素敵な小話〜電車のお姉さん〜
土日のお昼時に電車に乗っていた。
車内の座席は埋まり、座席の前に数人立っている人がいる程度。
携帯を見ながら、ぼーっと過ごす。
停車駅に止まり人が数人乗ってきた。
その中におばあちゃん二人組がいた。
携帯を見てても声が聞こえてくる程
楽しそうに盛り上がっている。
おばあちゃん達の斜め前に座る若めのお姉さんが立ち上がる。
「お姉さんたちここ座りなよ」
あ、おばあちゃん達だと思ってたけど若めの方だったのかな。
「あら、空いたわよ。
…あれ、今お姉さんって言われちゃった?」
ちらっと見ると、確かにおばあちゃん達。
あ、おばあちゃん達に投げかけられた言葉で良かったんだ。
おばあちゃん達、いや、お姉さん達も「お姉さん」と呼ばれて照れ臭そうに喜んでいる。
若めのお姉さんの言い方が素敵だった。
何の含みもなく、さらっと、本当に素直に出てきた「お姉さん」って単語。
席を譲るって行動だけで素敵なのに「お姉さん」ってどんだけ素敵なのだろう。
私はおばあちゃんって思ってしまってたから、「お姉さん」って単語は出ないし、なんか歯がゆくて「お姉さん」って言えないと思う。
でも、こんなに一瞬に人を心地よくさせることができる人ってすごい。
いつもの電車でこんなに温かい気持ちになれた。