アツ、19歳。麻雀に出会う。

夏休み直前のとある金曜の放課後、僕は通っている学院の生徒指導室に呼び出され、特徴的な話し方をする先生と話し合っていた。

「アツくゥーん、ちょっとまずいよーォこのままだとさァ」

んなこたァー知っているし、どーォでもイイのだとその時の僕は脳内でモノマネをしつつ思っていた。

成績通知表を見ると、自分でいうのも何だがなかなかの下降具合だ。

何しろ最初が良すぎた。

ボーダーが低い某IT系ヒトナミ学院テケトー学科とはいえ、僕は入試で総合トップの点数を叩き出してしまい、調子こいて特待生制度を申請しちゃっていたのだ。

年度末に学費が還元されるその制度は、トップクラスの成績維持&資格取得と、担当先生の推薦が必要なのだが、期末試験の結果が芳しくないよーォと言われちゃったのである。

失恋してしばらーァく傷心しちゃってもうヤル気ハコテンの僕は、もう特待生は諦めますと伝えてすごすごと退出した。

つまらん、何もかもつまらん。

バイトはまぁまぁ楽しかったが、アイちゃんの元に通う車を買う金のために夏休みまでの期間限定で、と決めていたので、そろそろ終わりだ。

ヒマだ、果てしなくヒマになる。

気怠い歩みで教室へバッグを取りに戻ると、ガヤガヤと中から声がきこえた。

机を2つ向かい合わせ、緑のマットをしいてジャラジャラと音をさせているクラスメイトたち。

「おー、アツは麻雀できる?」

その中の1人が声をかけてくれたのが僕と麻雀との出会い。

牌のデザインとみんなの楽しそうな雰囲気が魅力的に写った。

放課後の教室で遊んでていいのオマエら?ときいたら、「校内の正式なサークル」として許可を貰い、18時までは打ってもイイというお墨付きを貰ったらしい。

月〜木は18時まで、金曜は18時以降は近所のメンバーの家に入り浸り、深夜まで遊んでるとのことだった。

早速僕はルールを覚え、のめり込んでいった。

バイトをやめて以降は授業時間以外は全て麻雀に費やし、ハンゲームや半熟荘(天鳳の前身)で実践を重ね、
仲間内(千点10円で乗せていた)で最強になるのに半年もかからなかった。

勉強はもちろん最低限しかやらず、2年生になるとより専門的に学科が分けられたクラスに再編されたが、最も楽そうな学科を選んだ。

この学院は4年間で学ぶ量のカリキュラムを2年間でブッこむスパルタ校で、資格試験や進路のためにマジメに生活する空気になってきた。

メンバーのうち2人が学院を中退し、他の皆は勉強に力を入れ始め、麻雀仲間の集まりは金曜だけになった。

物足りない僕は意を決し、ネットで調べた某大手フリー雀荘へ足を運んだ。

(*ノω`)< いよいよ泥沼にハマるフリーデビュー篇へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?