「ビジネスメディアをつくるために、ビジネスメディアだけを参考にしていては不十分なのでは?」という話

パートナーとしてがっつりお手伝いさせていただいているメディア『FastGrow』の編集方針を議論するミーティングがあった。


そこでのアジェンダのひとつが、「いかにして魅力的なストーリーを紡ぐのか?」という話。

『FastGrow』では、起業家やビジネスパーソンのインタビュー記事を多くつくっている。インタビュイーの魅力を最大限に引き出すために、取材で聞いた話をただ羅列するのではなく、いかにどんどん読み進めたくなるようなストーリーに纏め上げていくかがカギとなる。

というわけで、ストーリーテリングの方法論についてディスカッションされたのだが、そこで挙がった「ガイアの夜明けとか情熱大陸とか、テレビのドキュメンタリー番組を参考にするといいよ」という話が興味深かったので、備忘も兼ねてブログを書いておく。

一般的にビジネスメディアは、ストーリーテリングにはあまり力を入れないことが多い。役に立つ知識やノウハウを求めている読者が多いという媒体特性も関係しているかもしれない。誤解を恐れずに言えば、働き盛りのビジネスパーソン向けの“カタイ”記事が多い。(なお断っておくと、自分は、“カタイ記事”が大好物だ。)

それゆえ、ストーリーテリングの手法を学ぶうえでは、あまり参考にならないケースが多いのだ。むしろ、先ほど挙げたテレビのドキュメンタリーや、カルチャー系のメディアの方が、よっぽどストーリーテリングに力を入れている傾向にある。

ビジネスメディアの記事のつくりかたを考えるとき、既存のビジネスメディアを参考にするのは自然(またそれが有効なケースも多い)だが、「ストーリーテリングの手法を学ぶ」という目的においては、あえて道を外れてビジネスメディア“ではない”ものを参考にした方が、結果的に効果を最大化できるのだ。

「見立て」の発揮するパワー

これは盲点だったし、他のさまざまなトピックにも応用できると思った。

たとえば最近、特にスタートアップ界隈で、「HRマーケティング」という言葉が流行っている。

「採用」をマーケティングに見立て、潜在的な転職希望者と戦略的にタッチポイントを取ろうとしていく手法のことだ。もともとマーケティングの仕事をしていた自分からすると「マーケティングの知見がこんな別領域にも活かせるのか」と驚きだったし、実際理にかなった考え方だと思う。

これも冒頭の話と同じで、「採用について考えるうえで、採用の本だけ読んでるようでは不十分なのでは?」という示唆を与えてくれる。

こうした「見立て」は、古今東西あらゆる領域で力を発揮してきたと想定できるし、いざというときに使える「見立て」の引き出しを増やすためにも、専門分野だけにとらわれず、ジェネラルにものを知る努力は続けるべきなのだろう。

「ボケ」の可能性を脳裏にチラつかせておく

またこれを考えていたら、哲学者・千葉雅也さんの著作『勉強の哲学 来たるべきバカのために』に出てきた、「ボケ(ユーモア)」の話を思い出した。

詳しい説明は本を読んでいただきたいが、要は「『お約束=コード=固定観念』から抜け出すために、コードを疑って批判する『アイロニー』(ツッコミ)と、コードに対してズレようとする『ユーモア』(ボケ)が有効になりますよ」という話。

何か問題にぶち当たったとき、全く別ジャンルのトピックを持ってきて「ボケ」ることで、今回紹介したビジネスメディアのストーリーテリング手法の話のように、一気に視界が明るくなることがある。

脳裏にちょっとだけ「ボケ」をチラつかせておくことが有効なケースは、けっこう多いのではないだろうか。

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