」を聴いてみたら、、、全然変わってなかった!やっぱり最初の曲からカッコいいし、2曲目もいいし、、、モンタナさんは最初の時からもうできあがっていたんだなあ、と思いました。そしてやっぱりこのファーストは名盤だと思います!

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