アツ、19歳。フリー雀荘デビューする。

今思えば無謀だったと思うが、僕のフリー雀荘デビューは近所で唯一の大手チェーン店(初心者に優しいらしい)という理由で、ピンの鳴き祝儀500の店だった。

充分な金と事前に収集した情報はあったが、ビビリな僕にはやはり初めて入るフリー雀荘というのは不安になるものだった。

金曜の夕飯を食い終わってすぐ、派手な看板の雀荘が入居するビルへ。

自動ドアが開くと、「いらっしゃいませ!」と元気な挨拶が飛んできて早速ビビる。

初めて来たんですがと伝えると、こちらへどうぞ案内された。

ソファに座ると店員がズラっと並んで「いらっしゃいませ!」またビビる僕。

飲み物のオーダーを訊かれる。

よかった、既に喉がカラカラだ。

雀荘は基本フリードリンクだが、知らなかった僕は少しでも金がかからないようにとケチな思いで「水下さい」と告げ、初耳の用語がバンバン出てくるルール説明をききながらあっという間に飲み干した。

店員のよくわからない符丁が飛び交う店内、漂うタバコの濃い臭いと煙を、オトナっぽいなぁと思いながら眺めていた。

「お待たせしました、こちらへどうぞ!」

メチャクチャ緊張したが『チーフ』という名札をつけた店員が後ろで自動卓の操作やカラフルな点棒の種類を説明してサポートしてくれるのが心強い。

迷わない手牌・手順で先制リーチを打ったら大分落ち着いた。

終盤にツモって幸運にも雀頭の1ソウが裏ドラ。

点棒と一緒に千円札が飛んできてまたビビる。

「ツモってウラウラなので、全員から2枚分のご祝儀ですね、カゴにしまって結構です。」

なんだそりゃ、半荘途中で精算するのか?しかも1枚が5000点相当だと?(さっき説明されたがアタマに入ってない)

センニセンの2枚ツモったら役満分じゃねーか、フザケやがって。

僕はその後親番でドラアンコの6000オールをツモる等アガりまくり、全員を原点未満に沈めてマルエーとかいう状態でトップになった。

対面のオッチャンがトビで終わりバイト3日分相当の諭吉さんが飛んでくる。

なんて世界だと思った。

嬉しさよりも怖さが勝っていた。

「ゲーム代はコミ精算なので、トップ賞含めて⚪︎⚪︎円頂戴しますね。」

なんだトップ『賞』って?勝って取られるなら『税』じゃねーかフザケやがって。

僕には仲間内の小博打がお似合いだと思った。

本当はすぐにやめたかったが、1ゲームしか打たないと何なんだコイツと思われると勝手に思って「次でやめます」と店員に告げる。

「ラスハンですか、かしこまりました。」

なるほど、ラストの半荘ということだな。

次のゲームも追っかけリーチ(一発親跳)を対面のオッチャンからアガってとばしトップ。

不機嫌なオッチャンから無表情の諭吉がまた飛んできた。

「お疲れ様でした、あとはスタッフが入りますのでそのまま席をお立ちになって結構です。ゲーム代をレジのスタッフにお渡し下さい。」

説明するチーフの後ろからスラっとした長身のイケメンが現れて卓につく。

この時は名前も知らなかったが、それが後の相棒となるユウだった。

帰途についた僕はグッタリとしていた。

1時間ちょっとで2万近くも失った対面のオッチャンを見るに、並の腕の学生では身を滅ぼしかねないと思った。

マジメに勉強して、いいとこに勤めていい給料を貰えるようになってから遊ぼう。

その夜はサークル仲間の家での徹麻に合流するも、あまり気が乗らず後ろ見だけで日付も変わらない内に帰った。

土曜はいつもならサボって週明け月曜日に転写させてもらう週末課題を終わらせ、少しネット麻雀を打って夜更かしもせずに寝た。

そして日曜の朝、平日と同じくらい早起きした僕は、

なぜかフリー雀荘の前にいた。

その後、僕はバイトで貯めた金を卒業までに雀荘で全て使い果たした。

正確に言うと冬休みまでに使い果たし、以降は卒業課題のための勉強とバイトで行くヒマが無かったのである。

(*´-`)< どんどん人生が狂っていく「修行篇」へ続く!

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