世界の変化の高速化によってよりリアリティを持つ哲学 カンタン・メイヤスー 『有限性の後で: 偶然性の必然性についての試論』

(2020年の2冊目)「思弁的実在論(Speculative Realism)」のトレンドを打ち出したと言われるフランスの思想家、カンタン・メイヤスーの第一著作であり代表作。翻訳がでたときにずいぶん話題になり、TwitterのTLで頻繁に書名を見た覚えがある。個人的には、ヒュームの哲学について学ぶ必要を感じつつ、というか、以前から言っている「2020年以降にルソーが来る」という予言を「2020年以降にルソーとヒュームがくる」と修正したいと思った。訳者のひとりである千葉雅也の解説が優れた読書案内となるだろう。

カント以来の相関主義(要するに、世界を支える絶対的な支持基盤みたいなものって存在しなくて、あくまで世界を支えてるのって自分の主観なんだよね!)を批判し、新たな実在論を提示した本なのだが、そのロジックがぶっ飛んでいる、というか笑ってしまう。世界を支える論理はいまこの瞬間にまったく別のものに変わりうる、世界はいまこの瞬間にたまたまこうなっているだけ。絶対的に揺るがないものはないけども、たまたま偶然に存在する論理によって、事物の実在は支えられているのだ、みたいな話は、バカの開き直りにも読めてしまう。

ともあれ、この開き直りこそ「世の中の気分」であり「今の気分」なんだよなあ。『この世界の片隅に』へも共鳴する気がするし、世界の変化の高速化や、脆弱性が露呈している今だからリアリティをもつ思想な気がする。

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