アツ、23歳。横領を発見する。

ROOKIESは金曜と土曜(月曜が祝日なら日曜も)は12時~最長朝5時まで 営業していた。

軌道に乗ってくると当然ラストは当たり前のように5時になる。

オープン前の買い物なども全部僕が独りでやっていたので正直体がキツかったのでF君に泣きついてバイトを1人雇うことにした。

F君も最近土日は接待ゴルフの運転手役があるからキツいんだと言ってすぐ承知してくれた。

ボンヅラがよかった常連客の大学4年生のモリ君を、卒業まででいいからとスカウトし、週末はタケとモリ君(と、いればF君)に任せて24時で帰れるようになった。

数カ月したある日、毎月の締め日にF君に見せる月報を作っている時に、人件費を引く前の利益が1割強ほど減っているのが気になった。

細かく見ると客入りの割に週末のフリーの本数が1割近く減っている。

どれも僕が24時で帰る週末に、だ。

僕が帰った以降だけで見ると2割も減っている。

F君を呼び、PCのディスプレイの月報画面を見せて伝えた。

アツ:なんか売上げ悪いんだよね。心当たりない?

F君はため息をつく。

F:タケだな。俺最近は裏で朝まで寝てて、締めもタケに任せっきりにしてたんだ。5月位だと思うけど、あいつの彼女が妊娠したんだよ。ろくに貯蓄も無いどころか俺含めて方々に借金あるのにそれだから、金に汚くなってもオカシくねぇな。とりあえずレジが見えるとこにカメラしかけて泳がせるか。アツはフツウにしてて、24時で中締めして俺にメールしたら週末は帰っていいから。

そして2週間後、日曜の営業が終わった締め後にスタッフ全員の顔が揃った場でF君がUSBメモリを手に切り出した。

F:ちょっとみんなに見てほしいモンがある。先週の土曜日の映像だ。

荒いモノクロ映像だが、人の動きはハッキリわかる。

F:これはアツが24時に中締めしてるとこで、この時点でフリーは53本回ってる。この後は音声記録と合わせて確かめたら25本回ってるんだけど、タケが締めた日報は21本になってんだよ。タケ、親ひと周り分のゲーム代抜いたな?

タケは黙って下を向いている。

F君は至って冷静な声で続けた。

F:いいかタケ、仕事さえちゃんとやりゃ金にだらしねぇのも目ぇつぶるけどな、コレは完全にアウトだ。
働いてる時間の割にアツと給料や待遇の差がありすぎるが不満でやったのか?
確かにお前がたくさん客を引っ張って来たのはわかるよ、ただなぁ、なんで俺がアツの名義でこの店任せてるか考えろ。
信頼が置けて、事務所時代から万が一パクられることだってあるのをわかった上で、覚悟決めてやってもらってんだよ。
EDENの小間遣いがイヤになってこっち来ただけのお前とは違うんだ。

タケは一言、すいませんでした、と頭を下げた。

その後頭部にF君が拳を振り下ろし…たかと思ったら、殴るのではなく襟足を引っ張ってタケの顔を上げさせ、額が付くほど目を近づけて予想だにしないことを言った。

F:覚悟があんなら、お前が店長やるか?

( ;´Д`)< どーいうことよ?「F君の依頼篇」へ続く!


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