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Home(西村曜)

 こんばんは。西村曜(にしむら あきら)です。いま家にいます。

 未来短歌会という短歌結社の、さらにそのなかのニューアトランティスopera という集団に属しています。短歌をはじめてこの六月で五年。一昨年、二〇一八年の夏に、出版社 書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズから第一歌集『コンビニに生まれかわってしまっても』を出しました。

コンビニに生まれかわってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい(『コンビニに生まれかわってしまっても』書肆侃侃房)

 そしていま家にいます。これを書いているのは二〇二〇年四月の五日、日曜日。ええ、コロナウイルスの流行により stay home しているのです。元ひきこもりなので stay home は得意でして、いまはまだ不自由なく過ごしています。

 そもそもさいきんのわたしの暮らしは、働きに出る以外はほぼ stay home です。わたしには、竹柏会心の花という短歌結社所属の夫がいます。彼がたいそうなお出かけずきでして、わたしも彼に連れられ週末ごとにどこかへ行ったりもしていたのですが、根はやはりひきこもりのタチですので stay home がすきです。夫に言わせれば「家のなかでやることなんて何もない」そうですが、とんでもない、home にはたのしいことがたくさんあります。

 まずは読書。それも積読の消化です。わたしも夫も短歌をやっていて本もすきなので、お互いたんまり蔵書を抱えています。これをひたすら読んでいくわけです。どれだけ stay home しても読みきれない可能性すらあり、このところ熱心に読書に励んでいます。

 そして書き物です。わたしは偏執狂的な記録魔。毎日の献立からその日読んだ本、着た服、買った物からほしい物までなんでも逐一記録しています。記録には絵も添えたりします。絵を描くのはもともとすきで美大にまでいったりしていて、短歌をはじめてからはめっきり描かなくなった絵に、再燃したように取り組んでいます。

 あとは料理ですね。さいきんとくに、いままで作ったことのないものに挑戦しています。おいなりさんだったりスイートポテトだったり、はたまたジャムを煮たりなど。

 さて、この交換日記「水たまりとシトロン」第一回のテーマは「短歌とわたしの暮らし」なのですが、ここまで stay home して読書したり書き物したり料理したり、短歌詠んでないじゃん、とお思いかもしれません。

 御糸さんの回の日記を読むと「子供」「仕事」「ゲーム」が短歌と結びついていて、ひいてはそれが御糸さんの「暮らし」の像を結んでいて、おお! となり、わたしも読書や書き物や料理を短歌と結ぼうとしたのですがうまくいきませんでした。それはそのはずで、わたしは暮らしのなかでぜんぜん短歌を詠みません(!) 短歌を詠むのは、日中 読書したり書き物したり料理したり、その他もろもろの家事をしたりして、ああ、ようやく今日の日がおわったなあ、となる深夜のふとんのなかでだけです。この文章も、これにかぎらず短歌がらみの文章もおなじくです。stay home して行うこと、読書も書き物も料理も、紛れもなく「暮らし」ですが、短歌を詠むことは「暮らし」からやや外れたところでやっている気がします。暮らしのなかに短歌があるのではなく、暮らしをやや俯瞰したところに短歌が位置しているのです。深夜のふとんのなかというのも、その時間帯と場所だけが、俯瞰の位置に接続できるようなのです。

 そんなわけで、ここまで深夜のふとんのなかからお送りしました。これからも、深夜のふとんで作歌して、深夜のふとんにてこの日記を書くつもりです。しかしそろそろ眠ります。明日(今日)は夫とホットケーキを焼いて暮らします。

水たまりとシトロンと詩と。膨らんだ毛布から真夜うまれくるもの

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