脳脊髄液漏出症による後遺障害が一部認められ、訴訟上の和解によりゼロ回答から大幅な増額が得られた事案[40代・主婦]

[被害者]

40代の主婦の方。

[事故の状況]

四輪車を運転して信号待ちのため停止中、後方から居眠り運転の車がノーブレーキで追突し、これによって頭部打撲に起因する重い傷害(後述)を負ったというもの。

[ご相談・ご依頼の内容]

症状固定前の通院中であるにも関わらず、加害者から、後遺障害が存在しないことを前提に「原告(加害者)の被告(被害者)に対する債務が存在しないことを確認する」という債務不存在確認請求訴訟が提起されている。

裁判の対応と、被害の主張・立証をお願いしたい。

[傷害結果]

事故により頭部打撲、腰部打撲、両膝打撲、右足打撲、外傷性頚部症候群、頚椎・腰椎捻挫、右肩関節捻挫、右大腿部挫傷のほか両目の調節不全、頚腕症候群、輻輳(ふくそう)麻痺等を被り、約1年4ヶ月の治療を経て症状固定に至った(※症状固定は加害者による訴訟提起の後であった。)。

ところが、被害者には頚部・腰部および上肢症状について、持続的な強い頭痛、外傷性頚部症候群、頚腕症候群、右上肢痛、右手指の痺れ感、右手握力低下、右肩可動時痛・可動域制限等の障害が残った。また、眼部にも両目の調節不全、輻輳(ふくそう)麻痺等等の後遺障害が残存することとなった。

[加害者側の当初対応]

当初提示額:なし(既払金260万円にて過払いとなっているとの主張。)

受任後提示額:0万円(債務不存在確認請求が提起されている。)

[主な争点]

・受傷機転

・後遺障害の評価(有無・労働能力喪失率)

・後遺障害に基づく損害額(逸失利益・慰謝料)

・過失割合

[業務処理結果]

解決額:560万円

処 理:損害賠償請求訴訟提起後の訴訟上の和解

詳 細:

受任後、債務不存在確認請求訴訟について応訴しつつ、自賠責保険に対する後遺障害等級認定申請手続を行い、等級認定を受けた後、損害算定・反訴提起を行う方針とした。ところが、自賠責保険の認定では、頚部・腰部症状、眼部症状のいずれについても後遺障害の存在が認められず(非該当)、この判断は異議申立後も維持された。

そのため、被害者については眼球症状について、「1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」(別表第二第12級1号)に、また頚部・腰部および右上肢症状については「局部に頑固な神経症状を残すもの」(別表第二第12級13号)に、それぞれ該当すると判断すべきとし、併合第11級相当(労働能力喪失率:20%)として後遺障害逸失利益962万円、後遺障害慰謝料400万円を請求する反訴提起を行った。

また、被害者の持続的な強い頭痛(横臥時は治まるものの、体を起こしたり立ち上がると強くなる)は脳脊髄液漏出症に基づく「起立性頭痛」と考えられるとの主治医の意見をもとに、同症病の治療(生理食塩水パッチ)を受けたところ症状に一定の改善がみられた。

そこで、被害者の頚部・腰部症状は脳脊髄液漏出症によるものであるとの主張を追加し、医師の意見書、医学文献、症例等の証拠提出を行って鋭意主張・立証に努めた(期日回数は20回に上った。)。

その結果、裁判所の心証において後遺障害の残存が一部認められ、訴訟上の和解により560万円の支払いが得られたという事案である。

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