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転生したら「女神さま」のパシりだった件。

1. いきなりスピリチュアル

ネットの、某有名掲示板の元・管理人はいつも、他人を見下しているように見える。

その理由が分かった。

この人は単純に、他人をバカにしているように見える。それは「本物のバカ」を何人も知っているからだ。


それに気付いてから、ほんの数秒間だったらしい。


ふと気付くと、私は薄暗い場所で、分厚いベルベットのカーテンを握りしめて、さっきから聞こえてくる、凄まじい音響に耐えていたようだ。


音の主は…………見覚えがある。


記憶を探ると、まるで他人事のように、いや、まんま第三者としての観察のように、もう1人の私が、過去に見える。


「宙の舟」と呼称されている団体。教祖みたいな扱いを受け「女神さま」あるいは「姫草先生」と呼ばれている女性。その女性の愛人で側近で、アーユルベーダとヨガと気功と合気道とホメオパシーと、最近では会員の前で歌う事に「目覚めた」という「ダサ・まさし」。


音楽の醸す、特定の波長が魂の乱れを整えてくれるらしい。


なのに何だ、この不快としか言いようのない音の高低差は。断続的に続くビブラートがムカつかせる。歌詞はヘンな英語混じりの日本語。


「オー、イエース、僕の全ては君の物ぉおおおおおおおおっ」


ステージの袖で倒れ欠けている私の後ろを、パツンパツンのレザースーツを着込んだ、ボンレスハムみたいになっている初老期の女性グループが待機している。


「頑張って踊りましょう!」

「イエーイ!」


何だ、何の悪夢だ。だ、誰が踊るって?

そのボンレスかつ、コンシャスな姿で?何を踊るって?その疲れた体で、どう踊るって?

他にも地下アイドルみたいな制服を着た三十代の女性集団。

「声をね、ちゃんと出してね?」

「はーい!」

全員、インカム式のマイク。

誰かが聞く。

「姫先生は?」

「寸劇の準備してたよ。ブルーのドレスがすごく似合ってて」

「ああ、アナ雪だもんね」

このボンレス達のダンスの後、「かつての少女」によるアイドル曲で、シメは「レリゴー」だって?


しっかりしろ、ワタシ。

だ、駄目だ。

ダサ・まさしの曲が変わる。ノリノリで次の曲へ切り替えるダサ。

頭痛が激しくなってきた。

吐く。吐いてしまう。


ダサ氏のヘロヘロなボーカルで

「オレはメロメロ~っ!オレはクラクラァ~!

お前に首ったけ~っ」

というフレーズを聞いた途端、膝が折れるように私は倒れた。


私が倒れると、誰かが気付いて声を上げた。


私の名前は「西尾 史生」。

取り急いで自己紹介。

この常道を逸した団体様を率いる、「女神さま」こと、「姫草百合」の鴨でありパシりをしていたらしい。

つまり、私もそれまでは、「本物のバカ」だった訳だ。

続く


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