リアルテラフォーマーズ

あらゆる人を恐怖に陥れる黒い奴が、家にも現れた。

いつもと変わらないひと時、そろそろ寝ようかと思っていたところだった。背後からカサカサと音がした。何かが勝手に落ちたんだろうと思い、何気なく後ろを振り返ると黒い奴が視界に映り込んだ。

びっくりしすぎてしばらくその場を動くことができなかった。できることは対処法をスマホで調べることだけだった。10分ぐらい調べていたが、何も道具も持っていないため、叩いて倒す以外に選択肢がないことが分かった。

意を決して、トイレのスリッパを手に持ち、奴のいるところに近づき、そのスリッパを振り抜いた。スリッパは空を切った。ビビりすぎて奴の10センチ上を叩いてしまっていたのだ。ストライクバッターアウト、審判がいたらそんな声が聞こえてきそうだ。奴はそのまま逃げていってしまった。

俺は完全に敗北した。これからは奴に不安を抱えたまま生活しなくてはいけない、そう覚悟しそうになった。その時、

「諦めたらそこで試合終了だよ」
誰かの声が聞こえたのだ。

いやまだだ、諦めるのはまだ早い。俺は押入れや棚などの入れそうなところを閉めて、家を出てコンビニまで走った。コンビニは家から3分くらいの所にあり、必要なものを買い、急いで家まで帰った。先ほど買ったスプレーを手にし、奴に向かってこう言った。

「第2ラウンド開始だ!」

今度は落ち着いていて、さっき消えていった隙間や見えてない隙間などに一箇所ずつ丁寧にスプレーをかけまくった。すると、カサカサと音がしてその場所を見ると奴が力尽きそうに出てきた。そう、奴に勝ったのだ。これで安心して眠れる。

眠れそうになっている時にふと違和感があったのを思い出した。奴を倒した時に最初に見た時より小さかった気がする。まあ多分気のせいだろう。



(カサカサカサカサ……)

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