アツ、22歳。ニューオープンの雀荘に雇われる。

精算金をしまい込み、セットを抜ける僕にO野が話しかけてきた。

O野:オニイチャン、そんだけ稼いだんなら「隣」のフリーで遊んで行ったら?さっき訊いたら今日は300円のサンマしかやってねぇけど、やるなら「ここの人」に紹介するぞ?

ひえぇ(((;゚Д゚)))

僕はもちろん丁寧に断りを入れて逃げるように雀荘を出た。

じゃーなーと相変わらず軽いノリのタケ。

店を出ると言ってもわざわざ黒スーツを呼び、靴箱のカギを渡して表玄関から靴を持ってきてもらい、裏口から出なければいけなかった。

帰りの手段を訊かれ、タクシーで帰る予定だと答えたら店に直接呼びつけることはNGなので若いのに近所のコンビニまで送らせる、と言われた。

不愛想なチンピラ風の若いアンちゃん(当時の僕より若かったんじゃないか)に軽自動車で近所のコンビニまで送ってもらい、温かいスープを買ってタクシーを待つ。

ようやく高揚感と緊張感がとれ、反動でものすごい疲労感が襲ってきた。

それでいてその日は中々寝付けなかった…

幸いその後そっち方面の方々に再び絡む機会はなく、冬が過ぎ春を迎えた。

タケはやっぱり大学を辞め、水商売の世界にどっぷり浸かっていった。

『事務所』でのアウトもかさみ、F君に個人的に借金するようになった。

ゴールデンウイーク前に、F君から『事務所』をやめて新しく雀荘を開くから店長をやってくれないか?ときかれた。

F君は前々から雀荘経営をしたがっていたが、市内でピン雀の個人店が経営不振で大型連休をを最後に辞めるので、居抜きで買いとると言う話を出したらしい。

場所は繁華街の外れで中々いい所だ、東南戦の大手チェーン店と1㎞近く離れているので競合もしないだろう。

タケに借金を返させるためにバイトとして雇い、新規の客を引っぱってきてもらう算段もついているという。

正直僕もモグリ(無許可)の箱である『事務所』はリスクが大きいし新規の獲得もほぼできないので、ちゃんとした店を構えるのは賛成だった。

家賃・タケの人件費(といっても当分借金の返済に充てられる)・月々の回収分を賄えるほど売上が伸びるのか?と考えると心配だったが、僕の給料は今までの平均値を保証し本走もフルバックという手厚い契約にするというので安心した。

その後数ヶ月経ち、F君の粋な計らいで僕の22歳の誕生日の土曜をオープン日として雀荘『ROOKIES』は誕生した。

F君の好きな漫画のタイトルだったその店名は、雀荘経営も店長職もスタッフもルーキーである僕らにピッタリだと思った。

初日は(ほぼ知った顔ばかりとは言え)フリー4卓が全て埋まり、上々の船出となった。

タケが呼んだと思われる水商売関係の客も結構いたが、盆ヅラが悪い人はなくキレイに遊んで行ってくれた。

2日目までは目が回る程忙しかったが、流石に翌週の平日には落ち着き、週イチ常連のセットも2組付いた。

「事務所」同様、いやそれ以上に稼げるなーと思い始めた頃、あるトラブルが起きた。

( ´Д`)< うまくいってる先には必ず落とし穴があるよね…ルーキーズトラブル篇に続く!

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