memo

月食に遭遇した。自宅近くの湖畔を散歩していたときだった。最初は月が完全に出ていないだけかと思ったが、そのあと夜のなかにある影の存在に気がついた。ー 今まで目撃したなかで最も朧げで遠くに感じられるその影は、おかしいくらいにその線を明瞭に保っていた。私はなぜかその存在を言葉にすることができなかった。変幻自在で、遠く計り知れないなにかを呼び起こすようだった。

私のなかの好奇心が、その夜の奇妙な月によって目を覚ました。それはここ数年、川辺や海辺を散歩しているときに集めた羽への好奇心と同じものだ。この本には、その羽が映し出されている。最初に部分的に壊れている羽を見つけ、近くで見るようにと説得されるかのように惹かれた。歪んだ羽の特徴的な美しい線と綿毛のような形は、どのようにしてか、私の人生の感情的な経験と結びついていった。物質材料としての羽を超えて、その平易さのなかで、全く別の世界に連れて行かれるようだった。

その羽に隠された寓話を見つけたことで、他の羽も同じように観察したくなってしまった。すべての羽根の、その表層だけでなく、生まれ出る本質的な性質を見ようとしていた。

その後自分のスタジオで、集めた羽から着想を得た構図を試すことになる。ささやかな対話と物語を作りあげ、それぞれの本質を引き出すために異なる方法で羽を並び替えた。それは、とても楽しい実験だった。ある結果に対する先入観にとらわれず、直感と本能に導かれ、羽を生かしたい衝動によってのみ行われた。羽を並べている時、自分の人生の重要な時間が紐解かれていくのを感じた。時間という表現と、その無常さ。美しさと葛藤、過去との和解、そして未来への希望。

この写真を見てあなたは、この羽のように繊細なものに、どんな意味があるのかと問うかもしれない。私が言えることとしては、月食のあの特別な様子を言葉にすることは、羽の正確な重さを説明する以上にできないということだ。おそらく明確さとしてはこれくらいが十分なのだろう。全ての存在というものは実態と目的があり、私たちは永遠にその意味づけを探し求めるべきなのだ。

この考えを持って、次のページから始まる写真がこの事実の証明になっていることを願う。今もこれからも、羽のように純粋で軽いものはその内側に秘められた世界の重さを物語ることができるものだと。

『The Weight of a Feather』 Henrik Capetillo


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