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トイレの壁リフォーム貝殻漆喰奮闘記

1年前からトイレ掃除を担当するようになった。
担当というか、諸事情あって毎日トイレ掃除をし出したら、思いの外気持ちがよくて、「クスリ絵」というきれいな絵の日めくりカレンダーを置いたらますます気がよくなって、トイレがちょっとずつイヤシロチになっていった。
そうすると、父がトイレで煙草を吸う習慣があって壁紙や天井が黄ばんでいるのが気になり出して、あるときふと壁を塗ろうと思い立ってしまった。

去年の4月に「染めもの屋ふく」のみどりさんから「ちっご古民家ヴィレッジ」での上映会とマルシェに誘っていただいて、矢部川流域の天然素材を使った畳、杉板、貝殻漆喰壁の古民家の居心地のよさに感動し、その秋には「NPO法人矢部川流域プロジェクト」の代表石永さんのお話会にも参加して、天然素材の素晴らしさを知っていつか取り入れられたらいいなと思っていたけど、なかなか家を建てる予定もリフォームの予定もないので、”憧れ”どまりだった。

その憧れを、小さく叶える時が来た!とばかりに、早速石永さんに連絡して、貝殻漆喰を注文したのは8月のまだ暑い日だった。
近くに用事があるからと1袋20kgの漆喰を石永さんが2袋運んできてくださったのが8月26日。それから放置されること約2週間。
ようやく重い腰を上げて9/8にトイレの壁リフォームを開始した。

全くの素人(7年前に工房の壁の珪藻土を塗る手伝いをしたのでコテの使い方は知っている)でDIYに興味すらない(工作やのこぎり使うのとかは得意)段取り苦手(思いつきで走りながら考えるタイプ)なわたしが試行錯誤で壁と向き合った1ヶ月間。
貝殻漆喰の情報があまり見つからなかったので、備忘録と何かの参考になればと思って、思い出しながら書いてみます。

貝殻漆喰

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まず、貝殻漆喰とはなにかというと、
一般的な漆喰は石灰石が原料だけど、貝殻漆喰は柳川で産業廃棄物となった有明海特産の赤貝(バイガイ)からつくられていて糊(銀杏草)やスサ(麻)も天然100%。
そしてこの貝殻漆喰のいいところは練らなくてもいいこと。普通は漆喰の粉を水で練るという工程が必要だけどそれがなくて、ちょうどいい固さに配合されている。
「簡単だった」「手でも塗れる」と聞いていたのでこれ一択だった。

しかし、そうは問屋が卸さなかった...の漆喰塗りはまだまだ先の話。

下地の素材

知らないってある意味しあわせというか、後から無謀なこと始めちゃったね、と自分で自分にツッコミを何度入れたことか。

8月31日(月)
石永さんから「漆喰は必ず下地材(シーラー)を塗ってくださいね。」といわれていたので、シーラーを探しに自転車でDIY屋さんへ。お店の人に漆喰を塗るのでシーラーを探していますといったら、「下地の素材はなんですか?」と聞かれて、「下地の素材?」と一瞬止まって(すぐ、「ハイこれです。」とくると思っていたので)、「普通、トイレだったら、石膏ボードかコンクリかベニヤかですが。下地が何かでシーラーの種類が変わります。」といわれて、「一軒家だからコンクリではないと思いますが、、、」と自信がなかったので、一旦出直し。
(そんなことも知らないで「漆喰塗ります!」ってちょっと恥ずかしい気持ちになって、この時点で落ち込み始めてた。)
何も買わないのも悲しかったので、コテを買った。

9月1日(火)
気を取り直して、家に戻って端っこの壁紙を剥がしてみたらベニヤだったので、再び自転車でDIY屋さんへ。店員さんに聞かずにベニヤ用の「ヤニ・アクどめシーラー」を棚の奥に見つけ(在庫最後の1個!)、刷毛や養生テープやマスカーというテープと養生シートがくっついたものを購入して、一安心。
シーラーを塗るためのローラーは100均でおもちゃみたいなのを購入。

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準備段階でつまづいて、そのせいかどうか、ただの熱中症だったような気もするけど、その週は体調を崩して作業は翌週から。

壁紙剥がし

9月8日(火)
最初の難関はまさかの壁紙剥がしだった。
壁紙を剥がす動画をYouTubeで事前にチェックしてよしよしと剥がし始めた。
豪快に表紙を剥がすと下に薄紙が。これが裏紙というやつかと霧吹きをしながら浮かせて剥がす。お?まだ薄いのがへばりついてる。あの剥がしにくい値札のシール並にへばりついてて、ガリガリやっても糊が残る。
進まない。全然進まない。
結局1時間で1.5m幅が50cm程度しか進まない。黙々と汗がにじみ出る。
修行みたいな2日間。

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4面全部剥がすのは先が見えな過ぎてつらいので2面ずつ2クールに分けることにした。

シーラー塗り

9月10日(木)
結構ケチり目にシーラーを塗っていく。(後々後悔する)
あの修行のようだった壁紙剥がしから一転、ローラーでシャーシャーとラクチン。

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夕方、DIY屋さんに翌日からの漆喰塗りに必要なコテ板(パテ板)を買いにいった。2クール目の壁紙剥がしのために壁紙剥がしヘラというのも購入。
(コテと一緒にコテ板を買わなかったあまりの段取りの悪さに泣ける。)

漆喰塗り

9月11日(金)
ようやく本丸。
ずいぶん放置していたからなのか、固い。
封を開ける前にまず足で踏むっていってたな。固いな。

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少しずつ柔らかなくなってきた。
貝殻漆喰さま開封。

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(安芸の宮島の木のお玉がスコップの代わり。笑)
でもやっぱり、固い。
これが漆喰の固さなのかな。(このへんでよく分かってないことに気が付いてきた。)
バケツに取り分けてもう少し混ぜてみる。だんだん水分が馴染んできた。

コテ使いは自分でいうのもなんだけど、多分素人にしてはうまいと思う。
だけど、漆喰が伸びない。7年前の珪藻土とはえらい違い。(遠い記憶だけど)こんなものなのかなと首を傾げながらひたすら塗る。
朝から始めたのに一番広い1面の1回塗り(下塗り)が終わったのはおやつ時。
漆喰は「追っかけ」といって半乾きの状態で二度塗りするらしいけど、半乾きの乾き具合もよく分からないし、ただ1回目が終わったから2回目を塗るという感じで、二度塗り。
下塗りもうまく薄く塗れなかったのに、更に伸びなくて分厚くなる。
まだ日が長い時期だったけど、ようやく1面が塗り終わるころには日が暮れていた。そして、アクが浮いてきた!!!!!
1日目にして撃沈。

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夜、YouTubeで漆喰塗りの動画を何本も見て研究。
漆喰の固さ、もう少ししっかり撹拌した方がよさそう(ホットケーキのたねくらいに)という結論にいたり、かき混ぜる木のヘラを用意して寝た。

9月13日(日)
土曜日は講座があって、漆喰塗りする気力が残っていなかったので1日空けての2面目(入り口の面なので塗る範囲狭い)に、前回の反省をふまえてお昼頃から取りかかった。
狭いから気楽なのもあって、あと、袋の中で水が分離していてそれを混ぜ込むために結構しっかり踏んで(飛び出さないように気をつけて)、更にバケツに移してからもよくかき混ぜて(腕が痛くなるくらい)、いいやわらかさになったので結構うまく塗れた。
端っこの10cm幅くらいの狭い部分はコテのお尻の方を使って、スースーと伸ばしていく感じで、ちょっと楽しかった。

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ただ、1面目のアクが結構目立ってて、すでに塗り直したい気分になっていた。でも、1面目が分厚くなったせいで、漆喰が思ったより減ってしまって、この時点で1袋がなくなったので(予定では1/4は残るはずだった)、アクは見ない振り。乾くと目立たなくなるかもしれないという淡い期待を抱きつつ。(打ち砕かれたけど)

1クール目の感想

1週間もあれば終わると思って始めたトイレの壁リフォーム。なんで1週間で終わると思っていたのか謎だけど、準備段階からDIY向いてないなとへこみ、壁紙剥がしで挫折しそうになって、でも、始めてしまったからには、終わらせないといけないので、この1週間は自分の内面と向き合う瞑想か修行かみたいな日々だった。
壁紙剥がしの2日目からヒーリングミュージックをかけながら、心落ち着かせたのが功を奏したのか、もうゆっくりでいいや、きれいに塗れなくてもいいやと、終わるころには気持ちが切り替わった。

シーラーで注意すること
・釘の錆び止めをちゃんとする
・できれば二度塗りする(ケチらない)
漆喰塗りで注意すること

・撹拌はできるだけしっかりする
・撹拌した後しばらくおいておくと馴染む気がする
・麻の繊維がときどき固まっているのでコテ板の上でもよく混ぜる

2クール目

9月15日(火)〜22日(火)壁紙剥がし
パン焼きが始まったので隙間時間に作業をする。

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コツがつかめて、最後の日は終わるのが寂しくなるくらい上達した!

9月24日(木)釘の錆び止め

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いろんなものが売ってるんだなあ。

9月25日(金)〜26日(土)シーラー

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2日目に二度塗りした。

9月27日(日)〜28日(月)漆喰塗り

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タンクの裏は手が届くところまで。
アクは錆び止めとシーラーを二度塗りしたけど、浮いてくるところがあったので、上塗りのときにその部分だけシーラーを刷毛で塗ってみたら、浮いてこなくなった。(これは、Facebookにアクのことを投稿したら、お店をセルフリノベーションしている友達が”何度もシーラー塗り重ねた”と励ましのコメントをくれたのでやってみた。)

2クール目の感想

どちらかというと2クール目より1クール目の最初の方がうまく塗れている。
漆喰はよく練ったのになんでだろう。頭を使いすぎたのかな。
でもアクは止められたので進歩。

この時点で漆喰が残り少なくなって、最初の面を1面塗り直すには足りないので、残りで天井を塗ることにした。

天井

いろいろ予定があってしばらく取りかかれず、天井の黄ばみが気になってしょうがない1週間だった。

10月5日(月)シーラーとアク部分の補修
ヤニの黄ばみを雑巾で水拭きしてからシーラーを二度塗り。

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1面目のにじみ出たアク部分にシーラーを塗ってちょっと乾かして補修。乾いてきたら白くなって、完全に最初の色と違う。カナシイけど、茶色のアクよりいい。

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10月6日(火)漆喰塗り
石永さんが「水を足してゆるくして塗るといいですよ」とアドバイスをくださったので、ペットボトルに水を入れて、それを少しずつ足しながら漆喰の固さを調節した。結構トロトロ。
最初、ローラーで塗ろうかとやってみたら、ローラーにくっついて天井にほとんどくっつかないので、慣れたコテに変えた。二度塗りはせず1回だけで十分だった。(シーラーをしっかり塗っていたので薄くても大丈夫だったけど、クロスの模様がなるべく目立たないくらいの厚みに塗った。)

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完成!

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感想

よくがんばった。
1週間の予定(甘い見込み)が1ヶ月かかったけど、じわじわと達成感。
7年前の工房の珪藻土塗りがうまくできた記憶が、過度な期待を生んでしまって、あれは、養生や珪藻土や道具の準備も全部人任せでただのいいとこどりだったのでできたことだったと現実を受け入れられるようになった後半は、下手は下手なりに気楽にできた。

1クール目が終わってへこんでいたタイミングで、石永さんが近くに用事があったのでと様子を見にきてくださって、「初めてにしては上手ですよ」といってくださったのが励みになって、パンのお客さまも「完成したら見学にいきますね」とかいろんなあたたかい言葉をかけてくださったので、なんとか最後まで辿り着けた。

最後に

「貝殻漆喰はかんたんです」とはわたしにはいえないけど、すごく気持ちがいい空間になったので、やってよかったと思います。

もっとうまく塗れるようになりたいとYouTubeで漆喰職人さんの動画見ましたが、左官歴30年の職人さんとかもう素晴らしかったです。
職人さんへの尊敬の念が今回のチャレンジ(チャレンジだったのか!)でますます高まりました。

弟子入りするには遅いので、どこかの来世で左官職人になれたらいいな。

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