『ぜんぶ運命だったんかい』

日本っておもしろい国ですよね。自分を押し殺して生きるのを美徳としてきた国ですから。
題名にグサッと刺されましたね。すごく読みたいけど絶対読みたくない、の気持ちが交錯しました。
結局ぶっ通しで読んでしまった。

日本で働く20代女性は、働き始める時点でハンデを背負っている。「いくつで結婚する?」「結婚したら仕事やめる?」「私主婦になるの?じゃあ仕事で昇進なんてしちゃいけないのかな?」「いつか全部捨てる羽目になるの?」
あのね、そもそも日本人は働き過ぎです。余暇のない人生に、愛も想像力も生まれてこないでしょうに。
ヨーロッパへ旅行に行ったり、カナダで短期留学をした経験があるので私自身、
不思議でたまりませんでした。午後にジムで過ごす彼らと、家族で野球観戦に行く彼らと、残業だらけの日本人の差は一体どこから生まれるわけ?

仕事に余裕があれば、家庭をもっと大事にできるんです。性別役割分担なんてしなくていい。必要な時にできる人がすればいい。母親も父親も家で過ごせる時間が必要なんです。

「男女平等」という言葉は好きじゃない。そんなものは不可能だと思ってる。だって、生物学的に役割が違うでしょう男女は。
「女性活躍」、これも嫌いです。女性が伸び伸びと仕事に取り組める基盤が一切ないこの国で活躍したとて、疲れるだけです。根本を見直すっていう発想はないのでしょうか?
イノベーションとか多様性とかいうけど、そもそも蔑まれる運命にある人たちがいる今の構造を変えずして、一体なにを「受け入れよう」としてるわけ?

日本には女性差別ではなく、女性「蔑視」が根強くある。それは女性という「商品」が生まれてから、無意識のうちに社会的に植え付けられている。
商品化されたら最後。もう尊厳は取り戻せない、というかそもそも持って生まれない。日本の消費社会がどれほど腐敗しているか、女性の身になればわかるんじゃないですかね。

人生負け組。そう思って生きてきた。女に生まれたから。

この社会を変えられるかなんてわからない。でも、苦しいって訴える人がいるなら、変わりたいって望む人がいるなら、寄り添わせてほしいと思う。

こんな国逃げ出しちゃえ!ってよく思う。でも、今逃げたら、これから日本で生まれ育つ女の子たち、守ってあげられないもんね。

「奇跡だよ、いまこうして無事に生きていられるの」

「最初、男という生き物は悪人なのかと思った。でもそうじゃない。『おじさん社会』のシステムがおかしいのだ」

「『女性が輝く社会』で、私は輝くためにボロボロになりました。私を輝かせようとした人たち、今度はあなたが女性の声を聞く番です」


日本の政治はとにかく腐ってる。
でもこれも同じでね、余暇がない一般人には政治を顧みる、世の中を顧みる余裕なんてないんだよ。今生きるのに精一杯だから、今良ければそれでいいんだよ。政治のおかしいところに気付けないんだよ。

笛美さんが安倍晋三と「日本会議」に言及していたことには驚いた。
日本会議、安倍政権時の政治腐敗の根源にある団体。改憲派の彼らは家父長制のジェンダー観を信じているらしい。

この本は是非読んでほしい

「……たまに政治の批判をしたと思ったら、お隣の韓国の政治批判でした。テレビ、どうしちゃったんだい?憲法改正って日本の根幹に関わる話なのに、どうしてそれを教えてくれないの?」

日本のテレビは必要な情報を取り除き、自国の政治から目を逸らせ、社会不安を煽る能力に長けている。これは間違いない。素晴らしいね。

「日本は平和な国なのです。国会さえ見なければ」


笛美さんのペンネームはフェミからきているそうだ。
フェミニズムと聞くと、どこか過激な匂いがする。だから私はフェミニストでもジェンダー論者でもないって決め込んでた。
ジェンダー論者ってなんだろね、別に特定するものじゃないのに。

マイノリティ、いわゆる「普通」「一般的」でないものが変化を与えようとすると、社会は無意識に拒絶してしまうんだと思う。
私も無意識の排斥に加わっていたんだろうか。
フェミニズムを遠ざけようとする私は、間接的にフェミニズムを否定し、それを過激だとする社会を肯定してしまっていたんだろう。
なんだか悔しい。敗北感。
私だって訴えたいです。一括りにされたくないけど、されたくないって思ってる時点でもう社会のスタンダードに埋もれてるんだろうな。

「誤解され恐れられ笑われながら、自分なりの小石を投げ続けようと思います」

まだ一歩進めたわけじゃありませんが、笛美さんの言葉、胸に刻んでおきます。
一歩踏み出す、その時のために。

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