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転生したら「女神さま」のパシりだった件。
1. いきなりスピリチュアル
ネットの、某有名掲示板の元・管理人はいつも、他人を見下しているように見える。
その理由が分かった。
この人は単純に、他人をバカにしているように見える。それは「本物のバカ」を何人も知っているからだ。
それに気付いてから、ほんの数秒間だったらしい。
ふと気付くと、私は薄暗い場所で、分厚いベルベットのカーテンを握りしめて、さっきから聞こえてくる、凄まじい音響に耐え
転生したら「女神様」のパシりだった件 その十四
あれから一年後。
私は再び、島に来ていた。
小説を書くために、「おかいこ様」の本殿を見たい、それから、古い文献があるなら見せて欲しいと、椿寺にお願いしたら許可が出た。
姫草はあれから、破産宣告するしかなかったようだ。
何も残らなかったらしい。
御殿もグッズも、買い漁っていたブランド品も。
あの後、七年祭りは荘厳に執り行われ、そこで住職の息子と、縁戚の若い女性が結婚を報告した。
何の事
転生したら「女神様」のパシりだった件 その十三
最初に開いたのは、姫草のグッズ通販のサイトだった。
残りの二台のパソコンが、様々な数字を出している。
IDを割り出して、そこから「ユーザーページ」に潜り込む。姫草しか見れないページだ。
「これで売り上げが分かった。次は、っと」
オニオンと呼ばれるツールを使って、ダークウェブに入る。ネットの下層に存在する、IPなどの足がつかない場所だ。違法ドラッグやポルノなどが売られている。支払いは仮想通貨
転生したら「女神様」のパシりだった件 その十二
姫草は数日間
「確かに昔は荒れていました。しかし、神の加護のおかげで、今は真面目にやっています」
とブログを、日に何回もアップしていた。
そこへ、連絡が来た。
ロココ屋敷が火事になった。
燃え盛る炎は、屋敷に隣接している、他人の家も三件、全焼させてしまった。
死傷者がいなくて幸いだった。
放火だと騒いでいた姫草だったが、原因は、養蚕のスペースを照らしていたランプからの失火だと分かった
転生したら「女神様」のパシりだった件 その十一
姫草の公表していたプロフィールは、ほとんど嘘だった。
投下された過去が、写真付きで拡散された。
ひどいいじめっ子で素行不良。地元の高校は半年で中退。
夜業を転々としながら、怪しい勧誘や販売を伴う会社にいて、現在に至る。
そこはいい。
嘘をついていて申し訳ないと謝罪すれば構わない。
問題は、姫草の両親が、当時、弱小カルトの信者で、生活のリソースのほとんどを活動につぎ込んでいたらしい。結果
転生したら「女神様」のパシりだった件 その十
一万円の「ビジネス・スターター・キット」は、消耗品がほとんどだ。
だが、三十万円で売ろうとしたキットの商品が、かなり混じっていた。簡単に計算して、三千円のハンドクリームが、千円になっている。
これが、ネットで晒された。
どこかの在庫を割安で仕入れていたのでないか、値段の設定が姫草の気分次第できまっているのでは、という疑問から始まって、イベントに行くと強引な勧誘をされると、噂に尾鰭が付いた。
転生したら「女神様」のパシりだった件 その九
イベントの観客席に書類が回される。
ステージが暗くなり、ややあってピンスポットの下、姫草が高らかに歌う。
暗がりの中、信者達はろくろく契約書も読ませて貰えず、サインさせられている。
こうしたやり方が古いのだ。
十年前なら、大学キャンパスやお見合いアプリなんかで声をかけて、会社が経営しているカフェや居酒屋に連れていく。
一見、普通の店だが、働いているスタッフも飲み食いしている客も、全員、会
転生したら「女神様」のパシりだった件 その八
次のステージ(?)イベントで、新規事業の立ち上げを発表する、と姫草は息巻いていた。
ついに、MLM開始だ。
「まずは史生さんにも子会員になってもらわなくちゃ!」
と早速、勧誘されている。
会社組織ではなく、ここでも個人事業主扱いになる。
そうした概要の書類を見ながら、私は答えた。
「先生、『卸し』などの言葉は変えた方がいいです」
「はうっ?」
「『商品を介在している物は、無限連鎖講
転生したら「女神様」のパシりだった件 その七
「おかいこ様」を崇める椿寺は、明治以前からある、神社と寺の習合の、典型的な寺だ。
明治になって政府は、寺と神社を徹底的に引き離そうとしたが、地方に行くと、まだその形態を残した寺や神社が残っている。寺なのに神楽を奉納するのも、習合の形の残りだ。
本殿には引き潮の時しか行けない。
そこで七年に一度、島の豊穣を祈って、様々な捧げ物をする。
姫草は、かなりの額をお布施したと自慢していた。
しかし
転生したら「女神様」のパシりだった件 その六
ショボいカラオケイベントも先が見えてきた、物販をやらなきゃ、いや、やらさなきゃ、と姫草は佐伯に何度も言っているらしい。
物販。
家事やら育児やらで開いた「スキマ時間」にアクセサリーなんかを作って売って、ウハウハ大儲け。
これはスピリチュアルにハマってなくても、現金収入が欲しい中年以上の女性の夢だ。
佐伯は姫草の「ビジネス」を止めさせたいのと、私はこき使われた私怨を晴らしたいという、利害を無
転生したら「女神さま」のパシりだった件 その五
5.宗教で儲ける方法
佐伯の事はみんな、表立っては語らないが、実は姫草の愛人の一人ではないかと噂されている。当の姫草は、四回離婚していて女の子を二人産んでいるが、今はフリーだ。
今までの夫達は、ダサ・まさしみたいな、「勤め人にならないで、歌やセラピーや、とにかく、そんなんで何とか食べていきたい」
というような男ばかりだ。
産んだ女の子二人は、元・夫の親達が育てているらしい。
取り巻きと話
転生したら「女神さま」のパシりだった件 その四
4.CPH4
姫草を、パシり組の私達は、先生と呼んでいた。
で、女神さまは講演会の時には権威ある教授のように、存在感全開、オーラやパワーの濃度純度アップ、それはそれは「素晴らしい事を言ってくれそう」に振る舞っている。
色白で四十路前にしては整った顔と体つき。ウエストマークのクラシックなデザインのワンピースを着て、頭にはワンピースと同系色のパウダーブルーの小さな丸い帽子を、ゆるふわな髪をした頭
転生したら「女神さま」のパシりだった件 その3
3.セルフ・コード
最初は、満月と財布だった。
満月の光りに財布をかざして振ると収入が増えるという話を、その頃買ったスピリチュアル雑誌で読んだ。
満月でなくても、イライラすると私は夜な夜な出掛けて、月光の下で財布を振っていたらしい。
我が事ながら、アホだ。
その頃、夫の月収がかなり減り、私は私で職場の対人関係ストレスから鬱傾向になっていた。心が弱っている時に、金欠は鈍い刃物のように効く。
転生したら「女神さま」のパシりだった件 その2
2.イマジナリー・フレンド
次に目覚めたら、どっかの病院のベッドだった。外来のベッドに寝かされ、点滴されていた。
医師が、病床がなくて仕方なしに、ここで寝かせていたと謝った。
ここは瀬戸内海のとある島。
瀬戸内海は島がたくさんあるが、医療施設のある場所は限られている。この「海ざくろ島」の医療施設も、病院ではなく診療所扱いだ。
とにかく、あの恐ろしいステージからは逃れられたらしい。
医師