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モノローグ台本『鏡よ鏡』

はじめに

男性、女性どちらでも演じていただけます。 

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本文

 童話「白雪姫」を元にした物語。

 ただし、意地悪な妃は鏡の中に引きこもっており、逆に鏡の精が鏡の外に出ている。

 鏡の中に引きこもった妃が、鏡の精を呼び出す。
 鏡の精、眠そうに出てくる。

鏡の精「はいはいはい。えぇ、またすか?あぁ、わかりましたわかりました。……『それはお妃様です』………じゃ、おやすみなさ、いや本当ですって」

鏡の精「あぁ。姫が気になるんですか。……でも5歳ですからね。まだ大丈夫だと思うんですけど。え?……違います違います!『まだ』ってそういう意味じゃないですよ。え、抜かされたら私のせい?いや、なんでそうなんですか?あ…鏡の精のせい?ははは。あ、すいません」

 妃、本当に自分が一番美しいのか尋ねてくる。

鏡の精「だから本当ですって。現時点の外見スコア、内面スコア、血縁スコアを合計した数値で、本当にあなたが一番なんです。データ?いやそれはコンプライアンス的に無理なんですけど。…信用できないって、いや、その感じ良くないですよ。だって、こういうのって信頼関係じゃないですか。そういう言い方されるとやる気なくしちゃうなぁ」

 鏡の精、妃が泣いていることに気づく。

鏡の精「あー、もう泣かないでくださいよ」

 妃、リンゴを用意しろと言い出す。

鏡の精「リンゴ?そんなの用意してどうするんすか?……それを?……姫に?いやいやダメに決まってるでしょ!っていうか、そういうところですよ?」

 妃、「なにが?」と尋ねてくる。

鏡の精「だから……確かに白雪様は、同世代と比べてかなり高い数値を出していますし、これからも伸び代も十分あります。でもですよ。それより問題なのはあなたです。お妃様の内面スコア、最近かなり落ちてます」

 妃、より一層わめく。

鏡の精「あー、もう、その感じですよ。おばさんのヒステリーって一番、みっともないですからね。いやおばさんですって。…違います。むしろすごいことなんですよ?よーく考えてください。30過ぎてこの世で一番キレイなんですから。続きません。いつかは終わりが来るんです。『そんなことないもん』とか言わないでくださいよぉ」

鏡の精「…じゃあ、仮に白雪様を毒林檎で殺したとしましょう。でも彼女のような人は次から次へと出てきます。わかってないから言っているんです。人間には年齢に応じた役割というものがあります。今一度、よーく考えてみてください。……あ、早く出てきてくださいね。そこ私の部屋なんで」

 ※このタイミングで観客には、鏡の精がいるのが現実世界で、妃がいるのが鏡の中だと分かる。

 妃の部屋に白雪姫が入ってくる。
 鏡の精、姿見にカバーをかける。

鏡の精「どうされましたか?あぁ、まだ鏡の中におられるみたいです。…絵本?良いですよ。私が読んでさしあげます」

 鏡の精、白雪姫と共に部屋から出て行く。

(完)

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