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 スタート

いつものように仕事しながらラジオを聴いているとリスナーリクエストでJUN SKY WALKER(S)(以下ジュンスカ)のスタートが流れた。今の若者は恐らく知らないだろうが当時ブルーハーツには及ばずともとても人気がありローソンのCMのタイアップ曲でもあったので40~50代なら学生時代に一度は耳にしたことがある曲かと思う。とても耳障りの良いメロディーにポジティブな歌詞は当時の若者から支持された(と思う)。

私の中学時代はヤンキー全盛の時代でトイレには煙草の吸い殻はいくら掃除してもなくならないし授業中にヤンキーと先生の鬼ごっこも日常茶飯事、制服はもちろん短ランボンタンがオシャレの一環だった。地方によって差はあるかと思うが当時の週刊誌にはどこの出版社にもヤンキー漫画がひとつやふたつはあったので全国的にヤンキーが存在していたのだろう。ちなみに私は「ろくでなしブルース」が好きだったのだが高校時代の修学旅行は池袋正道館のヤンキーが怖くて池袋には近寄れなかった。それはさておきヤンキー=ロックみたいな側面があったかどうか知らないがジュンスカはヤンキーからの支持も得ていたのかもしれない。とにかくジュンスカのスタートはヒットした。

中学時代の私のひとつ上の学年で地元では名の通った堀口君(仮名)という今では伝説的なヤンキーがいた。なにしろ高校入学時に私と別の中学出身者でも名前と武勇伝のいくつかは知っていたくらいだ。私は小学校の頃から堀口君を知っており彼は恵まれた体格と身体能力で野球で最初にその名をとどろかせていたらしい。高学年になると派手なヤンチャなキャラクターで一目を置かれる存在になり中学に入学すると野球部に入部しながらも時代の流れなのかグレた先輩達の影響もあってか、あるいは他の要因があるかもしれないが見事なツッパリになった。

彼が3年になると先輩という目の上のタンコブがいなくなったせいか非常に自由な学校生活を送っていた。色んな悪事をしながらもなぜか部活だけは割と真面目に通っていた。となりのコートでサッカー部として活動していた私に「プロになるなら遠投が~」とか「50mを何秒で~」みたいな話をしてきたこともあったので野球だけには真摯であったのだろう。(後年聞いたところによると、堀口君は練習試合でも態度が悪くランナーに対し威嚇、負けるとメチャクチャ機嫌が悪くなり最後の挨拶の時に礼の代わりに対戦相手に足で砂をひっかけていたらしい)

彼は部活を引退すると益々素行が悪くなり在校生はどこかで鉢合わせにならないように戦々恐々としていた。実際は弱い者いじめをするような人ではなかったのだがそんな生徒達を見かねた先生達はヤンキーグル―プがバンドを組んでいるという話を聞きつけて彼らにコンサートの場を設けた。エネルギーを持て余していたヤンキー達のガス抜きといった理由もあったかもしれない。ボーカルはもちろん堀口君だ。体育館に観客は全校生徒と先生達。授業を潰しての企画だったので大いに盛り上がった。当時の記憶が曖昧で何曲歌ったか覚えてないがラストに歌った曲がスタートだった。最後の局なのにスタートだった。あまり印象に残っていないということはお世辞にも上手とは言えなかったのではないかと思う。どうか堀口君にこのnoteがバレないでほしいと思う。

START STARTこれから始まる
新しい日が来た
二人のSTART


歌い終わってステージを降りる堀口君に向かってアンコールが沸き起こった。大人になって忖度という言葉を知り、あの時の感じかと懐かしい気持ちになる。あるいはアンコールでステージを長引かせて更に授業をボイコットしようという奥深い計算だったのかもしれない。

堀口君はステージに戻りマイクを取り照れくさそうに「また今度」と言って体育館を走り去っていった。


以降は特に目立った様子もなくやがて堀口君は卒業した。家庭の事情もあったかもしれないが進学もせずヤ〇ザになったという噂を聞いたりもした。
あの時の事を彼は覚えているだろうか。数あるロックバンドの中からジュンスカのスタートをチョイスして全校生徒の前で歌ったあの時。歌詞の意味も気にせずに歌ったはずもなく彼なりに描く未来に思うことがあったのではないだろうか。

時は経ち今となっては彼の消息を知る人は私の友人にはいない。

START STARTこれから始まる
新しい日が来た
二人のSTART

私は今、この二人のSTARTに期待したい。

ひとりは鈴木たろうさん。
Mリーグ23-24シーズンは超絶クソ展開により未だノートップ。
最高位戦のリーグ戦では見事A1昇級を果たすもMリーグではなぜか勝てない。あの配牌とツモの組み合わせで勝てなんて絶対無理です。

もうひとりは村上淳さん。
愛称が淳ちゃん→じゅんたん→ずんたんが由来なのではないかと最近気づいたのでXでは積極的にずんたんコールをしているも最高位決定戦では三節を終えてまさかのチンマイ。特に三節では体調不良が手牌にも影響しているかのような苦しい展開。

このふたりはたとえ大敗しても自分の不運を理由にしないんです。ただただジッと堪えて「自分が弱かった」と耐え忍んでいます。いつでも対戦相手をリスペクト。

ただね、私は単なる一アマチュアファンなのでこれだけは言わせていただきたい。

もうこれですよ。たろうさんもずんたん不運だった。

そして最高位決定戦三節の終わりのインタビューは悲しかった。数字上はかなり厳しい状況になってしまったと話していたずんたん。確かに厳しい。最高位戦はオカがないのでトップの価値がラスの重みに対してやや釣り合わない。

近年ずんたんファンは飛躍的に増えた。これはMリーグの恩恵と言ってもいいと思う。ただ、懸念として素直で真面目なずんたんはファンの期待に応えようとするあまり慎重に慎重を重ねる手組をするようになったのではないかということがある。特に序盤の手順が変化したと思う。翻牌→オタ風→端牌という村上流ともいえるリーチ手順からしばしばオタ風→端牌→翻牌の局が増えたように思う。これはもちろん状況によるが他家の出方を伺いながらの進行が増えている印象がある。
これまでより繊細になった分速度が更に遅くなって手数がかなり減ったのではないかと思われる。本人も対局を見返して納得の進行かもしれないが私にはひとりで苦行を背負っているような場面が見受けられる。

その要因に私のような過剰な期待が重荷になり微妙な判断になっているのだとしたら申し訳ないと思ったりする。
ファンの心理としては推しの選手がタイトルを取ることが何より嬉しいものだが初心にかえるとそこが目的ではないのではないか。

それは「推しの幸せがファンの幸せ」に尽きるのではないかと思うのだ。

推しの勝ちを願うあまり対局者に対して「その牌一巡おせーよ!」と他人の不利益の上に自身の幸せを乗せるようではいけないと思う。私はすぐにアツくなってしまうからそんな基本的なことも忘れてしまうので今一度改めたいと思う。

たとえ苦しい状況だとしても目の前の麻雀を最高にENJOYしている姿を見ることがファンの幸せでありたい。炎上じゃないですよ。念のため。


たろうさんもずんたんも今置かれている状況はとても苦しいけど明日はきっと良い日と信じて麻雀を最高にENJOYしてください。

あなた達の笑顔を待っています。

START STARTこれから始まる
新しい日が来た二人の二人の
明日へSTART


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