アツ、23歳。運命に流される。

※今回もフツーじゃない人が出てきますが、多分フィクションです。全部無料で読めますが投げ銭受付中です('ω')

その後僕とF君は24時間営業のレストランで話を始めた。

F:悪いな急に。
まぁ昨日今日思いついたってわけでもなくて、結論から言うとROOKIESはタケに預けてアツは新しく自分の店持たないか?って話なんだ。
まぁ順を追って話すと、俺の小さい頃からの友達で、以前のタケみたいに兄貴分のKさんと2人で小さいスナックやってるゲンちゃんってヤツがいてさ。
半年くらい前にその店でトラブルがあったんだ。
その日営業を終わってキャストの女の子達をKさんが送りに出た後に、ゲンちゃんが店片付けてたらケツ持ち(みかじめ料を取って用心棒をやるヤクザ)が来たのよ。
見廻りついでに呑んでたんだろうな、いやその逆か、とにかく結構酒が入った状態だったらしいよ。

ゲンちゃんの話は僕もきいたことがあった。
F君のオヤジの会社の古参職人の独り息子で、F君は最初「事務所」は僕じゃなくゲンちゃんにやってもらおうと声をかけていた。
F君が回想を続ける。

F:ゲンちゃんが「すいません、今日はもう終わりで女の子も帰しちゃったんです」って言ったら、ケツ持ちがもっかい女の子を呼べとか難癖つけて押し問答してるうちに怒り出して、イス蹴飛ばしてグラスとか壊したんだよ。
そんでゲンちゃんが止めようとしたらアタマ殴られてさ。
ブチキレる寸前にKさんが帰ってきて、「やめろゲン‼︎絶対に手ぇ出すな‼︎」つってケツ持ちに消火器ぶっかけて、店から蹴り出して110番通報したんだ。
そんでKさんはゲンちゃんの怪我の診断書も付けて被害届を出した。
防犯カメラの証拠映像もあって(Kさんのケリは消火器の煙でカメラには見えなかったらしい)すぐヤツはパクられたよ、まさか自分がケツ持ってる人間にケーサツに売られるとは思わなかったんだろうな。
酔っ払ってたし先に手ぇ出したのも向こうだったんだけど、それでもメンツ潰された怒りで今度はKさんをボコろうと探し始めたんだと。
でもKさんは勘が良くて、事件の翌朝すぐ不動産屋へ行ってその月限りでテナントを解約する手続きをしてた。
そんで被害届出して、体かわしにどっか逃げたんだ。
ゲンちゃんが現場検証の立ち会いと片付けをしたあと、「あのヤクザ達が何してこようと意地でもこの店を続けてKさんを待つ」っつってたんだけど流石に無謀じゃん?
しかもゲンちゃん(ハタチ直後にケンカして)逮捕歴あるから風適法の営業許可取れないよ、大体Kさんがテナント解約手続きしたのはゲンちゃんがそういう無理をしないようにこの現場、もっと言えばこの業界から遠ざけるためなんじゃないの?って言ったのよ。
でも正直俺もアタマ来たしゲンちゃんの力になりたいから、俺の知り合いがここで雀荘やってもいいって言ったらスタッフやるかい?って訊いたら乗り気でさ。

アツ:それが「新しい店」ってか。
F君も充分無謀だよ、雀荘なんてスナック以上に簡単に行かないでしょーが。
しかもトラブったハコでだいじょぶなの?
オレちょっとコワイんだけど…

F君が続ける。

F:ハハハ、安心しろよ〜ROOKIESはうまく行ったじゃん。
オーナーさんが場所はいいとは言えトラブルが起きたハコをすぐ俺が引き受けるって言ったもんだから賃料下げてくれて、しかも最初の1ヶ月は家賃タダにする交渉も成功したよ。
まぁアツを全く当てにしてないってワケじゃないけど、もう1人強い雀荘スタッフ経験者を引っ張ってくる予定もついたから、アツが引き続きROOKIESでやりたいならもちろん構わねぇよ。
そのもう1人は今週の木曜でいま勤務してるS店(大手のチェーン店)を辞めるヤツで、俺らの1コ下(ゲンちゃんと同い年)なんだけどさ。

ROOKIESが落ち着いたらまた新しいことが色々急に動き出した。

F君はこういうことにすぐ飛びつくタチで強引なんだけど、なんか引っ張られる人だ。

そして不安が大きくても、何とかなりそうな雰囲気がある。

どうせ大した目標もなく生きている僕にとっては引きずられるのも面白いもんだ。

僕は引き受けることにした。

F:よっしゃ!
じゃ金曜の昼前にゲンちゃんも含めて4人でハナシしよう。
ROOKIESはとりあえずタケとモリくんに預けて平日は夕方からの営業にしようか。
新店オープンまでヒマな時は手伝ってくれよな。
タケは金には汚いけどやる気だけはあるし、ノルマ制にすりゃ勝手に頑張るだろ。
彼女と産まれる子供のことも考えればもーちょい真面目になるだろーし。

そして金曜、僕は運命の盟友となる2人と顔を合わせた。

(*´-`)< イナカのヤクザは下っ端ほどウマシカな輩が多くて怖いです。「新店オープン篇」へ続く!


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